もはや世の中のほとんどの人がトコジラミのことを知っているのだろうと、当然のように思っていた。
詳しい生態までは知らなくとも、その存在は今や多くの人に知られ、皆に恐れられているのだろうと。
なので、昨日の記事にいただいたコメントを見て、驚愕した。
トコジラミ……
その虫の存在すら知らない人が、まだ普通にいるっぽい!
そうだったのか!
わたし、トコジラミの知名度を過大評価していたのかも!
りぼんさん。
トコジラミの存在すらご存じないあなたが羨ましい。
心底羨ましい。
わたしも、トコジラミのことなど知りもしなかった頃に戻りたい。
公共の交通機関にも、ホテルにも、ビクつくことのなかったあの頃に。
もう二度と戻ることはできないあの頃に。
*****
これまでのいきさつ:
姿をあらわさないトコジラミと格闘するトトリ。
トコジラミが我が家にいることを信じていない夫。
トトリ、ベッドの裏に不穏な汚れを発見!
その汚れがトコジラミの血糞であることが、ブルースリーのおかげで確定した。
*****
トコジラミの血糞がベッドの裏にあったことを告げても、夫の反応は薄かった。
「まあ、汚れにも色々あるからねー」
まだトコジラミの存在を信じていないっぽい。
「ところで血糞のサイズ、わざわざ測ったの? まあ、目測じゃ3ミリなんて細かく分からないよね。トトリ、目測苦手だし」
確かに、わたしの目測はかなり適当で、間違っていることが多い。
したがって、車の運転も苦手だ。
しかし今回は違う。
およそ3ミリというのは、間違っていないのだ。
「測ってはいないけど、比較したの」
「何と?」
「これと」
わたしは、はめていた指輪を見せた。
その指輪は、かつて記念日に夫が贈ってくれたものだ。
とても気に入っていて、わたしは結婚指輪よりその指輪をはめていることが多い。
「血糞のようなもの」をスチームクリーナーで消してしまう前に、ふと思い立ち、はめていたその指輪のサイドの装飾に使われているメレダイヤと比較したのだ。
「ここのメレダイヤと血糞、ほとんど同じ大きさだったの! で、あとからメレダイヤを測ったんだ。それが3ミリだったの」
「そう……」
わたしからこの話を聞いた夫は、なんだか微妙な表情をしていた。
ん?
どうかした?
のちに、夫はこの時のことをこう語った。
「贈った指輪が、トコジラミの血糞の大きさを測るモノサシとして使われたことが、なんか……
いや、別に怒ったとかじゃないし、別にいいんだけど、なんか……
まさかの使われ方したなぁと思っただけ。
買ったときは、こんな用途に使われるとは思ってもみなかったからさ」
ご、ごめん。
まあ、指輪を
「このサイドのメレダイヤが、いつかトコジラミの血糞のサイズと比較するのにちょうど良さそう!」
なんて想定して買う人、いるわけないよね……