最近は、JARTAを通して特に理学療法の学生の方々にお会いする機会が多く、本当にスポーツ分野に関わりたいという気持ちが強いんだなと実感しております。
JARTAという事業をやっている僕からすると本当に嬉しく、楽しみです。
また、自分の志望動機を実現するために行動されていることには頭が下がる思いです。
そういった方々にお会いしたり、SNSなどでやりとりさせていただく中で、最近一つだけ危惧していることがありますので、ここで述べさせていただきます。
それは、反発を恐れずに言いますと、スポーツ分野に関わりたいが故に高齢者の方を対象とした一般的なリハビリテーションを軽くみるという傾向です。
自分がスポーツ分野に関わりたいという思いを持って理学療法士などを志した場合、どうしても高齢者の方を中心としたリハビリテーション分野の勉強が「自分のやりたいことと違う」となっていないか、ということです。
結論から言いますと、それは絶対に間違いです。
それだけはやってはなりません。
スポーツ分野を志したいと先輩や学校の先生に相談した際、多くの場合、「やっていけない、難しい、まずは一般病院で高齢者の方を診れるように、10年早い」などと言われます。
そこでよく「スポーツでやっていけてない人」に相談するからそんなこと言われるのだというアドバイスを僕自身も言ったりしていますが、それは「ネガティブな意見で諦めるべきではない」という観点だけであって、そういった先輩方の言うアドバイスは実は本質的には的を得ています。
一般的なリハビリテーションを少しでも軽んじる者は、絶対にスポーツ分野のサポートも出来ません。
スポーツ分野を目指すことは素晴らしいことですし、とても意義があります。
ただしそれと一般的なリハビリテーションを軽視することとは全く別問題です。
両者のつながりがわかっているからこそ、高齢者の方のリハビリを本気で出来るからこそ、スポーツ選手にも真に貢献できるサポートができます。
特に医療分野では、目の前の困っている方にすら本気でサポートできない者にスポーツ分野どころか、やりたいことを目指す資格はありません。
目の前で困っている方に対して、手段を選ばす真に貢献しようとする姿勢は、相手に関係なく、それが全ての根本です。
学生の間には、知識や技術、人脈よりも、そういった姿勢を学んでおいてほしいです。
そして実習がいくら要素主義的な観点で進められるからって、軽視してはなりません。
実習で何を学ぶかって、知識や技術よりも「医療者としての哲学」です。
それをバイザーの先生から学んでほしいです。
僕は今でこそスポーツトレーナーとして活動していますが、臨床に出てからは医療、そして介護分野で何年も徹底的に鍛えられました。
人の死にも立ち会うことになります。
担当していた方が亡くなってしまい、先輩から泣くなと言われても涙が出るので、トイレで隠れてよく泣きました。
そんなときには何度も何度も自分に問いかけることになります。
「本当に限界まで全力でやったのか?もっと出来ることはなかったのか?」
これの繰り返しです。
医療・介護の分野は本当にシビアな世界です。
僕は決してスポーツだけやってきた訳ではありません。
それらの分野には理屈抜きでの難しさがあります。
みなさんの先輩方の多くはこういった世界に身を置いて患者さんたちと向き合っています。
そこには人に関わることとはどういうことなのか、自分ができることって何なのか、といった自分や人間の本質に迫られる経験があります。
改めて言います。
高齢者の方を中心とした一般的なリハビリテーションを軽視する者は、スポーツ分野で活躍はできません。
目の前の、身体や動作、生活で困っている方々に、全力で向き合うという経験があってこそ本当のサポートができるようになります。
今回の話は、スポーツ分野を目指すなという意味ではありません。
スポーツ分野だけに目を奪われて自分たちがすべきことの本質を見失うなということです。
スポーツ分野にしか興味が出なくてそこにしか本気になれない、というようでは、本当に良い選手には底が見破られます。
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中野 崇