妻が最初に具合がおかしいと言い始めたのは、1か月前の4月20日頃だったでしょうか。
『お腹が痛い』と言って座り込んでいたのです。

 腹が痛い、、、、まずい。
昨日の夕食の買い物のときに半額の豚ロースを買ったのがヤバかったのか?と真剣に思いました。それにしては、同じ豚肉を食した子供らや小生はなんともない、、、、。体力の落ちている妻だけが敏感に反応しているだけなのか。
 とにかく、ゆっくり自宅で静養しているように言いつけ、小生は仕事に出かけました。
 その日の夜にも痛みが引かず、変わらず苦しそうです。夜は早めに寝かせたのですが、布団のなかでもかなり痛そうでした。
 これはちょっと様子がおかしいなとは思いはじめておりました。
 妻が痛み始めて2日目。もう朝から完全に無理な感じです。これはなにか病巣がありそうだと感じてましたが、症状はかわらず『腹が痛い』というもの。家事は小生が済ませ、子供らを学校に行かせ、小生は仕事へ。とにかく日中に近所の病院に行くようにと言い自宅を後にする。

 その日の午後、小生の携帯が鳴る。
 妻からの電話で、近所の個人病院の内科に診療にいったところ、盲腸の疑いがあるので、手術ができる隣駅の病院へ転院してすぐ入院するように指示されたというのだ。そして、すでにその病院に入院して検査をしていると。
 ゲッ!盲腸か。
 かつて小生が子供のころに盲腸を患う友達がいたな、、、、なんて思いながらも、すこし面倒なことになったと頭の片隅で考えておりました。
 その日の仕事は早めに切り上げさせてもらい、着替えなどの入院に必要なものをもって妻が入院した病院に出向く。ベットで寝ている妻の腕には点滴が。
 先生に病状を聞くと、CTスキャンなどの検査の結果、盲腸ではなく婦人科系の疾病の可能性が大きいと。現在血液検査などをして調べているとのことだった。相変わらず、妻の腹痛は続いているようでかなり苦しそうであった。
 
 そして、翌日。
 仕事中の小生のところに病院の担当医から小生に電話がくる。
 病巣の原因がわかりつつあるが、自分の病院の施設では手に負えないので、すぐに大病院へ転院しろというのだ。慌てて病院に行き、担当医の話を聞くと、血液検査の結果の数値が芳しくないと。体内の組織の破壊が進行しいる値が出ており、開腹手術に対応できる大病院に紹介状を書くので、このまま即転院しろとの指示でした。
 つい先日、この病院に入ったばかりなのに、すぐにまた大規模病院に転院しろと?
 妻が患っている病はなんなのだ?
 この時の担当医は病名の明言をあきらかに避けておりました。
 とにかく、この病院では施設が足りない、緊急を要す、、、転院すべきだと。

 じつは、このときに担当医は小生たちに説明はしなかったのですが、妻の血液検査の結果のうち、腫瘍マーカーが完全なる異常値を示していたのでした。
 そんなことは知らずに、一旦その病院を退院し、タクシーで自宅に向かったあとにすぐに再入院の準備をして、自宅の車で紹介してもらった大病院へ。
 すでに先ほどの担当医から、大病院の婦人科の女医に直接電話があり病状の説明などあったようで、女医の診察が始まりました。とにかく検査をすることになり、3時間ほど待たされました。
 そして、診療結果。病名は子宮内膜症で、片方の卵巣が異常に大きくはれ上がっており、それが痛みの原因だったようです。本来親指大の卵巣は4センチ×20センチくらいにお腹のなかではれ上がっていると。抗生物質を点滴で投与して、まずはその腫れを小さくする入院治療するとのことだった。
 原因もわかり、少々ほっとした妻と小生。
 妻は相変わらず苦しそうだか、昨日はよりはずっとマシな感じにも見えました。
 入院して3日もすると、だいぶ楽になったようで、笑顔も見せるようになりました。

 入院5日目くらいだったでしょうか。あらためて担当の女医さんから説明がありました。
 腫れていた卵巣は10センチくらいまで小さくなっている。がしかし、こうまで大きくなる卵巣は放置できないと。卵巣が腫れる原因はさまざまで、血液が入っている場合、黄色い液体が入っている場合、あるいは、腫瘍化している場合、、、、つまり卵巣が癌化する場合があると。
 癌化。聞きたくないフレーズでした。
 癌化と聞いた時、一瞬言葉を失いました。
 まずは、抗生物質のさらなる投与を行い、腫れが引くのを待ちましょうと。
 腫れが引いたら退院して、病巣の卵巣のことのついては、あらためて外来で通院してきたときにお話しして決めましょうということになった。
 そして1週間して無事に妻は退院することができました。
 腹痛も治まったようで、笑顔を取り戻し、めでたしめでたし、、、と思っておりました。

 そして、退院して1週間がすぎ、外来での診察の日がやってまいりました。
 小生も一緒に病院までいったのですが、診察するのが婦人科ということもあり、妻を伴って一緒に診療室に入ることが躊躇われて待合室で待つことに。
 検査や診療の結果、愚妻は担当女医の診断により、病巣である卵巣の切除を決断してきました。
 卵巣の切除を最初に聞いた小生は少々驚いてしまいました。
 まさか、内臓の切除手術をしなければならないとは、、、、、

 詳しく愚妻に話を聞くと、、、、、、これがまたトンチンカンなんですな。
 内視鏡手術なのか、開腹手術なのかと愚妻にたずねてもわからないなんていうし、、、、。
 なんで切除するのかと聞いても、『これから悪くなるかもしれないんだって』なんていうし、、、。
 あ~自分のことじゃないだけに、もうじれったいというか、もどかしいというか、、、。
 でも、恐怖を感じ、肉体の苦しみを感じているのは妻本人なわけで、ここで小生がもどかしさゆえに怒っても仕方ないわけで、ここはぐっとこらえて妻に同意いたしました。
 ただ、次回の入院前の検査のときにもう1度妻の診療に同行して、担当の女医にキッチリ話を聞こうと心に決めました。

 そして、手術のための入院の3日前。MRIの画像診断をして、手術について説明を聞く日がやってきました。MRIの画像を撮ったあとに、担当してくれる女医さんからの説明がはじまる。
 病名は『卵巣腫瘍』
 子宮内膜症だったはずが、卵巣腫瘍に変わっている。
 腫瘍。ってことはガンの可能性もあるのか。
 小生は、いきなりショックでガツンときました。
 説明は続き、小生も疑問点を素直にぶつけました。
 妻の場合は、開腹手術が必要で、卵巣が他の臓器と癒着している可能性も大きいと。悪性、つまりガンの可能性も少しあり、出血を最小にして卵巣を切除して他の臓器への転移も防がなくてはならないと。
 悪性かどうかは、切除した卵巣を病理検査して数日後に判断される。ただ悪性の場合に備えて手術は進行する。手術時間は90分から120分を要し、開腹後に悪性を判断した場合はそれ以上に時間を要しますと。
 マスクをしたまま、淡々と女医さんは説明してくれました。
 施術する医師の義務としてすべてのリスクをただ説明してくれているのか、、、、それとも、この女医は妻は卵巣癌の疑いが強いと言っているのか、、、、。 
 隣に座っている妻の表情を見ると、凍りついて、少々青ざめているようにも見える。
 うーん。

 担当医は最後にこう言葉を締めくくってくれた。
 『悪性の場合は複雑な形をしている場合が多いのですが、奥さんの場合はきれいに丸くはれ上がっていると判断しています』
 必要以上に落ち込んでいる我々夫婦に希望を与えてくれたのか。

 今から考えると、医師の告知ってのが難しくなっているのでしょうね。
 すべての可能性を示さないと、後々に法的な対処を迫られることになったりするケースがでてきたりしてしまうのでしょう。
 女医が言葉を選らんで説明していることを小生は感じました。
 短くまとめると
『癌の可能性もあるし、これから癌になる可能性も十分にある。いまのうちに切るべし』と。

 いや~説明いただいたあと再入院まではいろいろ考えちゃいましたね。
 妻が自宅で突然『わたし、癌かな』なんて呟くし。
 小生も自分の死のことは、わりとよく考えたりするが、妻の死なんて考えたこともなかった。
 女医からの説明から手術のための入院まで3日間。
 卵巣腫瘍についてネットで調べたりして、無駄に知識ばかりがつきました。
 ただ、調べれば調べるほど、イヤな方に、、、つまり悪性である可能性について考えるようになってしまいます。内視鏡ではなく開腹手術を選択する時点で、悪性の可能性が高いと担当医は考えているのではないかとか。腫瘍マーカーの数値が高くて大丈夫なのだろうか。

 妻は平然を装っていましたが、内心はかなり心配だったでしょう。