インナーゲームに関する記述の最終回です。

 

 

 

インナーゲームの理論を用いた指導法の本質は、選手に「自ら気づかせる能力」「自己修正能力」を高めることです。

 

 

 

これは特に試合中やシーズン中には非常に重要なファクターになります。

当然、課題を持ってパフォーマンスアップに取り組む際にも重要であることは言うまでもありませんし、「選手の伸びしろを伸ばす」ことにおいても必須です。

 

 

 

 

以下が、僕が基本的に実施している問いかけのポイントです。

 

①相手の感覚を尋ねる。

例えば選手の重心位置の偏位が気になったとしたら、いきなり「もっと前」ではなく、

 

中野「重心位置はどこにあると思いますか?」
 

選手「このへんです」
 

中野「では重心位置を意識しながら、一番動きやすい重心位置を探してみて。」
 

しばらくやらせてみて、再び、
 

選手「重心位置はどうですか?」
 

という感じです。



 

うまくいけば、その場で選手が「ここです」「ここにすると動きやすいです」となります。

※選手が全然うまく見つけられない場合は、ヒントとして「前にいってみたらどんな感じになる?」とすることも必要です。





 

単に外から重心位置を前に移動する指示を出して移動した場合と、自ら発見(認識)して重心コントロールによる動きの変化を実感できた場合を比べると、その場の結果は同じかもしれませんが、選手の中に残るもの(教育効果、認識効果)は大きく変わります。





 

②こちら側がポイントと考えている部位の感覚はどうなっているか。

ここが指導側としての手腕を問われるところです。

いくら問いかけが肝腎だからといって、なんでもかんでも選手に尋ねればよいというものではありません。
 

パフォーマンスアップに関係のないところに関する質問をしても選手にとっては無意味です。

数学の授業中に、生徒に「この英語の問題わかる?」と聞いているようなものです。

 

つまり、パフォーマンスアップのためには、指導側が「この選手はどこをどうすれば上手く動けるはずだ」というものが見えている必要があります。
 

問いかけは、あくまでそれが指導側に見えていて初めて最も効率よく作用します。





 

③何も質問しない、問いかけない。

選手に対して何も語りかけずに自分の運動を認識させて修正していく方法です。

これが一番シンプルで取り組みやすいかもしれません。

例えば、スクワット動作をしている選手が、右側へ頭部の動揺を起こしているとします。
 

一般的には、「頭が右に傾いているから、真ん中で保て」ですよね。

この場合でしたら、一つのやり方としては、棒状のもの(ボールペンなど)を選手の頭部の位置あたりの高さでセンターに合わせて立てて提示します。
 

ただ、それだけです。
 

腰がぶれているなら、腰あたりに提示します。

それ以上なにも言わないのです。

そうすると、選手は勝手に、自分がぶれていることに気づいて修正し出します。

(環境サモナーというものです。)


良い動きになってきたら、当然、「それだ」と伝えてあげます。



 

他にもたくさん方法論はありますので、興味のある方は僕が講師をする講習会で尋ねてみてください。





 

何れにせよ、選手の運動という現象を「良い方向に」変化させるためには、目の前の選手の動きを見極められる観察眼と、「その競技のハイパフォーマンスとはどういう構成要素があるのか」ぐらいは、選手のパフォーマンスに関わる立場としては責任として知っておく必要があると思います。

 



JARTA
中野 崇