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俳句において、「虫」は秋の季語らしい。
だったら「トコジラミ」を夏の季語にしたらいいのに、と思っていたら……
すでに季語になっていた!
「床虱(とこじらみ)」「南京虫(なんきんむし=トコジラミの別名)」は共に夏の季語だった。
さすが!
先人さんたち、分かってる~!
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でも、一つショックなことがあった。
俳句季語辞典の「南京虫」の説明欄に
「夏、不潔な場所に発生して人の血を吸う」
と書いてあったのだ!
偏見を産むのでやめてほしい。
違うから。
トコジラミの発生に、清潔か不潔かは関係ないから。
うち、別に不潔じゃないから!
*****
これまでのいきさつ:
我が家にトコジラミがいる。
トコジラミには熱攻撃が有効とされている。
そのため、掛け布団を定期的にコインランドリーの大型乾燥機にかけているトトリ。
「暑い季節は、高温になる車内でも熱攻撃ができるのではないか」と思いつく。
*****
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車内で最も高温になるのはダッシュボードの上だ。
猛暑日の炎天下、ダッシュボードの上は80度近くになることもあるという。
これは期待できる。
その日は、最高気温34度の予報だった。
真夏には及ばないものの、車内はかなり高温になるだろう。
よし、実験してみよう。
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まずは、枕で試すことにした。
枕といっても、本当の枕はすでに捨てたので、夫が枕代わりに使っている「折り畳んだブランケット」だ。
実験としては布団同様の厚みがあった方が良いので、折り畳んだままビニール袋に入れる。
ビニール袋に入れるのは、万が一トコジラミがついていた場合に車内に移すのを防ぐためである。
不安だったので、ビニール袋は三重にした。
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朝10時の時点で、車内はかなり暑くなっていた。
ブツをダッシュボードの上に置き、午後までそのままにしておく。
三時半をまわったころ、様子を見に行った。
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うーん……
ダメだ。
これは、きっと効果はない。
少なくともトコジラミには。
確かに直射日光が当たる面はかなり熱くなっていた。
しかし裏側は、ほんのり温かい程度。
これでトコジラミが死ぬとは到底思えない。
ちぇっ。
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ちぇーっ、ちぇーっ、と悔し紛れにブランケットをバタバタはたいて振り回していたら……
隣家のドアが開き、奥様が出てきた。
奥様はこの方↓
「あっ……」
「こんにちは。何をなさってらっしゃるの?」
お隣の奥様は、美人で上品で、優雅な人だ。
その奥様にまたしてもヘンなところを見られてしまい、恥ずかしさに身が縮む。
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「あー、いえ、そのー……」
トコジラミへの熱攻撃実験をしていたとは言えない。
「……車内の熱を利用してダニ対策ができないか実験してたんです」
「あら。結果はどうでした?」
「ダニならなんとか死ぬか死なないか、程度ですね」
奥様は、意外にも興味深そうにうなづいたあと、こんな言葉を続けた。
「それだと、今流行りのトコジラミには効かなそうですね」
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なんと!
奥様の方からトコジラミの話題を出して来るとは!
想定外の展開。
しかし奥様は、続いてもっと想定外なことを告白なさった。
「実は夫の実家で、トコジラミが発生したそうなんですよ」
えっ!
なんですと!?
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期せずして
仲間いたなり
床虱
トトリ・心の俳句
解説)「思いがけずトコジラミ被害の仲間がいた」という事実と、「トコジラミがいる家にはひょんなところに仲間のトコジラミがいる」という現実をかけた句である。
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