旅行の楽しみ(その3) | ぼくの秘密日記

旅行の楽しみ(その3)

熱海駅のホームは既に薄暗い夕闇に包まれていた。

階段に向かって歩き出したが、目の前を中年女性が3人並んで、おしゃべりをしながらゆっくり歩いている。
追い越したいが、ひとりでも幅いっぱいな女性が3人も横に並んでいるのだ。
高速道路で全車線をふさいでいる一列横隊の10トントレーラーの後ろについてしまった気分だ。
しかもワタシはズウタイは大きいが気が小さいことでは人後に落ちない。
トレーラーに声をかける勇気もないし、かけたとしてもワタシのか細い蚊の泣くような声など、彼女たちの豪快な笑い声にかきけされてしまうだろう。

しかし、ワタシは急いで乗り換えなくてはならない。
その焦りをトレーラーの後ろをウロウロすることで表したが、トレーラーは気配すら感じないらしい。
ワタシが上品な紳士だからいいようなものの、もしバナナワニだったら後ろから噛みついているところだ。
ようやく重戦車隊の前に出たのは、新幹線の改札を抜けた後だった。

伊東行きの電車は、ホームに泊まっていたが、出発までまだ15分ほどある。
長い道中に備えて、またビールを買い直す。
片手に缶ビールとつまみの入ったビニールを下げた上品な紳士は、空いた車両を探して先頭車に乗り込んだ。
次は伊東で乗り換えだが、乗換時間が2分しかないようなので少し不安だ。(続く)