1月31日、一晩を皆で一緒に過ごしてみて、

この犬がお母様の家に行くのは無理と決まりました。

当然です。

90歳のお母様にいきなり介護犬は無茶な話です。

かくしてラッキーはのりこ宅の居候犬になったのでした。


私が訪ねた午後には

「あの声で頭痛がしてきた…」

とのりこさんが言うように、せっせと吠えていました。

初めて飼う犬が介護犬。

これはのりこさんにとっても無茶な話なのです。

希望したわけでも予定していたわけでもなく、突然やってきたわけですから。

生活のリズムが根底からくつがえされるのですから。

「どうしても無理だと思ったら、もう一度警察に届けるという選択もあるからね。」

と言った私にのりこさんは言いました。

「それは、この子の命がなくなることを意味するよね。それだけはできない。」


その夜、のりこさんはラッキーを一匹で家に残し、留守番させることにしました。

夕食を含めて4時間の外出でしたが、ちゃんと留守番できたようです。

ずっと吠え続けることもなく、玄関のあたりにいたようでした。

守番ができるなら、仕事に行ける。

一歩前進です。

セッション#2

睡眠不足で行ったセッションは

後脚 足首から先のリハビリ

で眠ってしまいました。


思えば、のりこさんはわずか3週間前にここへ引っ越してきたばかりです。

家の中にはまだ片付いていないダンボールが積み上げられています。

「近くに住みたいね」と言っていたのが実現した途端にこの事態。

私は協力を惜しまない

とこちらも新たな決意をしたのでした。


そこで、気分転換に、のりこさんを近所のツアーに誘いました。

まず、散歩仲間の友人、Aさん宅へ。

使っていないケージがあると聞いていたので、お借りすることにしたのです。

Aさんとタフィ(シーズー)は、昨年大阪でのアニマルアクセスに参加していて、

のりこさんとはすでに面識がありました。

ケージの大きさはラッキーにぴったりのサイズでした。感謝。

次にペットショップのマルエスへ。

おしめのずれ防止用に、マナーパンツを買いました。

首に引っかけてはかせるパンツです。

おしめの上からはけば、少々動いてもおれてオシッコがはみ出ることもないでしょう。









翌、1月30日、事情を知らないご主人のお母様は、

家に来るかもしれない小さな犬にすでに「ラッキー」と名前をつけていました。


のりこさんは仕事を終えて急いで帰宅し、ドッギーヤマトさんへ犬を迎えに行きました。

シャンプーをしてもらい、すっかりきれいになったラッキーは、オムツをしてもらっていました。

「ごはんを食べて、水も飲みました。おとなしくしていましたよ。」

そして、

「新たな傷を見つけました。足首にかさぶたがあるのです。
 
 両足首をしばったような、ヒモとかではなくワイヤーのような硬いものでできた傷のようです。
 
かさぶたが厚いので、長い期間その状態だったのではないかと思われます。

 やせているし。ふつう1カ月くらいではこんなにやせないので……。

 本当に劣悪な環境にいたのでしょうね。」

オーナーの新谷さんはとてもよくして下さいました。

犬を飼ったことのない のりこさんは、フードやオムツのことなど、

世話の仕方を指導してもらい、家へ連れて帰ったのでした。


さて、新しい家でラッキーはどうしたでしょう?

吠えたのです。

鳴くのです。

おとなしかったのは昨日の話で、今日は家の中では動き回っています。

前足だけでずりずりと。のりこさんだけを見つめて、のりこさんだけを追いかけて。

ご主人にも、お母様にも見向きもせずに、

のりこさんの姿が見えないと甲高い声で呼ぶのです。

普通の「ワン」とか「キャン」とかではなく、

「ケン!」とか「ギャン!」が混ざったような

それはそれは耳障りな神経を逆なでするような鳴声で。

この状態をなんとしよう。

3人は途方にくれました。

自分達もうるさいが、近所に迷惑がかかる。


動き回るから、オムツがずれて、そこら中にオシッコをするし、ウンチもするし。

鳴声で眠れず、夜が明けたのでした。




2010年1月29日の朝、ムーランと公園を散歩していた時のこと。

ムーランがいつものルートからはずれて反対方向へ行き、

立ち止まって首を前へ伸ばしています。

と見ると、犬がそこに。ミニチュアダックスがひとりで座っています。

「あら、こんなところでどうしたの?迷子になったの?」

じっと私を見ています。

周囲に人とはいないし、このまま置いても行けないし、

とりあえず車のトランクにあった小さなダンボールに入れて、助手席の足元へ乗せました。

急いで出勤の準備をして、固形フードと水を持って戻るとおとなしくじっと箱の中にいました。

少し食べて水を飲んだので一安心。

その時、首輪をしていないことに気づきました。

一緒に出勤するのりこさんも同乗して、警察へ届けに行くと、

「金曜日なので3時までに飼い主からの連絡がなければ

  保健所へ連れて行くことになります。」とのこと。。

出勤途中の車の中で「かわいい子やったね。おとなしいし。いい目をしてたわ。

迷子になったんやろか。いつからあそこにいたのかな。」などと話し合っているうちに、

のりこさんがあることを思いつきご主人に電話をしました。

ご主人のお母様が90歳になり近頃元気がないので、

身近に小さい犬がいれば気が紛れるかもと思ったのです。

ご主人がいいよと言ってくれたので警察に連絡を入れました。

飼い主さんが現れるまで預かってくれる人が見つかったので保健所は待ってください。


その夜、仕事の帰りにその子を引き取りに行きました。

警察で収得物の書類を書いていると、オスかメスかを確認するため抱き上げた警察官に

思いっきりオシッコをひっかけたのです。

「オスや。」

オシッコは止まりません。そのクサイこと。。

床にもいっぱいばらまいた後、別の箱に移されました。

その足でペットショップのドッギーヤマトさんへ。

事情を話してあったので、今夜は泊めてもらい、

翌日シャンプーをしてもらう手はずになっていたのです。

そこでも抱かれたとたん、オシッコをジャーーー。

「あれ?この子は足がわるいですね。」

「へ?」

「後ろ足が悪いみたいです。」

と言いながら床へ降ろすと、あらまあ、前足だけでズリズリと動いています。

後ろ足は引きずったまま。それも両方とも。のりこさんと私は顔を見合わせて絶句しました。



ドッギーヤマトのオーナーの新谷さんは犬の唇をめくり、歯を見て

「若くはないです。8才くらいですかね。」

足を調べてみて、

「爪のないところがあります。指の間に傷がある。これは新しい傷です。

  肉球がきれいなので、長いこと外をさまよっていたわけではなさそうです。

などと、次々と所見を述べてくれます。

私たちは茫然とただそこに突っ立って聞いていました。

それにしても、いったい…。


われに返った私たちは、急いで近くの宮川動物病院へ向かいました。

ここでもオシッコをじゃーーー。

「ヘルニアの可能性があります。
 
 ダックスは胴が長いからヘルニアになりやすい犬種です。
        
 爪のないところがありますね。指の間に傷もある。
                  
 (唇をめくって)若くないです。8才くらいかな。」

新谷さんと同じ所見です。

「事故の可能性もあるので、一応レントゲンを撮りましょう。」

レントゲンに写った骨は、しっかりしているように見えます。

「事故の形跡はないようですね。

 両足が完全に麻痺していますから、やはりヘルニアと考えられるでしょう。

そして足をつねって

「ふつう、こんなふうにされると痛がって足を引っ込めようとします。

      見てください。ただブランとしているでしょう?両方とも。」


「血液検査の結果、肝臓の数値が異常に高いので、手術はまず無理です。

                     たぶん今後もこのままの状態だと思います。」

先生はゆっくりと言葉を選びながら説明してくださいました。


「飼い主が捜しているとしたら、とっくに連絡が来るはずです。
  
 警察へも病院へも連絡が入らないということは、
    
     捜されていないと思って間違いないでしょう。」


私たちは絶望的な気持ちで再びドッギーヤマトさんへ戻り、診断結果を伝えて、

予定通りに犬を預けて帰ったのでした。



その夜、のりこさんは自分を代理人にして犬のボディトークをしました。

結果は以下の通りです。


<セッション#1>


クローバー外皮系の悲しみの解放   肝臓の怒りの解放   膵臓反射点
 
クローバー膵臓反射点 →  免疫系の中のリンパ循環 →  免疫系の中の血液循環 → 
  左後脚   一般環境 置き去りにされた恐怖 骨盤から侵入し、神経系へ影響
  →  三角筋の悲しみの解放


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