こんにちはボアと申します。
今回はこちら
「ことり屋おけい探鳥双紙」
出版:朝日新聞出版
梶よう子 作
を紹介します。
江戸の町に、小さな鳥の声が響く店があります。
その名は「ことり屋」。
店先には、色鮮やかな文鳥、賑やかな九官鳥、そして目を引く珍しい鳥たち。
この店を切り盛りするのは、おけいという女性。
夫は幻の鳥を探す旅に出たまま、三年もの間戻ってきません。
それでもおけいは、店を守り、夫の帰りを信じて日々を送ります。
ことり屋には、今日も不思議な客がやってきます。
鳥に興味がないのに何羽も買い続ける男、壊れかけた鳥かごを抱えた老人、
そして、鳥を介して何かを伝えようとする人々…。
おけいは、ただ鳥を売るだけではありません。
客たちの心の奥にある寂しさや喜びに触れ、時にはそっと背中を押し、時には寄り添う存在となります。
この物語には、派手な事件はありません。
あるのは、日常の中で静かに紡がれる、小さな謎と人情の物語。
鳥たちはその中心で、人と人を結びつける役目を果たします。
九官鳥の月丸は、時に場を和ませ、
時に、忘れていた大切な記憶を呼び覚ます存在となります。
そして、おけいと同心・永瀬との心の距離も、物語が進むにつれて、少しずつ変化していきます。
読み進めるほどに、胸の奥に広がっていくのは、切なさと温もりが混ざり合う、不思議な感覚。
悲しい出来事も、優しい人の手によって、やがて柔らかな記憶に変わっていきます。
『ことり屋おけい探鳥双紙』は、
江戸という時代を背景に、人の想いと鳥の存在が重なり合う、静かで深い人情物語です。
ページを閉じた後も、羽ばたく音と人の声が、心の中にいつまでも響き続けます。
以上、ボアでした。
ありがとうございました。