(「本を読むということ (前半)」の続きです。)
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詩人 長田弘さんの書かれた詩に「本」というタイトルがあります。
長い詩なので、ゴメンナサイ略します。(本当は詩全体を読んでいただくことをおススメします。)
冒頭の部分と、最後の一文だけ抜粋してご紹介します。

 物語を読むことは楽しい。物語は出会いだからだ。物語の中で未知の人に出会う。
読んでゆくうちに、その未知の人がいつのまにか、よく知った身近な仲間のように、もう一人のじぶんのようにおもえてくる。(略)

じぶんが明るくされるような物語を読むことは、たのしい。
(略)

いい物語を読んだあとは、何かがちがってくる。きみはじぶんのほんとうの感情をみつけることができるかもしれない。
(長田 弘)

今年の「読書運動」のテーマは
「本と旅する 本を旅する」ですが、
本来読書という行為そのものが、「自分の内面への旅」であり、自分自身を発見するためのかけがえのない機会であると、私は考えております。

本のチカラと、知の結集である図書館の価値、そしてこの充実の旅の入り口となりうる「絵本」について、
改めて思うところの多い作品をピックアップしました。
ご案内します。

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☆『としょかんライオン』
(ミシェル・ヌードセン 作/ケビン・ホークス 絵/福本友美子 訳/2007年  岩崎書店)
 
としょかんには、だれでもはいれます。ライオンでも?あるひ、まちのとしょかんに、おおきなライオンがやってきました・・・さて、どうなる?といったお話。
居心地の良い図書館は、ライオンだって居たいと思うくらい素敵な場所なのですね。
作者のヌードセンは、図書館勤務の経験があるそうです。プロフィールには、「図書館でみつけた友だちがたくさんいるの。本の中の友だちと、図書館で働く友だちとね」とあります。



☆『バスラの図書館員~イラクで本当にあった話~』
(ジャネット・ウィンター 著/長田弘 訳/2006年 晶文社)
 
バスラはイラクにある港町、文化の中心都市です。
アリア・ムハンマド・バルクさんはバスラの女性図書館員。本を愛するイラクの人々のため働いています。(これは実際の出来事をもとに描かれた絵本です。)
2003年春、イラクへの侵攻がやってきます。
図書館を守ろうと、バルクさんは街の人々と共に夜中に3万冊の本を避難させます。
「図書館の本には、私たちの歴史が全部つまっている」・・・・・・

本を守ることは、その土地や人々の歴史・知を守ること。バルクさんの必死の行為には、けっしておろそかにしてはいけない大切な意味がこめられているように思います。



☆『ルリユールおじさん』いせひでこ 作/2007年 理論社)
 
パリの街かど。一冊の植物図鑑をなんどもなんども開くうちに、本の綴じ目はバラバラに・・・
本屋には新しいものがたくさんあるけれど、「でもこの本をなおしたいの」という少女。
少女は、〈RELIERRルリユール)と呼ばれる 製本を手仕事で行う職人の工房へ向かい、そこで400年の家業を継ぐ「ルリユールおじさん」と出会います・・・。

「本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。
それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのがルリユールの仕事なんだ」

さて、「わたしだけの本」を見事に甦らせてもらった少女は、やがて・・・というお話。
一冊の本が 未来を導くきっかけとなるうること  を、画家いせひでこが繊細で美しい水彩画で綴る感動の一作。



☆『最初の質問』
(長田弘 詩/いせひでこ 絵/2013年 講談社)

先から何度も登場の詩人長田弘さんと、『ルリユールおじさん』の画家いせひでこさんの作品です。
めくることによって展開する ことばと、そこに描かれる世界、そこから読み手の心に喚起されるもの ・・・・・・
美しい絵本 この形態ならではの醍醐味を感じ、また自分自身へのさまざまな問いかけのきっかけとなるような一冊です。

時代はことばをないがしろにしているー
あなたは言葉を信じていますか。


(東條)