【はたらく2人】

勤労感謝の日に、2人の「はたらく」絵本の主人公を紹介します。

☆『ゆうびんやのくまさん』(フィービとセルビ・ウォージントン 作・絵/まさきるりこ 訳 1987年 福音館書店)


「あるところに、ゆうびんやのくまさんが、たったひとりですんでいました。」


この「○○やのくまさん」シリーズはいずれも勤労感謝の日におすすめしたい絵本たち。

ここに出てくる「くまさん」はみな至極勤勉・誠実。その仕事ぶりと人柄ゆえに、仲間にもお客さんにも愛されています。

さて、ゆうびんやのくまさんは、冬の朝まだ暗いうちに駅まで小包を取りに行き、雪道を手押し車で運びます。

局内では破れた包みを丁寧に包み直し、出かけた配達先ではクリスマス・パイをいただいたりもします。

そして家へ帰ると、温かい風呂に浸かって一日の疲れを取るのです。リビングに飾られたツリーの下には、町の人々から贈られたクリスマスのプレゼントの数々、子どもたちからの手紙...


・・・・・ここでわたしたちはあることに気づきます。
「たったひとりで」住んでいるくまさんの家のリビングの壁に、結婚式で微笑む幸せそうなふたりのくまの写真が飾られていることを!
ページを遡れば、玄関には美しい妻(らしき女性)の写真が!

くまさんの過去に、いったい何があったのか? 
勤勉真面目に働く姿に差す、哀しみの影。そんな一冊です。考え過ぎか。



☆『ゆくえふめいのミルクやさん』 (ロジャー・デュボアザン 作・絵/山下明夫 訳 1997年 童話館出版)


毎日毎日同じ仕事を同じルートで行い、各玄関で繰り返される奥さまたちとの時候の挨拶に、心から飽き飽きしてしまい、ついにある朝キレて失踪してしまう「ミルクやさん」のお話。

「ひとすじ道じゃなくて、わかれ道だぞ。ドチラニ イコウカ カミサマノ イウトオリ。左だ」


人里離れた森で気の済むまでリフレッシュしたミルクやさんは、無邪気に帰ってきます。
配達先の奥さまたちと話す表情は幸せいっぱい。


失踪中、森の中でもクマたちに「毎朝バタークリームとアイスクリームを少し届けてやることにするよ」って・・・結局この仕事が好きで誇りをもっているんだなとわかってしまう、そういうお話です。



家の中で、農場で、会社やお店などの職場で・・・「仕事する姿」を描いた絵本は他にもたくさん。意外と多いのです。

その中から、「はたらくことで人生を作ってきた」というイメージが喚起される、ふたりの男が出てくる2作品。
〈勤労感謝の日〉に。






絵本コーディネーター 東條知美