(※こちらの岡田千晶さんへのインタビューは 6月に行ったものです)


 

    「あかり」(2014.11 光村教育図書)

 

 

一本のろうそくがともすやさしいあかりは少女の心のよりどころだった。

やがて少女は大人になり、ろうそくは木箱の中で長い時間を過ごすようになり・・・・・

(出版社HPより)

 

 

 

 

(東條)読者には「ろうそくの灯(ともしび)」と「人の一生」をリンクさせるような作品です。

今日は岡田さんの手による貴重なストーリーボードもお持ちいただいておりますので、そちらも見せていただきながらお話を伺わせていただきましょう。

 

 

(岡田さん)作者の林木林さん、わたし、編集者さん、デザイナーさんの4人で最初の打ち合わせの際に、表紙を開いて最初の(表題のある)「扉」のページに初めて火をつけたろうそくの絵を描き、他のシーンと一緒に下書きを数枚持っていきました。

するとデザイナーさんが「この絵が、すごくいい」と言ってくださって。
「扉ではまだ何も光を描かないほうがいい。本文が始まるページで初めて火が灯り、そこからすべてが始まる構成にした方がいい」と強く勧めてくださいました。

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(岡田さん)絵本ではデザイナーさんがつくこともつかないこともありますが、今回のデザイナー城所潤さんとは、何度も綿密に打ち合わせを行いました。

 

 

(東條)日本の絵本作家の中には、昔は特に、デザイナーの作品への介入を嫌う人もいたようです。当時の絵本批評誌によれば、故・木葉井悦子さんなどは否定派だった。

五味太郎さんは、信頼する特定のデザイナーとのみ組む、と決めていらしたようですが。

 

 

(岡田さん)たしかにこの扉の絵をひとつ無くして次のページへずらしてしまうことによって、後ろで描きたかった絵もひとつお蔵入りしています。

実は、扉の絵をどうするか?というのはそれくらい大きなことだったんです。

 

 

(東條)岡田さんは、ラフの段階、下書きの段階からすでに非常に細かく描き込まれるんですよね。

ラフの概念が変わりますよね、というくらい。完成イメージがすぐにわかる、しっかりした下書きです。

 

 

(岡田さん)たとえば子どもの表情やしぐさなども、下書きの段階からじっくりとみてもらいたいと思うんです。

けっこう一生懸命に描くので、もう一度同じものは二度と描けないんです、下書きでも。

 

 

(東條)ちなみに岡田さん、下書きを1枚描くのにどのくらい時間をかけられるのですか?

 

 

(岡田さん)この海の場面は2日くらい・・・

 

 

(東條)本にする前段階で、編集者さんらにイメージを確実に伝えたい、という思うがゆえですね。

 

 

(岡田さん)「だいたいこういう感じ」という絵にしてしまうと、受けとる方にもいろいろな幅があると思うのできちんと相手に伝わらないんじゃないかと思うんです。

だから説明が不要なくらいに、わりときっちりと下書きを用意しておきます。

 

 

(東條)そうして丁寧に作られた作品の中でもとくにこの『あかり』は、大人の心をしみじみと打つ絵本の代表作ですね。
何度でも出会いたい作品です。

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