選手は、審判の判定に従わなくてはなりません。
抗議はできるけれど、最後は審判の判定に従わなくてはなりません。
なぜならその厳しい原則がないと試合にならないからというのは当たり前のお話。
しかし、だからと言って「抗議しない」のは違うと思うのです。
抗議という行為をする理由は、判定に異議あり、だけではありません。
それ以外にも様々な狙いや効果があるのです。
選手の心理面にとっても重要なので、特に指導の立場にある方はぜひ読んでみてください。
***
一つは、「間をとる」効果です。
これはスポーツ界ではわりと一般的に理解されていることかもしれませんし、意図的にやっている選手や監督も多くいると思います。
”微妙な判定”に対して、不利な判定をされた側には必ず心理的な影響が起こります。
腹が立ったり、イライラしたり。
一番良くないことは、次のプレーにそれを引きずることですね。
その状態のまま次のプレーに入る。
当然高いパフォーマンスにはなりにくい状態です。
*逆に高いパフォーマンスを発揮する選手も稀にいますが。
なので、選手が冷静になるための時間的な猶予を作るために、判定が覆らないことがわかっていても抗議をします。
もう一つは、心理的な代役です。
こちらが実はかなり重要。
「抗議している姿」を見せる、という効果です。
目的としては一つ目と共通している部分が多いと思います。
判定が覆らないからといって、”理不尽な判定”に対して抗議をしない態度は、その当事者となった選手からしたら孤独感を感じさせることになります。
例えば野球で内野ゴロ、微妙なタイミングでアウトの判定をされたとき。
打った本人は、自分の方が早く一塁に到達したつまりセーフであると確信があるケース。
(野球やったことある人ならわかると思いますが、これ本人はアウトかセーフかがめっちゃわかるんです)
そんなとき、本人だけが「セーフだ!!」と抗議しているときに他の誰も抗議してくれなかったらどんな感情になるでしょうか。
「なんで誰も味方してくれないんだ?」
この感情は最もきついと言ってもいいぐらい。
アウトになったことよりも、誰も味方してくれなかった状況そのものがきつい。
味方であるはずの監督・コーチ・チームメイトはなんで誰も抗議してくれないんだ。
みんな俺が間違っていると思ってるんか。。
経験があるかもしれませんが、この「自分だけが」抗議している状況ってものすごくきついんです。
特にチーム競技においては、孤独感はものすごくマイナス作用を生み出します。
逆に、そんな時に監督がベンチから飛び出してきて猛抗議をしてくれたら。
選手の気持ちはこれとは真逆になります。
俺のためにめっちゃ抗議してくれてる。
俺がセーフだと主張したことを信じてくれている。
当事者以上に、代役が怒りを表現してくれる姿。
それを目にすることで、当事者は冷静になれるし、その姿に鼓舞されます。
プロ野球ファンの方はこのスタイルに、闘将・星野仙一氏の姿を思い出したかもしれません。
https://ameblo.jp/skyline2000rsturbo-c/entry-12342974620.htmlより引用
https://mainichi.jp/graphs/20180106/hpj/00m/050/002000g/10より引用
星野仙一さんは、これを意図的にやっていた代表格です。確か著書にも記されています。
「俺が抗議しなければグラウンドの選手が孤立するから。」
本当はものすごく温厚な方が、闘将と言われるほどのスタイルで「猛抗議する姿」は、判定を覆すためではなく「グラウンドの選手にその姿を見せていた」というわけです。
おとなしいチームだった弱小阪神タイガースを優勝させた時にものすごく重視していたスタイルと言われています。
https://www.daily.co.jp/gossip/2018/02/02/0010949940.shtmlより引用
理不尽な判定を、逆にチームを鼓舞する材料にしていた彼はやはり名将なのだと思います。
プロ野球以外では、監督が直接抗議できる競技はあまりありませんが、これはグラウンドにいる判定当事者以外の選手にも同じ役割はできると思います。
特にチームキャプテン、ゲームキャプテン、頑張ってほしい。
そしてチームメイトは、判定当事者はもちろんのこと、抗議する存在も決して孤立させてはなりません。
監督や選手が抗議している姿、ベンチで抗議に対してエキサイトしている姿に、そんな意図があるかもしれないことを考えてください。
抗議している間、抗議者以外がやるべきことは、一緒にエキサイトすることでもなく、冷めた目で見ることでもなく、次のプレーに集中するための準備をすることです。
全てはパフォーマンスアップのために。
中野 崇
抗議はうまくならないけれど、身体操作はうまくなるプログラム。
▶︎トレーニング動画プログラム
https://jarta.jp/online-jarta-training-program/
▶︎JARTAのトレーニングサポートのご依頼はこちら。
▶︎トレーナー向け
JARTAトレーニング、コンディショニングスキルを体系立てて徹底的に学んでいただけます。
https://jarta.jp/j-seminar/newcourse/
JARTAのオフィシャルLINE@
CMは流しません。
不定期配信ですので、通知が便利だなと思われる方はぜひ友だち登録してみてください。