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これまでのいきさつ:


リビングでトコジラミらしき虫を見かけ、おびえるトトリ(わたし)。


トコジラミ経験のあるカズキさんは、駆除の際に家財をすべて捨てたという。


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忘れもしない。

 

1月20日の深夜だった。

 

ベッドの中でスマホを見ていたわたしが、そろそろ寝ようとしたとき。

 

左足の甲に、チクっとした感覚があった。

 

わたしは瞬時に思った。

 

「ついに来たか!」と。

 

リビングにいたトコジラミが、寝室まで来たのだ。


きっと。




 

足を振り、すぐに電気をつけて布団をめくったが、もう何もいなかった。

 

「どうした?」

 

隣で寝ていた夫が尋ねてくる。

 

「トコジラミが寝室に来たと思う。足を刺されたと思う」

 

「え!? どこ?」

 

夫は起き上がると、わたしの足を手に取り、よく観察してくれた。

 

「なんともなってないけど」

 

「トコジラミに刺されたあとは、すぐじゃなくて、時間差で赤く腫れたり痒くなったりするから。今じゃないんだよ」

 

「そう? でも、ほんとにトコジラミかなぁ。刺されたっていうのも、気のせいじゃない?」

 

「いや、確かにチクってしたの!」

 

 

 

 

ここでわたし自身、少し疑問がわいた。

 

トコジラミに刺されたときは、痛くもなく、気づかないと書いてなかっただろうか。

 

チクっとして気づくことなんて、あるのだろうか。

 

でも、蚊に刺されたときだって、全然気づかない人もいれば敏感に気づく人もいる。

 

トコジラミも同じではないだろうか。





もんもんと考えるわたしの肩を、

 

「気にしすぎ、気にしすぎ」

 

と、夫がたたいた。

 

 

気にしすぎ……なの……?

 

 

迷いながら横になる。

 

相変わらずとんでもなく寝つきの良いわたしは、あっという間に眠りについてしまった。

 

しかし、翌朝……