乾季に井戸を掘る。
言い換えると、この時期に水が出れば決して枯れない。
まあ、そういう論拠ではありませんが井戸掘りしてます。
カンボジアの井戸掘りは大きく分けて2種類。
ロータリー式とエアハンマー式があります。(正式名称は知りません)
尖ったビット(先端)を回転させ、自重で掘り進むのがロータリー式です。この方法では、粘土は掘れても岩は掘り進めません。
一方、この回転に空気で振動を与え、岩を砕きながら掘るのがエアハンマー方式です。
両方とも圧搾空気を送り込んで、削った土砂を地上に噴出します。
回転だけで掘るロータリー式は尖った先端部ですが、エアハンマー方式の場合は先端が比較的平面で直径1センチほどの球状の固い金属が10個ほどついています。
この金属が空気の力で岩に打ち付けられ、砕いていきます。
岩の固さにもよりますが、1分間に10センチくらい掘り進みます。
最初は土と粉塵が噴出し、岩に当たると砕かれた石が噴出してきます。水の層に届くと小石は水を含み霧状になり、水量の増加に従い勢いよく水が噴き出してきます。
今回は約30mほど掘ったところで水が出たので、その後ポンプでくみ上げ水量を確認して井戸の完成です。
掘削開始。
1本目が掘り終わり、二本目をつぎ足します。
掘り続けます。
3mほど掘ったところで、パイプを差し込みます。
ビットを少し細いものに交換してパイプ内を掘り進みます。
ここで活躍するのがコンプレッサーです。
4t車に乗っている位のエンジンがフルパワーで圧搾空気を送り込みます。
最初に使うのがこれ、タガネのような材料でできています。
パイプを入れた後に使うビットがこれ。
中にいくつか部品があり、振動するようになっています。
わかりにくいですが、家庭用の水道と同じ位の水量です。
水が出たので記念写真。
ただしこの後水を汲み続け、水量を確認して完成です。
時には水が出ないときもあるのが現実です。井戸掘り業者は毎回現場にお供え物をします。
カンボジアの水道普及率は85%とか。
しかし、それは都市部の人口に比べたもの。
地方都市でもある程度の集落には水道がありますが、農家が点在する地域には全く水道がありません。
私はこれまでの仕事で十数本の井戸を掘ってきました。
水が出るたびに多くの喜ぶ人たちを見てきました。
皆が見守る中、水が出ないこともあります。場所を変えることになった時の井戸そばの農家の悲しい顔を見ることも現実です。
各地にある支援者による井戸の多くが手動式ポンプです。
でも、いま私が掘る井戸にはエンジンまたは電動のポンプが付きます。それは農家の方々の要望です。
彼らは家庭用の井戸ではなく、農業をするための井戸が欲しいのです。家畜には毎日大量の水が必要です。そのためには毎日のように数キロ離れた川まで耕耘機で水を運びに行きかなくてはなりませんでした。
私の今の仕事は農業支援です。生活するには水が必要ですが、その生活のためには家畜や農産物に必要な水の確保が必要です。社会インフラの整備は数字では見えないことが多いですね。
もちろん水質検査もします、20%位は大腸菌が検出されます。飲用には加熱殺菌が必要ですが、家事労力は軽減されていると思います。