2月3日、節分ですね。

鬼は そと
福は うち


悪いものは豆を撒いて追い払って、良いものだけ呼び込みたいもの。
邪気祓い、邪気祓い👹

・・・でも ひょっとしたら
私たちの中にも、

「あいつは悪いやつだから」
と思い込み、その実体を見ようともしない...そんなところがあるのではないでしょうか。

* * * 

◆『島ひきおに』(山下明生 文/梶山俊夫 絵 1973年 偕成社)


なんぼか むかしの はなしじゃそうな。
ひろい うみの まんなかに、ちょこんと 小さな 島が あって、ひとりぼっちで おにが すんでいたそうな。

......

鬼は、毎日ひとりぼっちで寂しかったのです。

だから、嵐の日に漁師を助けたとき、「やっと仲間ができる」と どんなに嬉しかったことでしょう。

「人間と一緒に暮らすためには、人間の住む島まで鬼の島を引っ張ってきたらよい」と聞いて、どんなに心が踊ったことでしょう。


漁師の言葉は(鬼への恐怖から出た)でまかせでしたが、人のいい鬼はそれを心から信じてしまいます。

鬼は生まれ育った島の底を削り、太い綱でしばったそれを引き、海の中を歩き始めます。

一晩歩き続けてようやく漁師の島についた鬼は、喜んで、海鳴りのような声で叫びます。

「おーい、島 ひっぱってきたぞ。こっちゃ きて あそんでいけ!」

まさか鬼が本当に来るとは思っていなかった人々は怯えます。
「どうぞ、ほかの 村へ・・・」

さてここから先、

鬼は行く先々で期待を裏切られ、
人間に裏切られ、それでも

なん日も、なん月も、なん年も、
ただひたすら、もう何も見えなくなった海を歩き続けるのでした...

* * * 

『島ひきおに』は昔ばなしの語り調で書かれていますが、山下明生による創作の物語です。

節分。

「鬼は そと!」
声に出しながら、「ほんとうに追い出すべきものはなんだろう?」ふと思う...

優しく寂しい鬼が主人公のお話です。


この絵本を子どもたちの前で読みますと、しいんと静まり返ります。

「ほんとうに終わり?続きはないの?」切実な目で尋ねてくる子が必ずおります。

(泣いちゃうな)


絵本コーディネーター東條知美