山田花菜さんインタビュー(後編

 

ここからは、山田花菜さんご自身について伺いました。

 

【子どものころ】

東條:山田さんご自身は、どんなお子さんだったのですか?

 

 

山田さん:兄の影響で、漫画を読むのが大好きでした。『あさりちゃん』から入って、小学校高学年になると「別冊マーガレット」。いくえみ稜さんなど読んでいました。

同時に、小さいころからずっと、クリスマスプレゼントには「その年に欲しいおもちゃ」にプラスして、絵本を一冊与えられていました。母が選んだものです。絵本はいつも身近なものとしてそばにありました。

そのせいか、自分でお話を考え、それに絵をつけて遊ぶのに夢中になっているような子どもでした。運動は全然ダメ()

 

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【絵本作家への道】

東條:絵本作家になられたきっかけを教えてください。

 

 

山田さん:とにかくずっと絵を描くことが好きだったので、はじめは美大を受験しました。「商業デザイン科」みたいなところ。でも失敗して、どうしようかなと思っている時に、絵本の専門学校があると知りました。「あ、私のやりたいことはこっちだ!」と気づいたんです()

その学校で先生から絵本について学んで、仲間たちと出会いました。もちろん卒業してすぐに絵本作家になれるわけもなく、いろいろなアルバイトをやりながら、絵を描き続けました。


※山田さんのデビュー作は『アンのプレゼント』(クリハラヤスト、山田花菜(文絵)2003年偕成社。トイズボックスの土井氏による編集。

 

動けば動くほど、そこには新しい扉が待っていて、人との出会いが待っていました。

私にとってこの(絵本の)世界は、本当に面白い世界だと感じます。

 

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【好きな絵本】

東條:とても難しい質問かもしれません。私自身、聞かれていつも答えに窮するのですが…ご自身の作品以外で「好きな絵本」を教えていただけますか?

“今思いだすもの”でけっこうです。

 

 

山田:(しばらく考え込んで)

たくさんありますが、

キーツの『ゆきのひ』、バーバラ・クーニー『ルピナスさん』は外せないです。あとは、中川李枝子さんの『そらいろのたね』、林明子さんの作品については、自分が子育てするようになって改めて子どもの描写が素晴らしいと思いました。

恩師であるなかえよしを先生の作品の『ぞうのボタン』も、絵本の持つシンプルな面白さが大好きな作品です。

 

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【“母”として、“絵本作家”として】

東條:山田さんには現在3歳のお子さんと0歳7カ月のお子さんがいらっしゃいます。毎日、目の回るような忙しさだと思われますが、そんな中で作品も出されて。すごいです。

 

 

山田さん:やはり、仕事と子育てをうまくバランスとって…というのは難しい。かなり大変です()

 

 

東條:大変ですよね。一方で、渦中にいる者にしか得られないものもあると思います。

 

 

山田さん:そうだといいなあと思います。子どもの言うこと、やること全部、なにしろすごく可愛いし面白い。“絵本的な出来事”と捉えた日記のようなものは書いています。でも実際に渦中にいると、なにもできずに一日が終わってしまうことも多いので、自分にあせりを感じることもあるんです。

 

 

東條:子育てをしながら働くお母さんたちの共通の悩みですね。中でも「表現」をお仕事にしていらっしゃる場合、集中できる時間の確保というのがまず難しいはず。山田さんのこの大変な日々が、いつか、様々な作品の形で昇華される日を楽しみにしています。

 

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【これから】

東條:最後に、これから作ってみたいもの、やってみたいことを教えていただけますか。

 

 

山田さん:子どもを産み育てる中で、これまでの経験に加えて「絵本を読んであげる」といった経験もするようになりました。すると“大人がよろこぶ作品”と“子どもがよろこぶ作品”というものについて、自然とわかるようになった気がします。

こうして子どもたちと生きるチャンスを与えられたのだから、その中で生まれる世界を描きたい、というのがひとつ。

もうひとつは「お母さんのための、ホッとできるような作品」を描いてみたいというのがあります。

それから、きっと“私の絵がピタッとくる作品”と“他の誰かの絵でもよい作品”がある気がして。
だから、自分で考えて描いた…お話がピッタリのものができたとき、はじめて「作・絵/山田花菜」の作品となるような気がしています。これは私の、大きな課題なんです。

自分の中の〈文章書き〉が見せたものに対して、もう一人の〈絵描き〉の自分が「おお、これだったら描いてあげてもいいよ!」というふうになるのが理想です(笑)

 

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子育ての真っ只中にありながら、「絵本」への取り組みを常に考える山田花菜さん。
今後のご活躍がますます楽しみな作家さんです。
山田花菜さん、すてきなお話をありがとうございました!


(絵本コーディネーター 東條知美)