「無償サポートは決して選手のためにならない。」
僕はそう確信しています。
前回はスポーツトレーナーの無償サポートに対して、僕の感じている問題点を書きました。
今回はその続きとなる内容です。
前回書いたように、スポーツトレーナーとしてチームや選手のサポートに入る際、メディカルチェックも含めてですが、報酬が発生しない形は非常に多いです。
それはその時点だけ考えると、双方が納得していれば何も問題はないでしょう。
ただ、それは業界の発展性や継続性、スポーツトレーナーという業種の価値の向上を考えたときには社会構造上大いに問題があることを説明しました。
このへんはトレーナー側からの視点ですね。
次にここでは、トレーナー側の観点に加えて、選手やチーム側の観点からもこの問題を考えたいと思います。
結論から言うと、無償でのサポートを入れることは、選手やチームにとってデメリットは確実に存在します。
ちなみに無償サポートにおけるトレーナー側のメリットについては、割と容易にサポートに入らせてもらいやすいってことですね。
選手側のメリットは経済性。ほとんどのチームや選手は慢性的にお金が不足していることが多いので、当然大いなるメリットです。
それに対して双方に生じるデメリットは、成果に対する責任と継続性の欠落です。
例えば、一定期間サポートに入っても選手やチームになんの成果も出せない(パフォーマンスの向上が見られない)、けが人も減らない、としたらどうでしょうか?
まずはトレーナー側の視点で分かりやすくなるように、二つのチームをサポートしている状況を想定してみましょう。
一方は無償。もう一方は報酬ありです。
上記のように仮にそれぞれで成果が見られない場合、どちらに対して大きな責任を感じるでしょうか?
(無償だから責任が軽い、という意味ではありません。トレーナー自身がどう感じるか、です。)
また、同じ日にサポート依頼が重なったら、どちらを優先すべきでしょうか?
どちらを優先せざるを得ないでしょうか?
継続性の観点から考えてみても、何か事情があってどちらかを辞めなければならない場合、どちらを辞めることになるでしょうか?
ここで考えて欲しいのは、「お金をもらえるから」という短絡的な観点ではなく、「お金を払うほどそのトレーナーに価値を感じてくれている方」を優先すべき、ということです。
(お金には、それそのものには価値がある訳ではなく、対象となるモノ・サービス・人の価値を社会的に約束されたもの、という本来のお金の意味から考えると分かると思います。)
そして報酬をもらっている相手よりも無償サポートをしている相手の方が、自分の都合で休みを取りやすい雰囲気は確実にあります。
(チーム側も報酬を渡していないだけに、なかなか強くは要請できないですね。)
そしてこれらに関連してチーム・選手側。
報酬を支払っているトレーナーに対してであれば、成果が思わしくない場合、それを問うことができます。
なぜなら「報酬を支払っているから」です。
これは非常に重要なことです。
無償で「サポートに来てもらっている」場合、そこを問うのはとても難しいのです。
選手やチームは、場合によっては非常に難しい要望をトレーナーにすべき時があります。
チームとして成果を出すためにはそこは妥協してはならない、負担を強いる場合も多々あります。
例えば、すごく単純なことで言うと、「普段は一週間に一回のサポートだが、この期間は毎日来て欲しい、少なくとも3日に一回は来て欲しい」みたいな感じです。実際可能かどうかは別として、このような依頼は割とよくあります。
しかし、無償の場合、そこにトレーナーへの遠慮や申し訳なさという形で「妥協」が生じる隙が生まれるリスクがあるのです。
なぜなら、トレーナーの働きに対して対価を支払っていないからです。
(もちろん報酬を支払ってもらっているからといって、何でも要望を受け入れるべきという訳ではありません。)
「責任と成果に対する報酬」という社会構造上当たり前の関係が成立していないことが問題なのです。
そして更に懸念されることは、あまり精神的に成熟していない人たちで構成されるチームの場合、無償でサポートに入っているトレーナーを軽視する雰囲気が出てくる場合もあります。
これは非常に残念な話で、あってはならないことですが、これもまた選手心理として存在するのも事実です。
(もちろんハイレベルなチームでは、無償でサポートしてくれるトレーナーに対しては最大級のリスペクトを持ってくれます)
いろいろ書いてきましたが、このようなトレーナーとチーム・選手の関係性が、果たして良い発展を遂げ続けることができるでしょうか?
あくまで様々な事情を加味した上での個人的な意見ですが、ここまで挙げたことを理由として、僕は無償サポートはお互いにとって中途半端な関係だと考えています。(前にも書いた通り、双方に明確なメリットが存在しているのであればこれには当たりません)
それがまかり通っているようでは、トレーナー業界は社会的な地位や信頼性を高めていくことは難しいです。
報酬に関する内容はここまでですが、最後に最大の注意点です。
それは、無償サポートだの報酬もらうだのを言うのは、あくまで「プロとして選手に成果を出させるだけの仕事が出来る」のが大前提での話です。
僕はスポーツトレーナーに無償サポートが増えてきたのは、単にチームや選手に経済的な苦しさがあることだけが原因だとは考えていません。
むしろ根本的原因は、トレーナー側の力量にあると思っています。
「いたら助かるけど、いなくても別に大丈夫」
多くのトレーナーが、そんな価値しか提供できてこなかった、と考えるべきです。
(無償サポートの問題を選手やチームの経済力、という「相手の責任」にしていたら何も解決しませんよね。)
だから僕はJARTAの認定トレーナー資格というものを作ったんです。
そのへんはまた一連の流れの中で書いていきたいと思います。
JARTAオフィシャルサイト
http://jarta.jp
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JARTA
中野 崇
