5/18


有志6名による「絵本『ぼく』を考える会」が行われました。

◇『ぼく』(谷川俊太郎 作/合田里美 絵 岩崎書店)

この絵本にあるのは、"子どもの自死"という、これまでの絵本では決して描かれることのなかったテーマ。

SNSでも様々な意見が散見されます。


そんな中、「多様な意見・思いを互いに知ることのできる機会を」との思いからこの場を設けました。


約2時間、作品、作家、版元、子どもの現在、絵本の今、個人的もしくは社会的、教育的見解等々……について実に活発な意見交換が行われました。

フラットに、自由な雰囲気のもと語り合うことができたのではないかと思います。

(会の模様については、後日PDFにまとめて公表の予定です。気長にお待ちいただけますようお願いします。)


短時間の「考える会」でしたが、個人的には考えてきたこと(調べたことも含め)すべてお話しすることができました。

きっとこれからも、こたえの出ない問いを考え続けるしかないのでしょう。まわりに耳を傾けながら…そして、

どんなに想像してもわかることなどほんの一部で、他者の思いは目には見えない。そのことをしっかりと胸に留めようとあらためて心に誓う夜でもありました。


有志のみなさん、ありがとうございました。



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5/19


空は青。お昼は(ちょっと暑くなりそうだから)日陰を探して外で食べてみようかな。


ちょっとだけ、ひとつだけ、いつもと違うことしてみよう。


コロッケなんか、どう?

☆『ポテトむらのコロッケまつり』(竹下文子 文/出口かずみ 絵 教育画劇)


コチラも



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5/21


傘を持って出ようかどうしようか悩ましい季節。

でも、

この子の赤い傘は、仔犬、仔猫、にわとり……最後には大きなクマまで、みんなを雨から守ってくれるのです。


必要なだけ大きくなる傘。

なんて不思議で、なんて頼もしい傘!

☆『あかいかさ』(ロバート・ブライド作/しみずまさこ訳 ほるぷ出版)



4まで知ってる子供には、嬉しい楽しい「数の絵本」でもあります。

ぜんぶで何匹の動物が傘に入れたと思いますか?(かぞえてみてね♪)


1959年、アメリカ発。

ウクライナの民話絵本『てぶくろ』のストーリーを彷彿させる、こちらは手のひらサイズの可愛らしい「傘」の絵本です。

赤色しか使われていないのに、それ以上にポップで鮮やかな印象。


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5/22


フリッツ・アートセンター(群馬県前橋市)へ。


原画展『ぼく』への思い、お客様の反応など色々なお話を伺うことができました。
原画を観ることであらたな発見もありました。


高齢のお客様が絵の前で静かに手を合わせていた話、

「大人の覚悟」「そろそろ本気で考えないと」という小見さん(店主)の言葉。


ただそこにあり続けること。

そっと受けいれる静けさがあること。


フリッツ・アートセンターは、「この一冊を所有していることで強くなれる人がいれば」と、小さな声に耳を傾け見えない人に思いを馳せつづける、そんな店主が営む本屋さんです。 



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5/23


◇『九つの星』(石黒亜矢子/URESICA)

宇宙で砕け散った星のかけらを研究をするお母さんと、かけらの気配を感じとることができるふたりの子供。


猫の酒場、棘藪の中、亀のはらわた、怪物の棲む海……

子供たちは次々と難所を乗り越え、星のかけらを集めます。


丁寧に作られた絵本。

夜にご紹介したかった絵本です。


「(自分自身の)本当の生まれがいというもの」を知るために黒燿石の釣針を探し求めた…『ラムラム王』(武井武雄/1924年『金の星』掲載)をちょっと彷彿させるような、三界巡りのストーリー。


さあ、お母さんの待つ家に帰りましょう。


ウレシカさんの通販ページで中の感じがちょっとわかるので貼っておきます。

(特別な製法ゆえお値段もそれなり)


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5/25


〈こどもたちが いいました。「いっしょに いっても いい?」 うさぎと ねこと いぬと ぶたと ひつじと にわとりと こうしと やぎも いいました。「あたしたちも いい?」〉

☆『ガンピーさんのドライブ』(ジョン・バーニンガム作/光吉夏弥訳 ほるぷ出版)より


一緒くたに「動物」とせず、種類がひとつひとつ書かれているところに、子どもの"指差すよろこび"、"知っているものに出会えたよろこび"……があるのですよね。


大人にお手伝いを頼まれたとて、すぐに言うことを聞かない子らの様子もいい!


スカッとのびのしたい日の絵本。



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5/26


〈そうだあんな卑怯な、みっともないわざとじぶんをごまかすようなそんなポラーノの広場でなく、そこへ夜行って歌えば、またそこで風を吸えばもう元気がついてあしたの仕事中体いっぱい勢いがよくて面白いようなそういうポラーノの広場をぼくらはみんなでこさえよう。〉

……


そこへ行けば誰もが上手に歌えるというポラーノの広場。


シロツメクサにぼんやりと浮かぶ数字をたどり野原を歩けば、遥か向こうの地平線には、十六夜の月が「奇体に平べったくなって」半分だけ顔を覗かせている……その先にきっとある、伝説の広場。



会話劇が多く慣れるまでちょっとだけ時間がかかりますが、そのうちグッと惹き込まれて、強い引力にたちまち動けなくなってしまう……賢治童話には不思議な中毒性があります。


木炭と鉛筆で浮かび上がらせた、この世とあの世のはざまにあるみたいな美しい夜。

◇『ポラーノの広場』(宮沢賢治/みやこしあきこ 三起商行)



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5/27


雨。

みんな、どうしているのかな。


〈ことりは、つばさの したに、あたまを いれるんですって〉


あのたよりない薄羽の蝶々たちは、今頃どうしているのかな。


気持ちもどんよりしがちなこんな日は、見えないものを想って過ごします。

☆『あめがふるときちょうちょうはどこへ』(金の星社)



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5/28


蒸し暑い季節は、食品が傷みやすい季節でもあります。


おや、どこからか、家の片隅で忘れられた野菜たちの恨み節が聴こえてきませんか……?


〈♪ああ うらめしや

だーれのせいだ〜 このすがた〜〉

☆『ぞろりぞろりとやさいがね』(ひろかわさえこ作 偕成社)


冷蔵庫の中で萎びたきゅうり、ツノだらけのじゃがいも……通りの家々から飛び出してくる哀しき野菜たち。

その夜、彼らの姿を見た者は、夜空の月と野良猫だけでした。


「どろどろに へばりついて、こまらせてやるわ!」


「おなかを こわしてやる!」


復習の鬼と化したかれらを救うのは、はたして誰なのか…⁉


最後は大団円で、めでたしめでたし。

笑って笑って、くさらず生きるよー!


〜⚠ここからややネタバレ⚠〜


くさくさして怒り散らす野菜たちの姿がユニークに描き出される絵本。

しかしよくよく味わってみれば、お坊さんや小僧も出てきて、これっていわゆる「成仏」を描く(説く)絵本?ともとれるお話です。


解脱し再び生きることを示しているのかも。

深い。



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5/30


大河ドラマの牛若丸(義経)は、ひたすらに兄を慕い戦を愛する若者として描かれましたが、こちらはかえる版「平家物語」。


〈ねこのまえに とびだして うしわかまるは ひとっとび〉……


壮大な歴史ドラマを、美しく繊細な筆致で。


☆『かえるの平家ものがたり』(日野十成/斎藤隆夫 福音館書店) 


『かえるの平家ものがたり』は、沼の畔で「がまじいさん」が琵琶をかき鳴らしながら子どもらに語った、という型がとられています。

昔話のようにわかりやすく、されどもやはり軍記物ですから、学校図書館の司書をしていた頃は試行錯誤しながら、勇ましくドラマティックに語るよう心掛けました。


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5/31


〈こんなの読んでたって、しようがないって。〉


古典童話のパロディを試みながら、同時に絵本という形式をこれでもか!と遊びつくす作品。


ふざけすぎです(いい意味で)。


◇『くさいくさいチーズぼうや&たくさんのおとぼけ話』(ジョン・シェスカ文/レイン・スミス絵/青山南訳 ほるぷ出版) 


この絵本の魅力をここで説明するのはむずかしい…というより、ちょっともったいないような気がして。
手にとって頭から読んでもらうよりほかないのですが、ほんの少しだけ。

・本体のみならず表紙カバーから仕掛けてきます。
・目次が空から降ってきます。
・「はじめに」の途中から挑発してきます。

うーん、おもしろい絵本!✨

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後記)
いろいろなものや人に出会った2週間でした。
人に出会うのはいつもおもしろい。


某日、西日暮里BOOKAPARTMENTで出会ったみなさん。左から熊谷に「たいげん堂」をひらいたMr.アグレッシブル、私、マイペース書店あかりさん、HAGIのスルキさん。密かに「撮られる準備が若干できていない人」風に撮られてみました。

フリッツ・アートセンターさんのすぐそこに敷島公園ばら園。ばらが花ざかり。いい香り。

パッタイ(タイ風焼きそば)研究月間だった5月。週イチでパッタイ。

読んだり出会ったり食べたり移動したりしながら人生はつづく。

5月もありがとうございました。

絵本コーディネーター東條知美