アメリカに渡った韓国人ファミリーの話という予備知識から、コロナ以降特にひどくなっているという、アジア人差別が頭に浮かんでいた。
が、周りは風変りだけど攻撃的ではないアメリカ人や韓国系の人たちで、意外と淡々としたテンポで、おばあさんと孫たちの関係、大規模農業の試みや失敗、夫ジェイコブと妻モニカのいさかいなどが描かれる。
うちの畑の大根で、なんちゃってヴィーガンキムチ↑
アメリカ人の仕事仲間ポールが、移民ファミリーの家で食事を共にする。ポールの前に置かれていたキムチを、においが気になるだろうとモニカが移動させようとすると、ポールがそれを制して「キムチを遠ざけないで」と言う。そのあとは、キムチ好きだよ的なセリフだったかな。
だよね、キムチ、ご飯でもパンでもおいしいよね。実際、アメリカ映画にはたいてい魅力的な料理は出てこないし、韓国映画の楽しみのひとつは料理です。
ポールとジェイコブたちは、映画の冒頭では理解しあえなかったけど、心が寄り添ってきたことが、映画の終盤のこのシーンで描かれた。
一方、夫婦の気持ちはどんどん離れていく。
彼らは、ひよこのオスメスを仕分ける仕事で現金収入を得ている。そんな生活に満足できず、田舎に広大な土地を買い、借金をして、農業で一旗揚げたいと言う夫。
妻は、持病のある息子の医療や安心安全がメインの暮らしを望む。
そこに韓国からやってきて同居するおばあちゃん。
彼ら夫婦の喧嘩を見ていると、ケン・ローチ監督の「家族を想うとき」の夫婦を思い出した。
イギリスの都市部でフランチャイズの配送の仕事で稼いで借金を返すという夫と、地道に誠実にホームヘルパーの仕事をこなす妻。彼女が仕事に使っていた車を売って、配送のトラックを購入する。個人事業主の契約だから、自分の車が必要だったのだ。
たまのごちそうはデパ地下?のカレー料理だったなあ、たしか。
みんな必死なんだけど、すべて悪い方へと転がっていく。
アメリカの大規模農業しかも農地に向いていないっぽいところで、農薬やなんかを使うのかもしれないし、ハイリスクだし、この映画でも苦労が多いのだけど
広い空や土、森や川がある。森への道をおばあちゃんと子どもたちが一緒に歩いたり、父親と息子が畑で語り合ったり。
そういう環境は、あの「家族を想うとき」の家族にはない。
世界中に貧困や生きづらさはあるけど、農的な田舎の環境は、問題解決の糸口になるのではないかな。
そしてやっぱり、重要なのは、おばあちゃんという存在。おじいちゃんではなく。
エンドロールに、すべてのグランドマザーにささげる、という文字があった。
おばあちゃん役の韓国系アメリカの女優ユン・ヨジョンさん、後日観た「藁にもすがる獣たち」では、別人のようでした。存在感ズーンって感じ。