風情
‘窓からは線路に沿った家々の内部(なか)が見えた。
あばら家というのではないが、
とりわけてみようというような立派な家では勿論なかった。
然し人の家の内部というものには
なにか心惹かれる風情といったようなものが感じられる。’
~ 「路上」ー梶井基次郎 ~
先日、鎌倉の古い平屋でお茶を飲んでからというもの、
‘和’というものに惹かれている。
豪華な‘和’ではなく素朴な‘和’。
上記の小説の一文は、1925年に書かれたものだから昭和元年ということになる。
昔、母の田舎に行く単線の電車から見た風景を思い重ねた。
そこから見える家々の中の様子は、
きっと写真のような狭い部屋に食卓を囲んでいる家族の姿だろう。
想像するだけで何とも言えない安らぎがある、趣がある。
平成以前に生まれた人にとって和風の畳の部屋は、
どんなにおしゃれなフローリングの部屋よりもやはり落ち着くのではないだろうか。
小さい時の夏の風景、
これにシンクロされる場所が私にとって一番落ち着く。
平成生まれの子達は、どんな場所が一番落ち着くのだろうか?
縁側なんていうのはただ退屈な場所でしかないのだろうか?
その答えが出るには少なくともあと20年はかかるだろう。

