人には言えなかったお話
先日、電車待ちをしていてホームに並んでいた時のことです。
私の後ろで英語で会話する声が聞こえました。
一人は完全ネイティブな滑らかな英語、もう一人は日本人と思われる感じ。
二人はビジネスつながりのようです。
どんな人達だろうと思って、タイミングを見計らい、何気なく後ろを向いて確認しました。
そしたらびっくり、外人の方はゆうに身長2メートルはあるのではないかと思われるほど、頭が私のはるか上にありました。
普段、滅多に見ない長身の方です。一見しただけではちょっと信じられない思いを抱くものです。
そして電車が着て、中はがらがらだったのでシートに座りました。
そしたら例の方が‘ごめんください’と言わんばかりに、まるで暖簾をくぐる様に電車に入ってきました。
やっぱり間違いなく超長身です。
そしたらその外人さんは私の隣に座りました。
隣に座ると意外と立っている時よりも身長差は感じないものです。
これは何を意味しているのか?そう、私とこの外人さんの身長差は胴体ではなく、脚の長さに圧倒的な違いがあるのです。
そう気付くと、確かに私と外人さんの腿の部分の長さが全然違います。
昔は走るのが速かった私は、近所のおばさんによく‘カモシカの脚のよう’といわれていたこの自慢の脚も、自分の脚ながらまるでおもちゃの脚のように感じます。
こんなに身長が高くなくてもいいから、あと10センチ高く、180センチ超えだったらなと思っていたら、ふと昔のことを思い出しました。
高校時代のことです。身長の伸びが止まりかけてきた高校一年時にはまだ170センチくらいでした。
せめて180センチは欲しいなと思って、何とか身長を伸ばしたいと考えていたところ、とある通販のカタログに
‘今からでも遅くない!あなたもグングンと背が伸びる’というキャッチフレーズが目に入りました。
「中国式長身法」とかいうタイトルの本でした。
そのキャッチフレーズの誘惑に負けてしまい、誰にも内緒でこっそりとその本を通販しました。
人知れず長身になりたかったのです。
1週間位でその本が届きました。値段の割には何とも薄い小冊子です。
期待を膨らませページを開くと愕然、モデルの方が身長の低い、脚の短い、頭の薄いおじさんが柔道着か空手着を着て、連続写真で背の伸びる体操を行っているだけでした。もちろん写真の下に1~2行の解説は記されていますが。
とてもこのような体型になりたいと憧れを持たせるようなモデルではなかったのですが、お金を払って購入をしたので、その体操を実践してみることにしました。
傍から見ると何とも間抜けな姿です。
人知れず身長を伸ばしたく購入した本も、人に見られたくなく実践した体操でした。
日々、自分の部屋のドアを閉めて物音立てず体操を続けました。
時折、階段の上がる音が聞こえるとすぐにその体操を止めたりと落ち着かない時も多々ありました。
その本にはチェック表が付いていて、毎日の身長を記入するようになっています。
身長を計測するものなど家にないものですから、巻尺を頭から垂らして、なんともいい加減な感じでも毎日身長を測っていました。
結局、身長を測るのは1週間、その体操は2ヶ月しか続きませんでした。
常に半信半疑で行っていたので身長も伸びるはずがありません。
その本は、他の本と本の間に挟んで隠しておいたのですが、ある時友達に見つかってしまいました。
20年以上経った今でも、彼は忘れることなく、女性同席の酒の席で、つい思い出したようにその本のことを詳しく説明しだし、私を笑いのネタにし続けるのです。
今話されても私も笑って流せますが、初めて彼が皆に話した時は何とも恥ずかしい思いをしたものでした。