
父親から何故か井伏鱒二『荻窪風土記』(新潮文庫)が送られて来た。
僕の生まれ故郷である荻窪の歴史が知れる、貴重な作品。
単行本で刊行されたのが1982年で僕が9歳の頃。荻窪駅前にタウンセブンやルミネが出来たばかりの頃で、それらが建つ前はそこは闇市の流れをくむマーケットがあり、薄暗いが活気のある雰囲気が、幼い頃の記憶として朧げながら残っている。
80年代初頭あたりには、作品に出てくる関東大震災以前の荻窪を知る“古老”達がまだご健在だったわけで、時代の変遷の激動っぷりを考えてしまう。
震災以前、品川の汽笛や府中のお祭りの太鼓の音が、荻窪まで聞こえてきた話や、荻窪の畑でつくった野菜を大八車に積み京橋のヤッチャ場まで曳いていくのに、出発は真夜中だから、夜が明けてくる新宿あたりまでは家族が道明りの提灯を持ってついて行った話など…いやはや隔世の感が凄い。大正時代まで荻窪の生活の実際は江戸時代とさほど変わらなかったのだろう。
震災後、被災者が移り住んできて、街の体裁が整ってくる。井伏鱒二さんも震災後に引っ越してきた一人。
そして、そこらへんの流れがいまの“中央線カルチャー”にまで続いてると思うが、街以前の荻窪界隈の土っぽさを忘れてはいけないのだろうな。
その意味で本書は歴史の繋ぎ目を果してくれている。
今日10日で井伏鱒二さんの没後三十年…父はそのことを知ってるのだろうか?

今日は朝の現場が都営線新宿三丁目駅の近くだった。
少し時間に余裕があったので、駅前の末広亭辺りをブラブラ。
僕は冗談でなく赤ん坊の頃からここら辺に来ている。子供時代、家族での外食で一番のご馳走が、目黒考ニさんの日記にちょくちょく出てくる焼肉の「長春館」だったから。
桂花ラーメンの向かいに昔はソープランドがあり…当時は「トルコ風呂」との表記だったので、子供ながら一体何なのだろう?と思ったものだ(^^;
本の雑誌の助っ人時代から来ている末広亭隣りの「呑者家」や、送別会などで使われてた「池林房」など…思い出に尽きないエリア。
そういえば、新宿のタイガーマスクな新聞配達のおじさんはご健在なのだろうか? あの人も僕の子供の頃から居る。
怪しい人が歩いていても不思議に感じないところが、新宿の良さ(?)ではある。