みなさん、こんにちは!
簿記の教室メイプルの南です。
今回もTwitterからきた話なのですが、Twitterで「標準原価計算の直接労務費の差異分析で、内訳を賃率差異と時間差異に分けることができますが、そのうち原価管理上、重要なのはどちらの差異でしょうか?」という問題を出したところ、両者の答えが拮抗していたので、今回はこの件について、説明したいと思います。
まず結論から言うと、原価管理上、重要なのは時間差異のほうです。ここで言うところの原価管理とは、工場の現場責任者の業績評価という観点からのものです。すなわち、現場の責任者がしっかりと部下を管理して、作業を行えているかということです。
時間差異が意味することは、簡単な言葉で言うと、工員さんがちんたら働いていなかったかどうか、ということです。現場の責任者がしっかりと部下を管理していれば、部下も緊張感をもって、無駄な時間を排して働くはずです。逆に現場の責任者がしっかり部下をできずにいると、部下は多少手を抜いてちんたらとやってしまうことになります。その結果が時間差異です。
なので、時間差異というものは現場の責任者がしっかりと部下を管理していれば、大きな不利差異など生じないものです。よって、時間差異は現場の責任者が責任を取らなければならない差異ということになります。
それに対して賃率差異は、本来だったら賃率の低い新人工員さんに担当してもらうはずだったのに、何らかの理由でその新人工員さんが作業できずに、結果として賃率の高い工員さんに働いてもらわなければならなくなって生じた差異です。そして賃率(簡単に言うと時給)というのは、現場の責任者レベルが決められるものではなくて、もっと上層部、例えば人事部長などが決めるようなものです。なので、賃率差異については、現場の責任者では如何ともすることができないので、責任範囲外ということに一般的にはなるわけです。
なので、現場の責任者の業績評価をするうえで大切なのは、時間差異ということになるのです。
そして実は、ここからがさらに大切な話になります。
直接労務費総差異を賃率差異と時間差異に分ける際には、いわゆるボックス図(あるいは箱図)を使うことが一般的です。
手書きできたなくて申し訳ないのですが、こんな感じの図です。
そして、このときになぜ、ボックス図を横に区切って差異を分けているのか、あるいは、下の図でいうとピンクの部分をなぜ賃率差異に含めているのか、ご存知でしょうか?
実はこれが先ほどの賃率差異と時間差異のどちらが原価管理上、重要かという話に繋がってきます。
図のピンクの部分は、賃率の違いからも時間の違いから生じている差異です。ですが、通常、賃率差異に含めて処理することが一般的です。その理由は、原価管理上、時間差異を純粋な形で出したほうが、現場の責任者の業績を評価する上で有用だからです。
もし、ピンクの部分を時間差異に含めてしまって、現場の責任者の業績評価を行うと、現場の責任者は怒ってしまいます。どんな感じで怒るのかというと、「たしかに時間差異は私が責任を取らなければならない差異です。ですが、ピンクの部分は時間の違いからも生じていますが、賃率の違いからも生じているじゃあないですか!時間に関しては私に責任がありますが、賃率については私には責任を取ることができないのだから、そんな部分を含めて私の責任にされてしまうのは、納得がいきません!」てな具合です。
だから、時間差異を純粋な形で出して、現場の責任者の業績評価に繋げるために、ボックス図を横に区切って、あるいはピンクの部分を賃率差異に含めて処理しているのです。
ちなみに、ピンクの部分のことを原価計算の学者の先生は、「混合差異」なんて言い方をすることがあります。賃率部分と時間部分が混ざっているから、という意味ですね。
なお、今の話は直接材料費の価格差異と数量差異にも同じことが言えます。
このような話を理解していれば、差異分析をする際に、ボックス図を縦で分けるか、横で分けるか、なんて悩みは絶対になくなります。
これがちゃんと理解するということなんです。ちゃんと理解できれば、すんなりと頭の中に入ってきますし、話がわかっているので忘れることもありません。
解き方のテクニックだけで問題を解こうとすると、昨今の簿記2級の試験には対応できないと思います。
まだまだ6月の試験まで時間があるので、勉強のやり方をもう一度見直してもらえればと思います。
ファイト!