前回の記事の続き。
これからお見せする写真の料理が出た場合、介助者のいない私(上肢遠位型)は、どこで四苦八苦するでしょう?
問題5(2箇所)
・ナン
・小麦の薄焼き
・野菜カレー
・肉カレー
・野菜の和え物
・生春巻き
・シークカバブ(肉の串焼きから串を抜いたもの)
・ラッシー(ヨーグルトドリンク)
・ククリラム(ネパールのラム酒)
これはご想像いただきやすいかと。
答え
・ナン
自転車のサドルよりもはるかに大きく、コシが強い。
表面がオイリーなこともあり、引きちぎることができない。
結局は両手でつかんで先の細まっている方を下にしてカレー椀にディップし、力いっぱい食いちぎった。
ちなみにナンは「おかわり自由」だが、ガテン系男子でも2枚目は食べきれないらしい。
・生春巻き
千切りにした人参などの生野菜が、ゆるく巻いてある。
これを特製ダレにディップして食べるわけだが、ゆるく巻いてあるということは、しっかり掴んで食べないと具がボロボロと落ちてしまうということだ。
私は「つまむ・指でつかむ」ということがほとんどできない。
こぼれた具材はテーブルではなく銀皿に落ちてくれたので、「箸ぞうくん」で拾って食べた。
問題6(3箇所)
・麦めし
・とろろ
・ホッケと焼きサバ
・ワカメとオクラとササミの和え物
・冷奴
・貝汁
・ハイボール
答え
・ホッケと焼きサバに添えられたレモン
手指に力が入らないので絞れない。
持参したスプーンで押し潰し、果汁を大根おろしに吸わせて魚に乗せた。
・貝汁
前回記事のムール貝同様、あさりにも貝柱がついている。
貝の怨念でも棲み着いているのかか、貝柱はなかなか剥がれてくれない。
うまく食べられないと分かっていてなぜ貝類を注文するのかというと、ビタミンB12が多いからである。
ロゼバラミンがもらえないロゼバラ難民の私は、気休めにすぎないと理解しつつもビタミンB12の多い食品を摂るようにしている。
・ハイボール
どっしりとしたグラスで、しかも氷が多めである。
つまり非常にどっしりとしているのである。
握手する感じで持ち手に右手の人差し指から小指までを差し入れてグラスをつかみ、少し浮かしたところで左掌をグラスの底に滑り込ませれば、かろうじて持ち上げることができる。
とはいえ危なっかしく、これ以降はストローを持参することにした。
ただしストローでアルコールを飲むと酔いやすいらしいので要注意。
問題7(1箇所)
・ラーメン
・唐揚げ
・フライドポテト
・ハイボール
・お通し(小袋入りの柿ピー)
答え
・お通し(小袋入りの柿ピー)
袋の上下がギザギザの切り口になっているのだけど、第一背側骨間筋も母指球筋も強度に萎縮しているため、親指と人差し指で「挟む」「引っ張る」等は不可能に近い。
袋が小さいので歯で食いちぎるのは難しく、携帯しているハサミでどうにか袋を切った。
ちなみにこの時のハイボールはストローを持参していたため問題なく完飲。
お酒様万歳!お酒様は主食です。
では、少し意地悪なラスト問題。
・「箸ぞうくん」でスムーズに食べられる蕎麦&薬味
・持参のスプーンでスムーズに食べられる親子丼
・持ちやすいプラスチックコップに入った水
答え:これらが乗ったトレー
この時の私の握力は今ほどは低下していなかった。
だからセルフサービスのお店に入ってしまったのだ。
トレイを持ち上げようとしたものの、なかなか持ち上がらない。
かろうじて両手で支えたものの、凄まじい重みににっちもさっちも行かなくなった。
店員さんは少なく、しかも混雑する時間帯で、誰にも助けを求められない…
火事場の馬鹿力でどうにか自分のテーブルまで運んだけれど、これ以降、一人で食事する時はセルフサービスの店は断念している。
テイクアウトの袋も今では重く感じ、距離があると提げて帰ることが難しい。
なお現在使っている補助具には、先に紹介した「箸ぞうくん」以外では次のようなものがある。
これは用途に柔軟性がある反面、私のように両手ともに障害があると、うまく巻きつけられない時がある。
好きな角度に曲げて使うスプーンやフォークもあり、時々これも使う。
けれども曲げるのにかなり力がいるので、調整してもらえる人がいないと常用は難しいかもしれない。
自宅では深みのあるプラスチック皿を使っている。
裏面に滑り止めがあり、片手で食べても皿からこぼれない設計が施されている。
軽いし洗いやすいしレンジOKだし、汎用性もある。
「箸ぞうくん」は残念ながら万能ではなく、利き手の進行にともない使い勝手が悪くなってきた。
正しく持っているはずなのに箸が手の中でグラグラするようになってきたのだ。
メーカー側はそんなことはお見通しのようで、オプション品を用意してくれている。
写真や動画だけ見て買って失敗するのも嫌だしなあ……という場合は、OTさんに相談してみるといいと思う。
訪問リハビリを利用していない場合は、主治医に相談すると病院内のリハビリ科を紹介してもらえる。
そこでカトラリーや食器の実物を見せてもらうこともできるし、自分に合った補助具を作ってもらえる時もある。
「手」から始まった先輩患者いわく、
「今のうちに麺類を食べておきなさい。自分の箸で麺を持ち上げてすする感覚を、しっかりと記憶に焼き付けておきなさい」
というわけで感染症に気をつけながら「ぼっち飯」の想い出を作るようにしている。
チェーン店やファミレスなど大衆的な店だと「おひとり様」用の席もあり、不器用でマナーに反した食べ方をしても人目を気にせずに済むことが多い。
来年の今頃もまだ、私は自分の手で飲食が楽しめているだろうか。
自炊が重労働になりつつある、今日この頃。







