今回は、今年から新たにJARTAがアドバンス1以降の講習会の中心的位置づけとして取り組んでいる、「動作分析」についてです。





観点はいろいろありますが、ここでは特にスポーツ分野における動作分析の重要性・意義について書きたいと思います。





動作分析、すなわち対象者の動作を読み取ることは、身体の治療や運動に関わる立場の方にとっては非常に重要なことであり、特に私たちのようなスポーツトレーニングに携わり、選手のパフォーマンスを向上させようとする立場の者にとってはこれ以上ないというぐらい重要なものです。






しかしそれに対して一般的に、動作分析は非常に難しいと言われています。

特にスポーツの動作は速度が高いために非常に難しいとされています。

さらにスポーツの動作は、出現するパフォーマンスの「結果」は再現性が求められるにも関わらず、相手選手との関係性など、局面により非常に流動的に影響を受ける要素が含まれているため、動作は一般の生活動作に比べて多岐に渡りますし、多岐に渡るべきです。






トレーニングに携わる方にはちょっと考えてみていただきたいのですが、(施術するポイントや)処方するトレーニングの項目はどのような根拠を持って立案・決定していますか?





もちろん前提には選手の、どこが痛い、ここがおかしい感じがする、などの主訴がありますが、その原因を判断するには、ほぼ必ず動作を確認する必要がありますよね。





単に痛みをとるだけならこの限りではない場合もあるかもしれませんが、僕がやりたいことは、単に痛みをとりたいのではなく、パフォーマンスを向上させること。
だからいずれにせよ、絶対に動作を見て分析できる必要があるのです。




問題(主訴・課題)があって、「原因」があって、初めてそこに解決策(施術・トレーニング)が成立するのです。






この「原因」を追求するための根拠となるのが、まずは動作分析が重要なのです。

局所的な評価は、それに基づいて効率的になされるべきです。






いくら全身がつながっているからって、毎回全身を詳細に評価する時間を確保しようとするのは研究以外では現実的ではありません。






こういう一般的な理由から考えても、動作分析が的確にできることは当たり前に重要なことですが、スポーツにおいては、さらに特有の重要な理由が存在します。






それは「マイナスの学習」というリスクです。

スポーツ選手のパフォーマンスに関する問題(課題も含めて)を解決しようとする際、多くの場合施術に加えてトレーニングを処方することになります。






つまり、選手にトレーニングをさせるのです。

これは言い換えると選手にそれ相応の「努力」を要求することになります。






要望に応えるために、問題を解決するために、トレーニングを処方する際にはそのトレーニング項目がそれらの原因に的確にマッチしている必要があるのは当然です。






この段階で、もし、原因を的確に捉えることができていなければ、選手は解決したい問題の原因とは違う解決策を用いて努力することになってしまいます。






これは選手の問題解決に向けた行動にとっては、残念ながら無意味と言わざるを得ない状況になってしまいます。

まさに「無駄な努力」となってしまうのです。






そしてこの現象はそれだけに留まりません。

「マイナスの学習」の話はここからです。






選手にトレーニングをさせる場合、選手はその際の「運動様式そのもの」を身体にプログラミングし、学習します。

運動様式の学習というのは、トレーニング科学で言われている運動学習だけでなく、その際の認識状態なども含めてです。





例えば、「力を出すことだけに集中する」状態での筋力発揮は、そのような筋力発揮の運動様式の学習につながり、実際の場面では力を出すことだけに集中していい場面などほとんどないにも関わらず、「そのような力の使い方・発揮の仕方」を習得してしまうということです。

その結果、筋力はついたけどボールは打てなくなった、といった「肉体改造の失敗」が実例的にも後を絶ちません。

トレーニングにはこういう負の側面も存在していることを、スポーツに関わる方は認識しておく必要があるのです。

(詳しくはJARTAベーシックで説明しています)





話を戻します。

つまり、動作分析が的確にできないことに起因するトレーニング処方の失敗は、問題解決の解決策とは違う努力を選手にさせることで問題が解決されないどころか、”今までより下手にさせてしまう”、という悲劇を引き起こすリスクがあるのです。






我々、身体運動に携わる立場にある者にとって、それだけ動作分析というものは重要な位置を占める能力です。





冒頭で述べたように、スポーツの動作は非常に難しいです。

しかし、繰り返しになりますが、身体運動に関わるのであれば、対象者の動きをその場で自分の目で見て分析できなければ、的確な指導はできないことは言うまでもありません。





そして、スポーツ分野ではその不的確性が選手に「無駄な努力」を要求するばかりではなく、「マイナスの学習」につながってしまいます。






非常に難しい分野であり、経験が非常に重要とされる動作分析の上達という分野に、JARTAが取り組んでいる理由はこういったところにあります。




「努力」は選手の責任。

「努力の方向性」はトレーナー、指導者の責任です。





JARTAでは、動作分析に関してアドバンス1以降、構造運動学を基盤として学習していただいております。




JARTAオフィシャルサイト




JARTA

中野 崇