今年の9月16日は敬老の日ですね。それぞれが「おじいちゃん」「おばあちゃん」へと想いをはせる一日。
私の祖父は現在101歳です。生涯を農業に捧げた祖父から、お山の中で四季折々に教えてもらったことが思い出されます。
春になるとどうして杉の木を起す必要があるのか、田んぼの水を山から引くためにどうするのか、かんじきを履いて雪道を踏み固める際のコツ、屋根に茅をどうやって葺くのか・・・
絵本に描かれるおじいさん、おばあさんたちからも、わたしたちは様々なことを感じたり学んだり、ときになぐさめられたり。
3冊をご案内します。
『ぶたばあちゃん』(マーガレット・ワイルド 文/ロン・ブルックス 絵/今村葦子 訳 1995 あすなろ書房)。
ずっとふたりきりで暮らしてきた、ぶたばあちゃんと孫娘。ある朝ばあちゃんは言います。「きょうは、いそがしくなるよ」「わたしは、したくをするんだからね」
図書館の本を全部返し、銀行からお金を全部ひきだして口座をとじ、すべての支払いをすませたばあちゃんは、のこったお金を「かしこくつかうのよ」と孫娘に渡します。
それからふたりは外に出て、きらめく木の葉や、水に美しく映る東屋、うわさばなしをするように集まってくる雲を見上げます。オウムのさわぐ声に耳をすませ、雨の中で土の匂いを楽しみます。
家に戻った孫娘は、ばあちゃんがかつてしてくれたように、ばあちゃんをぎゅっと抱きしめて眠りにつくのでした。
引き継がれるものの尊さに、胸がジーンとなる一冊。
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『おじいちゃん』(ジョン・バーニンガム 作/谷川俊太郎 訳 1985 ほるぷ出版)。
おじいちゃんと孫娘。ふたりの日々が、絵日記のようなカットで綴られた作品です。
「わしがこどもだったころは がっこうがおわると きのわっかをころがして とおりをはしったものさ。」
「おじいちゃんも あかちゃんだったこと あるの?」
「つれたら ばんごはんのおかずにしよう。」
「もし くじらがつれたら どうする、おじいちゃん?」
「あしたは いっしょにあふりかへいって、おじいちゃんは せんちょうになってくれる?」
なんでもないような二人のやり取りが、あの日の祖父母に包まれるような優しさを思い起こさせる一冊です。
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『エマおばあちゃん』(ウェンディ・ケッセルマン 文/バーバラ・クーニー 絵/もきかずこ 訳 1998 徳間書店)。
ひとり暮らしのエマおばあちゃん。ふだんの話相手はねこだけ。4人の子ども、7人の孫、14人のひ孫が遊びに来るのがなによりの楽しみですが、いつだってみんなゆっくりする暇もなく帰ってしまうのでさびしいと思うこともありました。
72歳の誕生日、みんなから故郷の描かれた一枚の絵を贈られます。それから毎日、エマおばあちゃんは絵を見て考え事をするようになります。
ある日 とうとう、おばあちゃんは決心します。
「おみせに でかけて、えのぐと ふでと イーゼルを かったのです。」
さあ、それからは毎日絵を描く日々です。朝から晩まで、何百枚も・・・。
かつては「かわいそうな おばあちゃん。もうおとしだものね」と言われていたエマおばあちゃんですが、今やおばあちゃんの絵を見るために、あちこちからお客さんがやってくるようになります・・・!
歳を重ねたおばあちゃんの、あたらしいことにチャレンジして夢中に取り組む気持ち、本当にすばらしいですね。
(2013/9/14)