先日は京都大学野球部の投手2名、野手1名のサポートに行ってきました。


普段はJARTA認定トレーナーたちに帯同してもらってチーム全体に近い形でトレーニングに入るのですが、

今回はスケジューリングが急だったこともあって(しかも平日昼)、僕一人でのサポートです。






今回は、普段の投手2名に新たに野手の投球動作(スローイング)に関する依頼がありました。

少し面白い取り組みをしたので、トレーニング指導の幅を持たせる意味でも参考になれば嬉しいです。





その彼は野手でした。試合では主に代走。
そして今まで一度もまともなボールを投げたことがないとのこと…。

投げる練習をしてスローイングの機会が増えると肩周りに痛みが出て日常生活にも支障がでるほどとのことでした。

このときは特に痛みはないとのことでした。




実際の投げ方をチェックすると、一言でいうとテイクバックが二回あるような感じ…(^^;

しかもたった150グラム弱の重さの硬式ボールを投げるにしては、全身が余分に力みすぎていました。






誰がどう見ても良い投げ方とは言えない状況です。






みなさんはこういった選手に出会った場合、どうしますか?

フォーム指導しますか?

投げるときにどこを意識するかを指導しますか?

まずスタティックな評価をしてストレッチ指導しますか?





僕の場合は、まず初めにボールを持たせることをやめました。
そして、自分の身体がいかに無駄な緊張が入っているのかに「気付かせる」ことをまず重視しました。





例えば、オープンロータスのようなセンタリングトレーニングそのものをさせるよりも、さらにシンプルに、単純にしゃがんでみてもらいました。

JARTAではセンタリングトレーニングというシステムでまずは一次姿勢を評価・改善という流れでやっていますが、それはあくまでも基本。

基本は変化させられるから基本です。





今回の場合は、ごく単純な動作をやってもらい、その時にどこに緊張が入っているかを選手に「問いかけ」続け、「自分で」緊張しているところを探してもらいました。

つまり僕が何を選手に求めたかは、JARTAの講習会に来られたことがある方はお分かりですね。

「内的認識力」です。






※今回は内的認識力を向上させてフィジカル・スキルとつなげるための一つの実施例です。





ケガをしないことも含めて、よいパフォーマンスを発揮、追求してゆくためには、筋力や可動域だけでは全く足りません。

自分の身体の状態を把握・認識する能力が必要です。

それが「内的認識力」です。

さらに刻一刻と移り変わる状況に合わせて自分の身体の状態を変化・調整できる能力が必要です(画定力といいます。JARTAホームページ参照)。






誰がどう見てもよろしくない投げ方をしている選手は、誰がどう見てもよろしくないだけに、これまでほんとにたくさんの指摘・指導を受け続けてきているはずです。

それでも「その投げ方」なのです。


このことをどう考えるか。





つまり、

指導側の言葉(記号)の意図、と選手側の言葉の理解・解釈が違う。

選手自身に、やりたい動きと実際の動きのギャップを認識・調整する能力が不足している。

これまで指導されすぎて、「投げ方」を指導されると身体が固まるような状態(設定)になっている。


おおまかにこれらのことが考えられます。






一言でいうと、入力ー出力・認識の間におけるギャップが大きいのです。
指導内容が正しい、間違っているという階層ではなく、「指導」そのものがネガティブな影響を及ぼしている可能性がありました。

これらのことが予測できたので、今回の構成としてはこちらからはまったく「指導」はしないという方針にしました。






とにかく気付かせる。

固まっていることにとにかく気付かせる。






単にしゃがむ、単に腕を上げる、腕を落とすなどの動作、日常生活の動作からひたすら行いました。
(まったく野球のトレーニングには見えないものですね。)

驚くべきことに、それだけで、かなり深くしゃがめるようになったり、腕を落とす動きにしなりが出てきたのです。

本人も「こんなに固まってたんですね…」となってきました。
内的認識力が機能してきましたね。


そこまで出来てきたので、今度は実際にボールを握って、これまでと同じ動作をやってみました。

すると、また固まり出しました(ここにも"設定"があったか…。)。
(当然、この現象は一般的な柔軟性や可動域では説明がつきません。)





長年ボールを握って身体を固めて投げるというプロセスを強化し続けた結果、投げる動作以前に「ボールを持つことそのもの」が身体を固めるスイッチになっていたのです。






ここで次に何をしたのかは、また次回。







JARTA

中野 崇