おばあちゃんは、誰ひとり責めようとはしなかった。
あるお寺さんから聞いた話。
あるおばあちゃんは、息子を亡くした。
離婚した後、自殺で命をたったのだ。
「あんたのせいや!」と我を忘れて
お嫁さんを責めてもおかしくないだろう。
しかし、おばあちゃんは違った。
「生活が、大変だろう」とお嫁さんに仕送りをはじめたのだ。
おばあちゃんは、誰ひとり責めようとはしなかった。
息子も、大変だった。
お嫁さんも、大変だった。
みんな、何か抱えて生きてるんだ。大変じゃない人なんていない。
いや、おばあちゃん。
あなたも、あなたこそ大変だったろうよ。自分の息子を亡くしたのに。
それなのに、あなたはお嫁さんを支えようとした。
「あんたは、悪くない。自分を責めんでええかなら。」
仕送りにはそんなメッセージも込められていたんだろうな。
そのおばあちゃんは、今はもう仏さんとなりました。
今年も、お嫁さんがお布施をお寺に送ってきた。
「大変、お世話になりました。」と一筆を添えて。
おばあちゃんの優しさはね、まだ生きているんだ。
そう思うと、こっちまで心が優しくなる。
おばあちゃん、あなたって人は。
