【この記事のポイント】
・百里基地航空祭の華、ブルーインパルスの曲技飛行を演目ごとにご紹介。広角写真が多い理由は、愛用カメラのα7Ⅳに発生したまさかのメモリーカードトラブル、さて、何が起きたのか…




昨日に引き続き、今日も百里基地航空祭について。

本来ならば、午前中のプログラムから順を追ってご報告するところですよね。
ところがどっこい、この記事はいきなりブルーインパルスからスタート。

なぜいきなり「真打ち」から始めるのか。

そこには愛機α7Ⅳを襲った、カメラマン失格とも言える痛恨の事態が…
詳細は後述しますけど、まずは空の芸術をご覧ください。

ブルーインパルス、航空自衛隊が誇るアクロバットチームの妙技は、今年も多くの観客を魅了しました。
彼らが大空に描く軌跡は、単なるアクロバットを超えた、極限状態でシンクロする知性と情熱**。**
6機の信頼関係が空に溶け込むような、至高の結晶と言えるでしょう。
 

5機編隊の優美な隊形変化:チェンジオーバーターン


 



5機編隊による最初の課目。
会場右手から縦一列のトレール隊形で進入した5機は、スモークを作動させながら会場中央へ。

編隊長の「レッツゴー!」という力強い合図と共に、各機は一斉にトレール隊形からデルタ隊形へと瞬時に移行。
この隊形変化の速度と精密さは、まさに圧巻の一言に尽きます。
特に両翼端の4番機と6番機はラダーをフルに作動させ、美しい編隊を維持するんです。

このデルタ隊形で観客席の前を水平旋回する間に、「メイク、デルタ」の合図で機体間隔が約3分の1まで一気に縮められ、密集デルタ隊形へと移行。
最初のダイナミックな動きに加え、飛行しながら間隔が狭まっていく緻密な調整の妙を楽しめる、編隊飛行技術の粋を示す課目と言えるでしょう。
 

一瞬の交差に互いの信頼を見る:オポジットコンティニュアスロール


 



今回、みごとに交差するタイミングを撮れました!
相対速度は時速約1,500km(秒速400m超)、 瞬きすら許されない極限の交差です。

2機がお互いに向かい合ってから会場中央へと向かってくるこの課目。
相対速度は秒速400m以上にも達し、極めて高い集中力と、何よりも互いのパイロットに対する絶対的な信頼が求められる、緊迫感のある演目です。

すれ違う瞬間、両機は約50mという極限の距離まで接近しているそうで、客席からはそのスリルに驚嘆する声が一斉に上がります。
交差後、両機はそれぞれ3回転のロールを行いながら、互いに逆方向へと飛び去る構成。
 

大空に愛を射抜く傑作:「描きもの」の極致キューピッド


 



ブルーインパルスの演目の中でも、特に観客の人気が高い「描きもの」課目。
会場正面遠方から進入した5番機と6番機が垂直上昇へ移行し、スモークを作動させながら左右にブレイク、ループ機動に入ります。
その頂点は高度7,000フィート(2,100m)にも達する壮大なスケール。

単純なループでは形が歪むため、操縦桿の引きを繊細に調整することで、東京スカイツリーを二つ縦に並べたほどの巨大で美しいハート型を描き出す。
そのハートが空中に現れたところへ、4番機が左下から上昇。
スモークのオンオフで、あたかも矢が刺さったかのように見せるという演出。
 

グランド一体の迫力:ワイド・トゥ・デルタ・ループ


 



会場の背後、格納庫側からスモークを出しながら進入してくる5機の編隊。
これを見ると、次にワイドトゥデルタループが始まるなと、だいたい予測がつきます。
 



会場の後方から幅広のデルタ隊形(一辺約200m超)で進入した5機、会場正面で隊形を維持したまま巨大なループ機動へと移行します。

高度5,000フィート(1,500m)を頂点とするループの間に、編隊は徐々に密集隊形へと変化。
降下角度が直角になるあたりまでに、機体間隔は最小限の40〜50mまで詰められるんだそうです。

観客の背後から現れ、巨大な輪を描きながら隊形を変化させる一連の流れ。
観客との不思議な一体感を生み出す、迫力満点の課目です。
 

シンメトリーの美と迫力:クリスマスツリー・ローパスとフェニックスループ


 



6機による「クリスマスツリー編隊」を組み、密接な隊形を維持したまま、太いスモークを出しながら会場上空をフライパス。
このシンメトリーな隊形の美しさと太いスモークの迫力、編隊飛行の魅力が凝縮された課目と言えるでしょう。

この後、あの太いスモークが我々の周囲に降りてきて、もうもうと煙の中に。
普段なら「煙い」「臭い」と顔を顰めるところですけど、すっかり興奮している観客は誰も気にしない、気にしない。
 



フェニックスループは、ロール(ひねり)を伴わず、会場正面でシンプルかつ巨大な輪をループ機動で描く構成。

会場右手から進入した6機は、高度500フィート(150m)前後を基点に一斉に引き起こしを開始。
頂点高度は5,000フィート(1,500m)を超えます。

特別派手な機動はないものの、6機が完璧に隊形を保ったまま巨大なループを描ききる姿。
シンプルながらも端正な美しさに溢れ、特別な魅力があります。
 

感動を呼ぶフィナーレ:スタークロスと予期せぬ贈り物


 



キューピッドと並んで、その造形美から人気の高い「描きもの」のフィナーレ課目、スタークロス。

5番機を除く5機がデルタ隊形で進入し、会場正面でほぼ垂直に上昇しながら各機が散開、「巨大な一輪の花」を咲かせた後、各機が空を切り裂くように反転。
見上げる視界すべてが、キャンバスへと変わる瞬間です。

その後、各機は約20秒の直線飛行の後、隊長機の合図で一斉にスプリットSで反転。
スモークを作動させながら直線飛行を行うことで、大空に美しい「星」の形が完成するんです。

その芸術性の高さは、フィナーレを飾るにふさわしい、感動的な演目です。


いやぁ、今日も素晴らしい演技だった。
 



と、演技が終わった後に格納庫側に歩き出すと、そこにはなんと。
先ほどブルーインパルスが描いたスター。
演技が終わった後も、空からの贈り物は消えまていませんでした。

スターの形を崩さず、静かに、優雅に空をスライドしていく。
風さえも味方した、奇跡の余韻でした。

これもまた、観客に強い記憶を残してくれる、予期せぬ贈り物だったと言えるでしょう。
 

α7Ⅳに発生した不測の事態、広角写真の裏側



ところで、この記事で広角で撮った写真が多いのは、実はその多くをスマートフォンで撮影したからです。

何を隠そう、入間基地航空祭に続き、愛用の一眼レフカメラα7Ⅳに再びトラブルが発生。
気付いたのは、ブルーインパルスの演技を撮影していた最中、ファインダーに「スロット1のメモリーカードがいっぱいです」とのエラーメッセージが表示された時。

「あれ?ちょっと待て。前回の入間基地航空祭で撮った写真は全てMacに取り込んで消したはずだぞ。」
そんな疑問が頭をよぎる間にも、目の前ではブルーインパルスが演技を続けています。

思考停止している暇はない。
「記録すること」を最優先し、反射的にスマホを構えました。
怪我の功名か、これが巨大な演目の全体像を捉える「救世主」になったんですけどね。

この後、α7Ⅳをどうしたかについては、次回の記事で詳しく書くことにしましょう。
 

 

 


【おまけのワンポイント】
・空に描かれる美しい白いライン。あれは何かを燃やした煙ではなく、実は「油の蒸気」。 エンジンの排気口に「スピンドルオイル」という油を吹き付け、熱で瞬時に気化させて白い雲を作っています。