子どもの頃、あなたはお部屋の中でどんな遊びをしていましたか?

ミニカーを走らせ、レゴブロックを組み立て、怪獣の人形を戦わせたり、漫画を読んだり描いたりしていたでしょうか。(兄弟でプロレスごっこをしたり、案外むずかしい本を読んでいたかもしれませんね。)

自己投影したお人形にとっておきのドレスを着せお城の舞踏会へ出かけたり、帰り道にワルイ泥棒につかまりそうになり回し蹴りをお見舞い、その瞬間羽がはえてきて、遠い国まで旅立って行く・・・

私の“お人形ごっこ”は、いつもこんなふうに脈絡のないストーリーに添って進められたものでした。

 写真にも動画にも残らない、けれども確かに見ていた不可思議な世界

どんなにあり得ないことを描きだそうと、空想はもちろん理性や知性を壊すものではありません。

以前よりファンタジーが遠くなってしまったいま、子どもたちがナニカを見ている時にはできるだけ放っておいてあげたいと、大人になった私は考えたりもします。

ファンタジーを受け入れ、ファンタジーを作りだす力について思う時、わたしは子どもに対してちょっぴり敗北感を味わうと同時に、あの頃の自分が見ていた脈絡のない想像世界を、ほんのすこしだけ思い出せるような気がするのです。


自分だけの愛おしい世界を構築したあの頃の、ドキドキワクワクが甦ってくるような絵本
『マッチ箱のカーニャ』をご案内します♪

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『マッチ箱のカーニャ』北見葉胡(作絵)20133 白泉社(刊)

いつもどこか不可思議で、ガーリィな世界が描かれる北見葉胡さんの作品。

油絵の具によって描かれる豊潤な世界。

開けば、ここでひっそりと生きているたくさんの「不思議でちっちゃいものたち」の気配がざわざわと伝わってまいります。

 

『僕らの絵本』
レース柄で縁取られた表紙には、テーブルに置かれた紅茶とクッキー、そしてちょうどティーカップくらいの背の高さの女の子が、大きなスプーンを抱えてこちらを向いて立っています。これが「カーニャ」です。(可愛いですね。)

そしてそのカーニャよりもさらにさらに小さい、シルクハットを頭にのせ虫眼鏡を手に微笑んでいるなぞの豆粒みたいな人物(※奥付で「ソマリーコ教授」と紹介)はいったい?

 

『僕らの絵本』

「ソマリーコ教授」の一日が描かれた双六ふうの見返しもまた、物語の一部、サイドストーリーとして楽しめちゃいます。(ソマリーコ教授の家はどこにあるのでしょう。このあとの作品中、よく見ていればみつかりますよ!)
 

『僕らの絵本』


あるところに マッチ箱くらいの おおきさの

カーニャという おんなのこが おりました。


お話は、カーニャの紹介からはじまります。ハト模様のマッチ箱とカーニャが並んでいます。
身長は「
5.5cmくらい」です。
プロフィールは以上(笑)
あとはゆくゆく「そういうことなのね」と各々で感じとってまいりましょう。

 
ちっちゃくて可愛いカーニャの、ちっちゃい冒険物語が始まります。


さてさて、実を言いますと・・・

こちらの絵本『マッチ箱のカーニャ』につきましてはぜひ、
あたたかいお部屋の中でじっくりと、
ページを行きつ戻りつ眺めながら作品の魅力を味わっていただきたいのです。


『僕らの絵本』
たくさんの「不可思議なちっちゃいものたち」が描き込まれた世界を、ぜひじっくりと、いつもより時間をかけて楽しんでいただきたいと思うのです。


『僕らの絵本』
絵の中から「ここだよ」「みつけて」と無数の可愛らしい声が聴こえてくるようで・・・



『僕らの絵本』


あまり多くを語りたくない、ここで語ってしまうなんてもったいない!というのが正直なところなのです。
ですから私からはもう、このあたりでやめておきましょう。

『僕らの絵本』

カーニャはいったいなにもの?

この世界はいったいなんなの?


最後に出てくる少女が重要な鍵をにぎっています。

「そろそろ もどりましょう」 「きょうは ここまでね」

世界をはじめたり、終わらせたりすることのできるらしい少女の言葉に、
私たちはハッと思い出すのです。


写真にも動画にも残らない、けれども確かに見ていた不可思議な世界。



北見葉胡さんの創りだす、ちいちゃな可愛らしいものがザワザワとうごめく世界では、前のページに描かれていたものが(たとえそれが静物でも、模様であったとしても)次の瞬間には別の場所へと移動し、それぞれに勝手気ままな行動を楽しんでいます。

 

ほんとうに、あれもこれも・・・みつけがいがありますよ!

おひとりさまでゆっくりと、ちいさきものたちを愛でつつ、

お子さんやお孫さんとご一緒に、ストーリーを追いながら「変化したもの探し」をわいわいと、

どちらも格別な楽しさがあること、間違いなしです♪

『僕らの絵本』

油絵の具で時間をかけ丁寧に描かれた作品
『マッチ箱のカーニャ』

「おっきい女の子」や「ちっちゃい女の子」へ冬のプレゼントとしても、とても喜ばれそうですね♪

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作者 北見葉胡さんには、201212B&B下北沢さんにて行われました
対談イベント「僕らの絵本~グリム童話200年のひみつ」にもご出演いただいております。
とても楽しい対談でした!よろしければこちらの記録も併せてご覧くださいませ♪
◆北見葉胡さんのHPはこちら→ http://www.asahi-net.or.jp/~bg4t-ktm/

※尚当記事につきましては作者北見葉胡さんのご厚意により、作品中の画像を(スキャンしていただいたものも含め)お借りすることができました。心より感謝を申しあげます!

(東條)