前回からの続きです。
前回記事はこちら。
「練習のライオン」
「練習では上手い、活躍できるけど、試合では全然使えないやつ」
練習やトレーニングでは活躍できるのに、実際の試合ではそれほど活躍できない。
原因はいろいろあると思います。
練習のときはリラックスして出来ているのに、試合になるとプレッシャーに負けて本来の動きができなくなってしまうなども当然あるでしょう。
そういった心身相関的な部分は非常に重視すべき点ですが、今回は話がややこしくなるので除外します。
僕が今回取り上げたいのは、練習方法の考え方です。
試合でのパフォーマンスを高めるために行われている練習は、全習法と分習法に分類できます。
全習法とは、「習得したい技術全体を最初からひとまとめにして練習し、それを何回も繰り返すうちに徐々に全体が上手くなっていくだろうと期待する方法」です。
ひたすら紅白戦を繰り返す感じですね。
対して分習法とは、「全体をいくつかの部分に分割し、その各部分を別々に練習して身につけた後、全体をひとまとめにして学ぶという方法」です。
現代では一般的な練習方法ですね。
例えばサッカーだと、シュート練習、ドリブル練習、センタリング練習、などを分けて練習して…という形です。
そして実際はもっと細かく分割されたりしていることもあります。
試合を「全体」として見るか、その技術を「全体」として見るかなどによって捉え方は変わります。
シュート動作を全体として捉えるならば、シュート動作を細かく分割して、それぞれを練習してからシュート動作練習を行う、といった形です。
分習法の一つとして筋トレなどを導入する例もあります。

インテルユースでのトレーニング風景|JARTAイタリア研修2014
つまり全習法と分習法は何を全体と捉えるかによって変化する、相対的な関係と言うことができます。
少し難しい話になりました。
要するに、現在パフォーマンスアップのために行われている練習というのはほとんどが分習法と言うことができるということです。
分習法そのものは非常に有効な練習方法です。
しかし、実際の試合は、分習法で学習した「動作と動作の間」にも様々なものが存在します。
つまり分習法でやっているの要素と要素の間に、深く関係性が成立しているということです。
その部分が上手くいかないと、せっかく分習法で習得した動きが実現できなくなると言えます。
シュート練習でめちゃくちゃ良いシュートが打てるようになった。
でも試合では良いシュートにならない。
精度も低い。
練習のときほど速度も出ない。
この現象を簡単に解説すると、シュートに持ち込むまでのポジショニングや動きの中での体勢作りに失敗しているとこのようなことになります。
つまりシュート練習で練習していた動作「までにつながる動作」です。

イタリアフットサルセリエA ラツィオの練習|JARTAイタリア研修2014
パンチングマシーンではすごい数値を出せるボクサーが、実際の試合ではパンチが当たらない、当たっても弱い感じです。
つまりパンチングマシーンにパンチを当てるような形で打てる状況は、ボクシングの試合には存在しないってことです。
単調なシュート練習でやっているような形でシュートが打てる状況は実際の試合ではほとんど存在しないのです。
これが「練習のライオン」を生む一つの原因です。
では、どうすれば練習のライオンではなく、試合でライオンになれるのでしょうか。
次回はその点について説明したいと思います。
JARTA
中野 崇
