お下がり
先日、実家で食事をした後、ふと母親に
「そういえば、お父さんの洋服ってまだ結構残っているの?」と聞いた。
母は、「いくつかは人にあげちゃったけど、まだセーターとかジャケットとか結構あるんだよね」と言うので、
私が部屋着として着られるものを物色しに押入れを開けた。
私は部屋着をわざわざお金を出して購入したいとは思わない。サイズが大きかろうが、多少破れていようが構わない。
箪笥の紐を解くと結構色々と出てくる。
しかし特におしゃれではなかった父の服なので外で着れるのは一つもない、もともと体型も違うのだが......
色々見ていると父が晩年毎日着ていたウールの青いボタンのカーディガンが出てきた。
晩年の父というとそのニットのイメージがあったので、余程気に入っていたんだろうなと思って手にしたら、
「それ、あんたの弟のカーディガンなんだよね。着る人がいないからお父さんが着てたんだよ」と母が言いました。
父は私の弟が高校時代に買ったニットをお下がりならずお上りで晩年着ていたのでした。
結局、このカーディガンをもらって部屋で着るようにした。
我が家ではある時期からお下がりではなくお上りで洋服を兄弟、親子で回していた。
私の弟は、大学付属の私立の高校に通っていました。
周りの友達も割かし裕福な友達が多かったせいか、洋服なんかも、当時の私にとってはセンスがよく、いいものを身に着けていました。しかし飽きっぽい性格なのか?ちょっと着るとすぐに着なくなる洋服が結構ありました。
なぜか高校時代から金回りが良かったのです。
紺のブレザーが流行ると早いうちから購入していたので、弟が着なくなるのを見計らって私がデートの勝負服として貸してもらっていました(ほとんど自分の服のように着ていましたが)。
レザーなんか身に纏ったことのない私にとって、弟の茶のスウェード・ジャケットは、特に覚えている私の勝負服なる一品です。
何でもかんでも弟のものばかりを着るようになっていた私に対して、弟は何も言わなかったので、私も大変助かっていたのですが、ある時グッチの5万円位する革靴を購入した時に、私も何回か断りも入れなく無断で履いたことがありました。
ブランド物の高級な靴なんて初めて履いたので、とにかく履きやすい革だなと感動したのを覚えています。
私も図々しく自分のもののように錯覚してしまったのが悪かったのですが、私は母を通して「俺のをあまり履かないでくれ」と弟に忠告されてしまいました。
その時、初めてお下がりの逆ヴァージョンに自分は何年も浸かっていたことに気が付き、急に恥ずかしくなってしまいました。
それからは借りたいのを我慢して自分で購入したものを身に付けるようにしました。
しかし父もしっかりと弟のお下がりを着ていたんですね。
今となっては弟も文句は言わないでしょう。
腕時計を持っていない私は、弟がいつ今身に付けているロレックスの時計を新しいものに買い換えないかなと思っています、というのは冗談ではありますが.....
私にはもう一人弟がいます。一番下の弟はイマイチ金回りがよくない為、今まで私や父によいお下がりを提供してくれた実績がありません。
現在、大阪にいるのですが、実家に帰ってきた時は、皆からお小遣いをもらっている始末です。
父に献上できなかった分、私によいお下がり物を提供できるよう頑張ってもらいたいものです。