子どもたちを対象とした指導の際、指導者の方が共通して困っていることがあります。

それは、指導言語です。






子ども達相手に専門用語の使用は論外として、例えば身体をこのように動かすんだよ、と伝えたい場合も、こちらが伝えたい部位の名前が子ども達はそもそもわからない

つまり例えば股関節や鳩尾(みぞおち)という言葉を知らないのです。





しかしだからと言って指導者は股関節や鳩尾の使い方を教える、習得させるのを諦めるわけにはいきませんよね。






では骨格構造を教えるのか、絵を描いて場所を教えるのか。これもまたえらく遠回りな気がします。

子どもたちが興味を持って知りたがるならいいですが…。






そして何より絵など視覚情報的に股関節などの位置を認識したとしても、イコール使えるようになるとは言えません。






なぜなら、「使う感覚」というのは、視覚性ではなく体性感覚的だからです。

体性感覚というのは、触覚や関節を動かしている感覚などのことです。






そしてその感覚(意識)を高めるための一つの手段として有効なものとして、叩いたり擦ったりすることが挙げられます。

これはサモン(summon)と言い、呼び起こすとか召喚とかいう意味です。

運動学習におけるサモンの有効性は運動科学者の高岡英夫氏も提唱しています。






具体的には、運動や身体の使い方の練習そのものをする際に、股関節や鳩尾や脇を叩いたり擦ったり指圧することで、「自然と」使うための準備が整い、使いやすくなります。

「意識しやすくなる」ってやつですね。
意識しやすいところは使いやすいですよね。手のひらとか。




そのような状態を作ってから、または練習やトレーニングの合間に入れながら、動いていけばいいのです。





つまり、これまでの話をまとめると、子ども達が、その運動で使うべき部位を言語的や視覚情報的に理解することができなくても、サモンを有効に使うことでカバーできます。






むしろカバーというより、「股関節などの身体の部位を名称として知っている大人」であってもサモンはどんどん取り入れるべきだと思います。

その運動やトレーニングで使ってほしい場所をどんどん自分で叩いたり指圧したり、擦らせてあげましょう。





先日のラグビー講習会で公開したトレーニングでいうと、場所としては股関節(鼠径部)、鳩尾、太腿の裏側(お尻に近い側)、足の裏などが効果的な場所です。






特にスポーツでは、最終的には一々ここを使うんだ、と意識している時間はありませんから、自然と使えるようなベクトルのトレー二ングにしていきたいですよね。





あと最後に付け加えると、選手目線ではあんまり身体の使い方を指導されすぎると嫌がります。誰しも自分のやり方でやりたいと思っていますし、自ら探求することそのものにスポーツの楽しさってありますから。
だから、サモンをうまく使いながら自然と良い動きが身につくようにするのも、指導者やトレーナーの技量の見せ所かも知れませんね。

(このあたりは次回)







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JARTA
中野 崇