公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)さんへ伺いました。

「共に学び、共に生きる」平和(シャンティ)な社会の実現のために、アジア6つの地域で子どもたちへの文化・教育支援を、また近年は東日本大震災被災者支援として、移動図書館プロジェクトなども行っていらっしゃいます。


SVAの活動のひとつである図書館事業/【アフガニスタン 絵本・紙居出版事業】。
昨年、

アフガニスタン国内で作られた絵本(2013年)をこのブログで取り上げさせていただいたのですが、今回は〈2014年に作られたアフガニスタンの絵本〉をみせていただけることになりました。


(写真:2014年にアフガニスタン国内で作られ図書館に配布。 
絵本5タイトル+紙芝居1タイトル


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30 年以上にわたる戦乱で、戦争しか知らない子どもたち。 ようやく、国の復興へと歩みはじめており、教育分野の復興も進められています。  

しかし、アフガニスタンでは子ども向けの絵本はほとんどなく、せっかく学校で文字を覚えて も、なかなか定着しないなどの問題が今も存在します。
 
アフガニスタンで 15 歳以上の識字率は、たったの 36%。女性の識字率は 20%で、5 人に 1 人 しか文字を読み書きすることができません。  

シャンティのスタッフは、現地の民話などから絵本を製作・出版し、学校や図書館で読み聞かせ をして、子どもたちに絵本に接する機会をつくろうと日夜努力しています。 

絵本は、子どもたちに夢と希望をあたえ、学ぶ力を育み、平和な社会づくりの一歩となります。

(2014年1月 シャンティ国際ボランティア会HP掲載「アフガニスタンのためにできること」より)


まず初めに、アフガニスタン事務所長の三宅さん(写真左)より改めて会の活動内容をご説明いただきました。
今回初同行のKさんと一緒に、シャンティさんの活動内容をおさらい。

(※詳細は会ホームページで。)

  


  

アフガニスタンの教育・図書環境は、タリバン政権時と比べれば少しは良くなっているとのことですが(当時女子への教育は無いに等しかったので)、内戦による混乱のため、校舎や図書館の数が足りない状態
図書室を備える校舎はわずか2割に過ぎないとのことでした。


この朝(2/19)NHKのニュースでは、2014年 アフガニスタン国内で戦闘やテロに巻き込まれての死亡者はこれまでに3,699人。負傷者を含めると1万数千人に達し、前年に比べ、また市街地においてかなり増加している」と報じられていました。



「このような状況下で、どうやって絵本を作るのだろう?」と疑問に感じておりましたが、
シャンティさんでは事務所のある首都カブールから少し離れた町で「学校・図書館運営」を行っているとのことです。

首都カブールでは国立図書館(日本で言う霞が関のような所にある)に銃弾が何度も撃ち込まれ、銃痕だらけの本も多いが、今も通常開館されている(三宅さん談)と聞いて、なんとも言えない気持ちになりました。

(アフガニスタン事務所長(東京付)の三宅さんのお話は、また後ほど。)


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ここからは、2014年 シャンティ国際ボランティア会の支援によってアフガニスタン国内で作られた絵本&紙芝居をご紹介します!


*テキストについては現地「出版委員」(大学教授やジャーナリスト、詩人等)によって、国内民話が再編、または創作され書かれます。

*絵はカブール大の先生や、SVAが建設支援した図書館に通ったかつての子どもーOBが手がけます。

*現地語のダリ語とパシュトゥー語の2種類版が国内で印刷されます。




◆『アフマドと子犬』創作:ワヒド 絵:ハシュマットット



(あらすじ)少年アフマドの子犬は、家族からは役に立たないと思われています。
ある日狼がやってきたとき身を投げ打って家のものを守った勇敢な子犬は、はじめて認められ大切にされるようになります......




◆『カメとイチジクの木』創作:ワヒド 絵:ハシュマット



(あらすじ)歩いても歩いても目的地へ辿りつけない亀。
途中出会ったウサギは「わたしの時間がもったいない」と言い、
鳥は「重すぎていやだ」と言います。
疲れ切った亀の甲に容赦なく照りつける太陽。
そんな亀を慈悲の心で救ったのは一本のイチジクの木でした......




◆『よくばりな男』(アフガニスタン民話)再話:ハニフ・サフィ 絵:サフィウラ



(あらすじ)人の物はなんでも欲しがる欲張りな男。
ある日痛んだ屋根を修理しておるところへ王様が通りかかります。
「さぞたいへんな思いであろう。屋根をきちんと直すのにいくら必要か?」
欲張りな男はここぞとばかりに、実際にかかる何倍かの金を申し出ます。
男の嘘はバレて、結局施しは一円ももらえなくなってしまいます......





◆『お祈りしましょう』ハニフ:創作 サフィウラ:イラスト



(あらすじ)兄さんが年下の妹に、「お祈りの仕方をおしえてあげよう」と、丁寧に解説します。

右頁には男性の、左頁には女性のお祈りの手順、姿態がそれぞれ示されます。





◆『素敵な屋敷』(アフガニスタン民話)再話:ハブビラ・ズラ・スワンド 絵:ムハマド・ハッサン・ハシュマット


(あらすじ)不明 ※こちらは表紙のみでした。





◆紙芝居『シカと子ジカ』再話:ハビブラ・ズラ・スワンド 絵:サフィウッラー・サブハニ

(あらすじ)森へシカを狩りにでかけた少年たち。

向こうに母ジカの姿をみつけますが、一人の少年の胸に ふとこんな風景が浮かんできます。

「・・・もし、この母ジカが死んでいなくなってしまったら、誰が赤ん坊にお乳を飲ませてやるのだろう?」


友人に「撃つのは止そうよ」と言ったのがきっかけで、取っ組み合いの大げんかに。

家へ帰った少年を、両親は「正しいことをした」と褒めます。
友人も帰宅後両親から諭され、少年に謝りにやって来ます。
二人はそれまで以上に仲良くなった...というお話。


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2013年に引き続き、全体的に教訓的な内容が中心となっています。

それでも、政情不安の中 今なお識字率が世界一低いといわれるアフガニスタン国内で、
人々のアイデンティティの拠り所ともいえる〈民話〉や〈生活の中から発生した創作物語〉が作られ、大人が子どもたちに読んで聞かせてあげられる環境が(全体といえないまでも)整えられたという事実に、希望を感じます。


絵本や紙芝居の内容については、まだまだ国内におけるの文化全体の成熟に任せるところがあるのだろうと思います。


それでも、かつてプロジェクト当初には、
「子どもが(教師の読んで聞かせたものを)笑うなんて、教師にとってたいへんな侮辱」と怒っていたアフガニスタンの大人(男性)が、
実際の子どもたちの反応や成長(知的・心の面)に接する中で、
「子どもにとって絵本、読み物、図書館もまた衣・食・住と同様に必要」
と考えてくれるようになったという三宅さんのお話に、かの国に留まらず世界中の大人が考えるべき大切な事柄・・・・生きる力を与えうる「本」ということを、改めて思わずにいられません。


(写真:シャンティHPよりお借りしました。アフガニスタンでの読み聞かせ風景)





最後に、三宅さんへこんな質問を投げかけさせていただきました。


東條:中東では恐ろしいことがおこっています。
政情不安の中住むに事欠く人々もいるアフガニスタン国内で「絵本を作る支援」、その意味とは?


三宅さん:私たちのやっていることは「種蒔き」だと思っています。
絵本は食べられないけれど、確実に〈心の栄養〉になる。発達において必要です。
絵本を読んだ子どもはその内容や経験を、次の世代に伝えます。
そうして代々引き継がれて行くことで、文化は生き残ります。
それから、すぐ身近な人がある日ふいに死んでしまったりする悲惨な状況・・・そのような状況下でこそ、子どもには楽しい読み物が必要です。





今回同行した若いKさんも、「初めて見る・聞くことばかりだった!」とたいへん刺激を受けたとのことでした。
将来は絵本や子どもに関わる仕事を志すKさんにとって、今回のお話はいろいろな事を自分自身に引き寄せて考えるきっかけとなったようです。(*^_^*)


(「知らないことばかりでした」と Kさん)


今後、SVAさんの支援により作られたアジア6か所の絵本・紙芝居をみんなで見る機会(イベント)も設けたいと思っております。


三宅隆さん、貴重な体験をありがとうございました。
来年もぜひ拝見させて下さい。


(絵本コーディネーター 東條知美)