百合枝は、右手を引き上げられた。

休刊中の博物館、闇の中、一人で、地震に遭遇した。

百合枝は気を失ったのだった。

ただ、誰か分からないが、闇の中から

右手で、

引きあげられたのは分かった。

それからの記憶が飛んでいた。

百合枝は「誰・・・・・」と思った。

しかし、百合枝は心底、「ほっと」した。

地震のショックで、少しの間、動けなかった。

数日後

地震の影響などがあり、

村木の質問に対する答えが見つからないまま

第二回目の授業のため、

百合枝は村木の教室いた。

百合枝は授業の後の反省会での村木の言葉を思い出していた。

今日の講義は、まず、前回からの復習だ。

貸借対照表についてだ。

細かいことだが、村木から百合枝は次のような忠告を受けていた。

受講生が貸借対象書と書いていた。

と村木から教えてもらっていた。

村木によれば、

講義を始めたころは、

教える側も受講生も

よく、

間違えて書くと村木から聞いていた。

貸借対照表も

ぞう「象」ではなく「照らす」である。

貸借対照表は、あくまでも企業の一定時点の財政状態を示す表です。

期間の計算書ではない。

村木によると、

どうしても企業の経営をしていると、

企業の経営成績が気になる。

特に中小零細の経営者は、損益計算書重視だ。

利益がすべてになりがちで、大切なものを見失う。

しかし、貸借対照表は、

企業の一定時点の財政状態を示す表だ。

どのようにお金を調達し、どのように運用しているか。

企業にとって大切なものを知るために重要な表だ。

勘定合って銭足らずのような、

急成長した起業家がよく陥る

黒字倒産等を防ぐためにも貸借対照表を理解することが、

重要であると村木が前回の授業の反省会で力説していた。

貸借対照表は一定時点の財政状態を示す表だ。

よく、財政状態を財産状態という人がいる。

村木はいう。

厳密にいうと現在の貸借対照表は財産状態を示す表ではない。

現在の簿記上の資産は、お金、もの、権利だけではなく、

企業が所有する擬制資産(繰延資産等)と呼ばれるものも資産である。

財産プラスαである。このプラスαが財政状態という言葉で表現されている。

しかし、村木から初心者にここまで説明すると混乱するから、

あえて言わないことも教えることには重要と村木はいう。

「わかる」という感覚を持たせることが、楽しく学べることだと 教えてもらった。

しかし、百合枝は、伝えたかった。受講生に・・・・・

それは、受講生と一緒に簿記の面白さを体験してもらいたかったからだ。

教える側にとっても「わかってもらえる」とうれいしい、やりがいも感じる

ことができる。

しかし、

受講生が一人でも「わからない」といわれてしまうと、

教える側も教える意欲を失わせてしまう。

村木の言葉を借りると「わからない」という言葉は

教える側の心を刺す。

逆に受講生に「わからない」というマイナス思考の言葉をいわせずに

質問をさせることができたなら、受講生と講師が共に成長できると

村木は、百合枝に教えてくれた。

受講生をやる気にさせ、プラス思考にすることも大切だと・・・・・

ここで講師は、「理解させること」と、「わかった」という感覚との

天秤にかける。

通常、受講後のアンケートがとられる。

このとき、

講師は自身の評価を考えて「わかった」という感覚を重視する。

受講生に理解させることをあきらめる。

いや、多くの講師は考えなくなる。

しかし、百合枝は受講生に本当に理解し、

わかってもらいたかった。簿記の面白さを・・・・・

百合枝自身のチャレンジだった。

自らの右手でドアを開け、

颯爽と中に入った。

スッポトライトがあたっている

格闘技のK1や宝塚劇場の舞台に上がるように、

輝いていた。

教室では、

受講生の熱気が感じられる。

まず、挨拶から、「こんばんは。」

百合枝のチャレンジが、始まった。
百合枝は、大きく深呼吸をした。

次の瞬間、「こんばんは。」と第一声を放った。

百合枝は思った。

授業の始まる第一声は、やはり緊張する。

ここでちゃんと挨拶をしていないと、

高校のときに、塾で小学生に算数を教えたとき、

受講生の視線が集まった瞬間、

緊張のあまり頭が真っ白になり、

なにがなんやらわからなくなった。

受講生の顔がまともに見れなくなってしまい。

黒板に話しかけるようになってしまう。

黒板が友達になってしまう。

こうなると講義をやっていても面白くないし、辛いだけだ。

受講生もかわいそうだ。

村木に教えてもらった挨拶をしっかりすることが大切だと感じた。

緊張がひいた。

受講生の視線が百合枝に注がれた。

百合枝は、受講生と真剣勝負をする。

「前回の復習から、」

と百合枝は語り始めた。

「簿記は、英語で『 Book keeping ブックキーピング』といいます。」

「100年以上前に欧米の簿記の本が来ました。」

「もちろん外国語で書かれています。」

「そのころのわが国は英語などしゃべれる人はあまりいません。」

「もちろん、読むことも大変です。」

「外国の技術を何とか学ばないといけません。」

「日本はそれまで何百年もの間、鎖国していたのですから・・・・・」

「 Book keeping ブックキーピングが、」

「明治維新が終わった日本人たちに伝言ゲームのように伝わっていきました。」

「ブックキーピング」

「ブックキーピング」

「ブッキーピング」

「ブッキーピング」

「ブキーピン」

「ブキーピ」

「ブキーヒ」

「ブキー」

「ボキ」

「と日本人の耳にはアクセントのある

『ボ』と『キ』だけが残ったという説がありますが・・・・・」

「 Book keeping ブックキーピングを漢字で音訳したのでしょう。」

「ただ、昔のことなので真意はわかりません。」

「ただ、皆さんが毎日、肖像画が持ち歩いている人が英語を訳して伝えました。」

「すみません私は、持っていませんが、」

「教室を見回した。」

百合枝は登米 大吉さんに目が留まった。

「登米 大吉さんの財布の中には・・・・・」

百合枝は登米に尋ねた。

「今、店を閉めてきたので、諭吉さんはいっぱいおるで・・・・・」

と元気良く登米は答えた。

「多いと気分がええな・・・・・」

百合枝は微笑みながら、答えた。

「諭吉さんの書いた『福翁自伝』のなかで『私は維新後早く帳合之法

という簿記法の書を翻訳した。』とあります。」

「商売では、諭吉さんが描かれている紙幣。」

「お金の流れを記帳したものが簿記という人がいますが・・・・・」

「諭吉さんは簿記と縁が深い人ですね。」

百合枝は村木の模擬講義を思い出して続けて語り始めた。

「商売を長く続けるには、現金などのキャッシュを多く持つことが大切です。」

「でも、盗難・紛失等があるので、その日に銀行に預けたほうがいいですよ。」

と百合枝は登米に話した。

登米は、

「でも・・・店閉めたら銀行、閉まってるで・・・・」

百合枝は、

「銀行の時間外、すなわち午後三時以降、店を閉めたあと。」

「登米 大吉さんの店、果物屋さんの現金売上は、その日のうちに、」

「夜間金庫に入れたほうがいいですよ。」

「夜間金庫は彦根銀行のドアの横にある銀色の金庫です。」

「銀行と契約をして、利用したほうが安全です。」

「帳簿への記帳はその日のうちに金曜、土曜、日曜の夜であっても」

「通帳の普通預金は、彦根銀行の営業日の月曜日になって、帳簿と通帳の入金日がずれますが・・・・・」

「帳簿の記帳では問題ありません。」

「登米 大吉さん」

登米は大きくうなずいた。

そして、

登米は・・・・・

「百合枝・・・」

「百合枝せ・・・」

「百合枝せん・・」

「百合枝せんせい」

「百合枝せんせい」

「百合枝先生、ありがとう」

と百合枝に向かって答えた。

百合枝は、余談になったが、登米の満足そうな表情と

毎日、実務を経験している登米に先生として認められたのが嬉しかった。

百合枝は、初めて「先生」と呼ばれて

素直に、

「嬉しかった。」

なんとなく、これからも「私はやれる」と自信が
湧いてきた。
百合枝は、大きく深呼吸をした。

次の瞬間、「こんばんは。」と第一声を放った。

百合枝は思った。

授業の始まる第一声は、やはり緊張する。

ここでちゃんと挨拶をしていないと、

高校のときに、塾で小学生に算数を教えたとき、

受講生の視線が集まった瞬間、

緊張のあまり頭が真っ白になり、

なにがなんやらわからなくなった。

受講生の顔がまともに見れなくなってしまい。

黒板に話しかけるようになってしまう。

黒板が友達になってしまう。

こうなると講義をやっていても面白くないし、辛いだけだ。

受講生もかわいそうだ。

村木に教えてもらった挨拶をしっかりすることが大切だと感じた。

緊張がひいた。

受講生の視線が百合枝に注がれた。

百合枝は、受講生と真剣勝負をする。

「前回の復習から、」

と百合枝は語り始めた。

「簿記は、英語で『 Book keeping ブックキーピング』といいます。」

「100年以上前に欧米の簿記の本が来ました。」

「もちろん外国語で書かれています。」

「そのころのわが国は英語などしゃべれる人はあまりいません。」

「もちろん、読むことも大変です。」

「外国の技術を何とか学ばないといけません。」

「日本はそれまで何百年もの間、鎖国していたのですから・・・・・」

「 Book keeping ブックキーピングが、」

「明治維新が終わった日本人たちに伝言ゲームのように伝わっていきました。」

「ブックキーピング」

「ブックキーピング」

「ブッキーピング」

「ブッキーピング」

「ブキーピン」

「ブキーピ」

「ブキーヒ」

「ブキー」

「ボキ」

「と日本人の耳にはアクセントのある

『ボ』と『キ』だけが残ったという説がありますが・・・・・」

「 Book keeping ブックキーピングを漢字で音訳したのでしょう。」

「ただ、昔のことなので真意はわかりません。」

「ただ、皆さんが毎日、肖像画が持ち歩いている人が英語を訳して伝えました。」

「すみません私は、持っていませんが、」

「教室を見回した。」

百合枝は登米 大吉さんに目が留まった。

「登米 大吉さんの財布の中には・・・・・」

百合枝は登米に尋ねた。

「今、店を閉めてきたので、諭吉さんはいっぱいおるで・・・・・」

と元気良く登米は答えた。

「多いと気分がええな・・・・・」

百合枝は微笑みながら、答えた。

「諭吉さんの書いた『福翁自伝』のなかで『私は維新後早く帳合之法

という簿記法の書を翻訳した。』とあります。」

「商売では、諭吉さんが描かれている紙幣。」

「お金の流れを記帳したものが簿記という人がいますが・・・・・」

「諭吉さんは簿記と縁が深い人ですね。」

百合枝は村木の模擬講義を思い出して続けて語り始めた。

「商売を長く続けるには、現金などのキャッシュを多く持つことが大切です。」

「でも、盗難・紛失等があるので、その日に銀行に預けたほうがいいですよ。」

と百合枝は登米に話した。

登米は、

「でも・・・店閉めたら銀行、閉まってるで・・・・」

百合枝は、

「銀行の時間外、すなわち午後三時以降、店を閉めたあと。」

「登米 大吉さんの店、果物屋さんの現金売上は、その日のうちに、」

「夜間金庫に入れたほうがいいですよ。」

「夜間金庫は彦根銀行のドアの横にある銀色の金庫です。」

「銀行と契約をして、利用したほうが安全です。」

「帳簿への記帳はその日のうちに金曜、土曜、日曜の夜であっても」

「通帳の普通預金は、彦根銀行の営業日の月曜日になって、帳簿と通帳の入金日がずれますが・・・・・」

「帳簿の記帳では問題ありません。」

「登米 大吉さん」

登米は大きくうなずいた。

そして、

登米は・・・・・

「百合枝・・・」

「百合枝せ・・・」

「百合枝せん・・」

「百合枝せんせ・」

「百合枝せんせい」

「百合枝先生、ありがとう」

と百合枝に向かって答えた。

百合枝は、余談になったが、登米の満足そうな表情と

毎日、実務を経験している登米に先生として認められたのが嬉しかった。

百合枝は、初めて「先生」と呼ばれて

素直に、

「嬉しかった。」

なんとなく、これからも「私はやれる」と自信が湧
いてきた。