レースのカーテンのヒダに、何かいる。
 
おそらくはトコジラミ。
 
よし、先日購入した殺虫剤の出番だ!
 
……と、思ったけど。
 
殺虫剤は、玄関の靴箱の中だった!
 
 
どうしよう。
 
取りに行っている間に逃げられてしまったら。
 
 どうしよう!!





選択肢は三つあった。
 
1.夫を大声で呼び、殺虫剤を持ってきてもらう。
 
2.急いで自分で殺虫剤を取りに行く。
 
3.今、手でつぶす。
 
 
在宅勤務で仕事中の夫相手に、まず1はあり得ない。
 
電話中だったり、リモート会議中だったらマズイし。
 
かといって、3は……
 
絶対ムリ!
 
ここは2を選ぶしかない。
 
「動くなよ~」と念を送りながら、わたしは、玄関まで急いだ。
 
殺虫剤を手に戻ってくると……
 



 
逃げられていた。
 
Oh……
 
 
仕事を終えた夫にこの件を報告したが、
 
「でも、虫をハッキリ見たわけじゃないんでしょ? 別の虫かもしれないし、カーテンのヒダにいたからってトコジラミとは限らないのでは?」
 
相変わらず、トコジラミの存在を信じてはくれなかった。
 
わたしの孤独な戦いは続く。