前回の続きです。
今回の内容は、ブラインドサッカーの日本代表選手たち、すなわち目が見えない選手たちにフィジカルコーチとしてトレーニング指導する際に僕が考えていること、注意していることです。
あくまで、現時点で考えていることであり、様々な経験をしていく中でさらに考えるべきことが出てくることは想定されますので、その点に関してはご了承ください。
①まず心構えから。「相手は目が見えないから」、は指導の言い訳にはしないこと。
相手の選手が目が見えないことは、ただの前提条件であり、だったらその上でどう指導する形を作るか、
だったらどのようにすれば伝わるのかだけに集中しています。
②言葉の重要性を考える。
ブラインドサッカーの選手に対してだけでなく、トレーナーやコーチなど指導側の人間が使う言葉は非常に重要なものです。
指導は「どう言ったか」ではなく、「どう伝わったか」が全てです。(コミュニケーション全てがそうですかね)
例えばこちらが柴犬をイメージして「犬」と言ったとしても、相手は「犬」という言葉からゴールデンレトリバーをイメージするような構図は多々あります。
であれば、こちらが「犬」と言った場合に相手がどのような「犬」をイメージしているのかを確認する必要があるし、もっと言えばこちらがイメージしている柴犬を相手もイメージしてもらえるような「言葉」を意図的に使いこなす必要があります。
ブラインドサッカーのトレーニング指導時であれば、何も考えずに「膝を曲げて」と言ったとすれば、ある選手は屈伸のような形に曲げますし、脚を前方に持ち上げる形をとる選手、後方に脚を持ち上げる形をとる選手など様々なのです。
これらは同じ言葉に対する認識が個人によって異なる事が原因です。
十数人の選手が対象となる場合、このようなこと一つでいちいち修正していれば時間はどれだけあっても足りません。
だから、一回の指示で、ほぼ全員がこちらが意図した動作をできるように言葉を使いこなす必要があるのです。
もちろん初めはある程度の試行錯誤が必要ですが、このような思考を持った上で試行錯誤していくと、相手の理解の特徴をつかむのが早くなります。
③フィードバックを頻回に行う。
ブラインドサッカーの選手は、自分の行った動きと、指導者が意図した動きがマッチしているのかを視覚的に確認することができません。
そのため、必ずそれで合っているのか、それとももう少し修正するべきポイントがあるのかを提示する必要があります。
これは全体ではなく、必ず個人レベルで声をかけています。
かなり頻繁に行っています。
④使える環境は全て利用することと、リスク管理の徹底。
ブラインドサッカーの練習環境において「使える環境」とは、晴眼者、すなわち目が見える人たちです。
僕が一人で指導する場合、相手は十数人です。場合によってはとても難しい動きを要求することもあります。
しかもそれが一般的なトレーニングではなく、独特のこれまでやったこともないようなトレーニングの場合は、キーパーやコーチたちにもお願いして動きを個別レベルで伝えられるように準備します。
つまり、事前に今日はこんな意図でこんな動きをしたいから、ということを伝えて理解しておいてもらうということです。
また、これも当然のことですが、選手同士がぶつかったり、設備にぶつかったりしないような場の確保や運動方向の設定は事前に十分に考えておく必要があります。
例えばブラインドサッカーの選手にダッシュをさせたい場合、みなさんならどういった環境設定をしますか??
⑤選手の可能性を勝手に規定しない。
これもブラインドサッカーだけでなく、すべての選手に対して心掛けるべきことですね。
目が見えないから、耳が聞こえないから、身体が硬いから、小学生だから、アマチュアだから、、「この選手はこんなもんだろう」は指導側が最もやってはいけないことです。
選手の限界は少なくとも我々が決めることではないはずです。
もちろん、選手の現状に合わせた、達成度合い・達成目標は設定しておく必要はあります。
それと上限を決めることとは全く別です。
今回、ブラジル遠征に行って、世界最強のブラジルのブラインドサッカーを目の当たりにして、僕が最も学んだことの一つはこの部分です。
ブラジルの選手は、僕の中のブラインドサッカーの上限を明らかに上回っていました。
「こんなことまでできるのか…。」
無意識のうちに、「目が見えない選手」の上限を勝手に規定していた自分に気づいたのです。
やはり自分はまだまだです。。
いろいろ書いてきましたが、これらは結局のところ、目が見える見えないは関係なく、指導における本質としては同じものなのだなという事はブラインドサッカーに関わらせてもらって得た大切な教訓です。
しっかりと彼らの動きを分析し、そして日本人選手たちの動きを分析し、遠回りさせることなくパフォーマンスを上げる土台を作っていく。
それがフィジカルコーチとしての役割です。
そして日本代表の監督やコーチなど、一流のスタッフが揃っている以上、選手に要求される動きや戦術は確実にレベルアップしていきます。
それを実現できるフィジカルを構築するという意味では、自分の役割は非常に大きなものであることは明らかです。
まだまだやるべきことはたくさんありますが、まずは上を見上げすぎず、地道に積み重ねていくことを続けていきたいと思います。
日本のブラインドサッカー、注目しておいてください。
JARTA
中野 崇
