【ほんとうに ありがとう】
☆『あかり』(林 木林 文 岡田千晶 絵 2014年 光村教育図書)
「このろうそくはね、この子の しあわせを ねがって わたしが つくったものなの。
こころに やさしい あかりが ともりますようにって」
生まれたばかりの女の子を、はじめて照らし出すろうそくのあかり。
大切な夜にだけ火をつけられたろうそくは、燃やすたびに少しずつ小さくなり、女の子は成長していきます。
嵐の夜に震える心をなぐさめ、冬の寒さを和らげ、年頃になった女の子のさみしさにそっと寄り添う小さな炎。
そうして今度は女の子のあたらしい家族を照らすあかりとなります。
やがて女の子は年をとり、ろうそくはますます小さく・・・
しまい込まれ「もう いま どこにいるかも わすれそうになった ある日」のこと。
ろうそくが照らし出したのは、ひとりのお婆さんの顔でしたー
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3/23~4/4「岡田千晶個展 絵本『あかり』原画と風景の中の動物たち 」
初日は会場の青山ピンポイントギャラリー にて、『あかり』作者と画家によるトークイベントが開催されました。
画家の岡田千晶さんはこの作品で「ろうそくの光を描きたいと思った」とおっしゃいました。
月の光、灯台の光、お日さまの光それぞれの描き分けによって、自分の身の回りだけをそっと優しく照らし出す、この小さなろうそくのあたたかな存在が浮かび上がってきます。
作家の林木林さんは、ろうそくの「長く生きるほど小さくなっていく特徴が、なんだか人と似ている」と以前から感じていたそうです。
ちいさなろうそくが世界中を照らしだす月を羨むシーンに、その対比がよくあらわれています。
燃え尽きる直前のろうそくの最後の灯は、生命のきらめきを想起させます。
3月、旅立ちの季節。
ずっとそばで見守ってくれた誰か、勇気をくれた誰かを思いながら
「ほんとうに ありがとう」と伝えたくなる.....
そしてまた自分も、このあたらしい日々に、身の回りをあたたかく照らす存在になれたらと願う.....
かたわらにそっと置いておきたい、いのちと愛の描かれた絵本です。
(絵本コーディネーター 東條知美)