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親子で読みたい絵本部門
親子で読んだらさぞ楽しいだろうな、笑いあえるだろうな、会話が弾むだろうな…と確信した5作品を選びました。
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![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211214/20/bokurano-ehon/ae/24/j/o0459036715046407244.jpg?caw=800)
👑『しましましましょ』
北村人(小学館)
【東條コメント】
子どもがクレヨンを、そのちいさな手で力いっぱい握りしめて描いたような……そのくらい"けれん味のない"、無垢を感じさせる線。一目惚れしました。
〈しましましましょ しましましましょ〉……
魚もクマも人も、電車や信号、海や空まで、み〜んなきれいな縞模様に変身してしまいます。
色で描く楽しさ、しましまの世界であそぶ楽しさ、そしていたずら心がいっぱい!
心が弾んでそのまま飛び出してくるような絵本です。明るい色彩と奇想天外な展開は、子どもだけでなく大人の心もグッとつかんで放しません。
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![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211214/20/bokurano-ehon/8a/d2/j/o0396050015046407247.jpg?caw=800)
👑『もうふちゃん』
くさかみなこ/よしむらめぐ(小学館)
【東條コメント】
「ちいさな子ども×毛布」というと、心理学用語にもある〈ライナスの毛布〉が思い起こされますが、そのくらい、暖かくて柔らかい「わたしと共にあったもの」は、子どもにとってとくべつな存在ということなのでしょう。この作品中にも、毛布と「チイちゃん」の固い絆がしっかりと描かれています。
と同時に、うつくしい秋の風景や森の薄暗さ、持ち主とはぐれて旅をする「もうふちゃん」の出会ったすべてが、丁寧に丁寧に描き出されています。
ちいさな読者を物語のよろこびに誘おうとする、創り手の思いが伝わってくる作品。
「もうふちゃん」が形を変えるラストのオチは、好みの分かれるところかもしれません。いずれにせよ、人に優しいことは素敵なこと…というメッセージを、「もうふちゃん」と一緒に旅したちいさな読者は、きちんと受け取ってくれることでしょう。心の深いところに根を下ろすストーリーです。
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👑『なわとびょ〜ん』
シゲリカツヒコ(KADOKAWA)
【東條コメント】
クラス対抗の大縄跳び大会を前にして、なわとびが苦手なケンタは憂鬱です。放課後の練習をサボって逃げ出そうとすると……行く手をふさいだのは、奇妙なカエルの被り物をしたふたりの男たち。
さて、大縄の端を持たされたケンタはどこへ連れて行かれたのでしょう?年寄りが集まる公園、おおきなかぶの畑、渋滞の高速道路、忍者屋敷、サバンナの大草原…!?
ドラマティックで迫力あふれる構図、圧倒的画力(!!)で描きこまれたナンセンスな世界。
さっきまで腰をさすっていた老人も、渋滞の車も、忍び込んだ曲者も、なわを回せばみーんな
〈はっ!〉
…思わず飛んじゃうんですから(笑)
子どもよ、なにがあっても思いつめないで。こんな、"大人が本気でふざけた素晴らしい作品"を読んでガハハと笑って!絵にある仕掛けを隅々まで面白がりながら、自由におおらかに、跳ぼう!
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👑『あまがえるのぼうけん』
たてのひろし、かわしまはるこ(世界文化社)
【東條コメント】
細密に描かれた美しい自然、可愛らしいアマガエルの姿形。(そうそう、この指先の丸み)
「やっぱり こんなところに こなきゃよかった……」
「もう ぼくたち、にげてかくれてばっかりだよ」
作中、こども(あまがえる)にとってたいへんな冒険が繰り広げられますが、安心してください。未熟で無鉄砲な3匹だけれど、ちゃんと生きる知恵を身につけているのです。
しかし「生きる」とは、なんと危険と冒険に満ちていることでしょう!
細密に描かれた自然描写は、読む者に、草の匂いや土の匂い、虫や鳥のやかましいくらいの鳴き声、森に棲むものの気配、昼間のあたたかさ、夜の冷たさ、土の湿り気……それらすべてを感じさせてくれます。
記憶と感覚の扉を開く、ドラマティックな絵本『あまがえるのぼうけん』。
生きる力がむくむくとわいてくる作品です。
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![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211214/20/bokurano-ehon/10/02/j/o0388050015046407253.jpg?caw=800)
👑『ぽぉぽぉぽぉってどんないみ?』
しんよんひ(岩崎書店)
【東條コメント】
言葉の通じない人、ちがう国からやって来た人と、どうしたら仲良くなれるのだろう?どうしたらわかりあえるのだろう……という(昨今の大人たちにこそ投げかけたい)普遍のテーマを、子どもにもわかるやさしい物語で示した作品。作者のしんよんひさんは韓国・ソウルの出身です。
心にとけこむような水彩画。落ち着いた色調で織りなされる青や緑色、その美しいグラデーションの世界は心をホッとさせます。
ウサトくんは、転校してきたリスンくんに思い切って話しかけてみます。そして、わからない言葉を話すリスンくんの気持ちを想像してみます。遊んでみます。たくさんの時間を一緒に過ごします――。
そう、私たちはつい頭で考えすぎてしまうのだけれど、相手のことを「わかりたい」と思うのなら、近づいて互いに知り合えばいいのです。
〈いろんな ことばを、いろんな きもちを、わかりあおうね。〉……
リスンはわたしかもしれない。
ウサトくんはあの子かもしれない。
うれしい気持ち、さみしい気持ち、言葉にできない気持ち…いろんな気持ちがたっぷりつまった感動作です。
見返し一面の素敵なおまけ、「リスンくんたちのことば」「ウサトくんたちのことば」(しんよんひさんによる手描き)がかわいい!
誰かにお手紙を書きたくなりますよ。