こんにちは。

スポーツトレーナー協会JARTA代表の中野崇です。

 

 

 

スポーツ界だけでなく、一般的にもすでに定着した感のある「体幹」という言葉。


テレビでの中継の際も、選手のすごい動きが見られた際に解説者の方が「体幹が強い」と表現することが増えました。

 

 

「体幹が強い」という言葉を聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?

 

インタビューで選手が「体幹を鍛えています」「体幹が強くなってきました」と答えた時、どんなトレーニングをしていることをイメージしますか?

 

 

 

JARTAでは以前、サッカー指導者向けのアンケート約300名の調査を行いました。

調査結果では、実に56%の方が「体幹トレーニングを重視している」と回答していました。

 

 

 

先の質問、、一般的な体幹トレーニングが目指しているように、体幹部分(人間の胴体)が一塊になってどんな外力に対しても強固に動かないようなイメージをされた方も多いと思います。

 

 

 

確かにサッカーやラグビーなどのコンタクトでそのような場面も見られます。

最近専門家の間でよく耳にするようになってきた、「体幹トレーニングによって身体を固めることの問題」はもちろんありますが、身体を固めることそのものは人間の構造上重要な能力の一つではありますので、全面的に否定はできません。

 

 

 

固める能力も重要なのです。

*ただしスポーツで体幹部分を固める能力が要求されるのは、時間的にはほんの一瞬です。直後にはもう固定を解放できなければなりません。

 

 

 

僕が今回問題提起したいのは、固めるか否かというレベルでのお話ではなく、「言葉の定義」についてです。

ここをしっかりと深めないと、これからもトレーニングや身体操作の良し悪しの議論は終わらないと思います。

 

 

 

「体幹」が「強い」。

 

 

 

「体幹」という言葉。

「強い」という言葉。

 

 

 

「体幹を強化する」という目的で体幹トレーニングを実施する上で、指導側は最低限この二つの言葉について定義しておく必要があります。

 

 

 

定義、つまり、いろんな解釈ができる言葉を、「ここではこういう意味ですよ」と決めて共有するということです。

 

 

 

【「体幹」の定義】

一般的な定義は、腕や脚、頭を除いた胴体部分ですね。

しかし専門的には、体幹という部分は、簡単に表現しても背骨・肋骨・骨盤(腸骨・仙骨)、肩甲骨・股関節、それらに付着する多種多様な非常に多くの筋肉、そして内臓や靭帯で構成されています。

それらには当然、各器官で担っている機能があります。

 

 

ややこしいですが、、

要するにめっちゃいろんな動きや機能が含まれてるってことです。

 

腕や脚とは比べものにならないくらい、複雑な構造なのです。

 

体幹トレーニングで、体幹のあらゆる要素が強調して固める、というのは、これらのほんの一つの機能に過ぎません。

 

 

 

僕はこの体幹については、「腕や脚が持つのとは比べものにならないぐらい多くのものを含んだ複雑な動きを行える構造体」と定義しています。

 

同時に「その操作性が最もパフォーマンスに影響を与える部位」としています。

ちょっとまだ曖昧ですが、専門家でない方は、「体幹は”自由に動かせる”とバランス・パワー・スピードが向上する部位」と理解しておいていただければ十分だと思います。

 

 

 

【「強い」の定義】

こちらが非常に難題です。

体幹という言葉はともかく、この「強い」という定義次第であらゆるトレーニングの方向性が大きく変わります。

 

多くの方が「強い」という言葉からイメージされることだと思いますが、この言葉には、「強固・頑強・不動」といったイメージが想起されます。

 

実際、体幹という言葉とセットで使われるもう一つの頻出ワードは「ブレない」体幹です。

 

ではこの「強い」に加えて「ブレない」も合わせて定義を考えてみましょう。

 

 

 

結論から言うと、僕はこの「(体幹が)強い」という言葉は、コンタクトスポーツにおいては、「外力に対してバランス・スピード・周囲への認識を崩さずに動き続けられること」と定義しています。

 

 

 

指導者や選手がイメージする「強さ」には、大きく分けて2通りあります。

まず、相手と当たった時に感じる強さ。

どん、という固い感じや、相手を吹っ飛ばすような感覚です。

もう一つは、いくら強く当たられても倒れない強さです。

 

 

 

前者は、地面からの反力を考えても、一般的な体幹トレーニングで得られる「体幹部分を固める強さ」で対応可能なことが多いと思います。

ただし、体幹部分が一塊になって固めているだけでは実現は不可能です。

物理的な強さを得るには、当たる際の角度や、その角度に入るまでのスピードが重要です。

 

 

 

一方、当たられても倒れないという側面に関しては、物理学的・運動学的に見て、一般的にあるような頑丈に固まる「ブレない体幹」では全く実現不可能です。

特に自分よりも筋力やスピード、体格で大きい相手に対しては、戦略としては有効とは言えません。

 

 

 

「ブレない」については、簡単な例でいえば耐震構造があります。

昔は、地震で倒壊しないための対策として、とにかく建物を強く、固くという方向にありました。

しかしそれでは建物は一定以上の震度だと倒れました。

 

 

 

そこで現在は「揺らぐ」という戦略がスタンダードとなりました。

つまり、外力(揺れ)に対して力(固さ)で対処するのではなく、あえて揺れ動く機能を持たせることで倒れないようにしているのです。

また、車でも同様の戦略を取られるようになっています。

昔はとにかく車体を強固にしていましたが、今は車体を柔らかくし、衝撃に対して大きく凹むようにすることでドライバーを衝撃から守るという方法です。

また、最近のスーツケースの緩衝戦略も同じ流れですね。

押すとベコッと凹むようになっています。

 

 

 

そういった視点でトップ選手をよく観察してみてください。

ネット上で見つけられるコンタクトの瞬間の写真で十分です。

彼らの体幹は、自由自在にその形を変えて、外力に対して対応しています。

 

 

 

バランスをとるという戦略を物理的に捉えた場合、例えば右肩が後ろに引っ張られたら、左肩を前に出せば、「合計として」重心位置は動きません。

 

物理学的に見ると、片方のベクトルに対して反対方向のベクトルを発生させると力は相殺されるということになります。

 

その結果、人は倒れずに動き続けることができます。


つまり、体幹部分だけに特化すると、「ブレられる」ことが必要なのです。



 

その観点では、コンタクトによって末端である頭が動かされてしまうと、バランスは崩れます。

物体の頂点である頭が動いてしまうと、他をいくら反対方向に動かしても、回転運動が生じるからです。

 

 

 

トップ選手がブレないような印象を与えるのは、頭がブレないからです。

そしてちょっと専門的ですが、バランスの補正に重要な要素である両目の水平位置が崩れないからです。

 

 

 

この部分については、トップ選手とそうでない選手の差は、筋力なんて比べものにならないぐらい非常に大きいのです。

 

 

 

以上の理由から、今一度体幹トレーニングで求める能力である「体幹が強い」という能力に対して再考してみてください。

 

 

 

向上したい能力と体幹トレーニングの関係について、本当につながりがあるのかを再考してみてください。

 

 

 

また、他の言葉に関しても、再度その定義を考えてみることは、指導やパフォーマンスアップにおいて相当有効な時間になると思います。

 

 

 

もしかしたら参考にしていただけるかもです。

「これが日本の”フィジカル”だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

全てはパフォーマンスアップのために。

 

サッカー上半身トレーニングセミナーは、このような観点を含めて構成しています。

体幹部分が自由自在に動かせるようになるメリットは、非常に多いのです。

サッカー上半身トレーニングセミナー

 

 

 

 

 

 

中野 崇

 

 

 

 

 

追伸

昨今、様々な情報が確保できる環境下では、良い意味の言葉は、悪い意味の言葉以上に”曖昧なまま”納得してしまいがちです。

ブレないという言葉が、「動かないこと」となんとなくイメージしてしまうように、スポーツにおける指導言語には非常に曖昧なものが多く、教える側・受け取る側の解釈が非常にバラバラです。

 

例えばバッティングにおける「上から叩け」も、本当に上から叩くとバッティングとして成立しなくなります。

この表現が伝えたいのは、上から叩くという「感覚」であり、実際のバットの軌道が上から叩く軌道という意味ではありません。

 

指導言語は、「外見を表す」のかそれとも「感覚を表す」のかをしっかりと吟味して使い分ける必要がありますね。

 

そんな「感覚」と「動き」ギャップについて書いています。

コチラ。

 

 

 

 

JARTAのトレーニング指導をご希望の方は下記から(初回半額です)。

http://jarta.jp/dispatch/

 

 

JARTAのオフィシャルLINE@

友だち追加