④ストレートってどんなボール?~ボールに働く揚力の大きさ~ | 野球の動作分析家 佐藤康則のブログ

野球の動作分析家 佐藤康則のブログ

動作分析家としての活動や
野球に対して日々感じた事を綴っています

前回の記事②ストレートってどんなボール?~ボール回転軸の向きから~)では、「ストレート」のボール回転軸方向について説明しました。

 

ボールを動かしている揚力の方向が分かったので、次に、揚力きさについて説明します。

これはみなさんがお分かりになるようにボール回転数が大きければ揚力も大きくなります。球速ボール回転数には相関があり、通常球速が高いボール回転数も大きいです。

 

大谷投手のような球速の高いスリークォーターのピッチャーはボール回転数も大きいので、ホップ方向とシュート方向に働く揚力も大きくなります。

つまり、ボールへの指の掛かりが良くボール回転数が大きくなると、さらにホップシュートしていくのです。

 

 

早く開くからシュートするとか、シュートしてるから真っ直ぐげろとコーチに言われた事はないですか?

あるいは選手に言った事はないですか?

これらは全て誤解です。

回転数の多い「ストレート」はよりシュートしていくのです。

 

揚力の大きさはボール回転数の他に、投球方向ボール回転のなす角度も影響してきます。この角度が大きい程、揚力は大きくなります。

(図: ボール回転軸が投球方向となす角度)

 

ボール回転軸方向に関する記事②ストレートってどんなボール?~ボール回転軸の向きから~)では、回転軸について2塁方向から見た2次元だけの傾き(仰角)しか説明していませんでした。

(図: ボール回転軸仰角

 

実際は、ボール回転軸3次元ですので、水平方向の角度(方位角)も考慮しなければなりません。

「ストレート」では、ボール回転軸方位角が90度(右ピッチャーであれば3塁方向)に近づくほど、揚力が大きくなります。

(図: ボール回転軸方位角

 

しかし、「ストレート」の回転データを取ると、選手の中にはボール回転軸の方位角が投球方向と必ずしも90度でない、90度よりかなり小さい「ストレート」を投げる投手がいます。

つまり、カットボールに近い「ストレート」です。真っスラとも呼びます。このカットボールに近い「ストレート」は、揚力ホップ成分とシュート成分が小さいので、シュートせず、ほぼ真っ直ぐ進みます。

大谷投手が投げたこの1球は、真っスラです。

 

 

真っスラになる原因は2つあります。

 

1つ目は、前腕が投球方向ではなく、ほんの少し顔の方を向いて(回外動作)投げる時です。前腕回外が「ストレート」とカットボールを投げる時の中間くらいです。

 

2つ目は、ボールをきちんと握れない子供や、人差指中指同時に同じ力でボールをリリースしないと、ボールの回転軸がずれて、回転軸が少し投球方向に向いてしまう時です。

人差指中指同じ長さではないので、両方の指先同時にボールの縫い目から離れないピッチャーは結構います。

下記の画像では、中指が最初にボールから離れています。

 

 

先程の大谷投手のカットボールに近い「ストレート」、真っスラは2つ目の原因だとすると、縫目が低く滑るメジャーのボールに対して、人差指中指の離れるタイミングがずれてしまっている可能性があります。このボールを意図的に投げられれば、それは新しい球種として使えますが。。。

 

ボールトラッキングデバイスでは、ボール回転軸が水平面で投球方向に対してなす角度(方位角)も分かるので、自分の「ストレート」のボール回転軸が水平面で投球方向に対してどう向いているか確認できます。つまり、回転数が大きくても回転軸の方位角が小さければ、揚力ホップ成分とシュート成分は小さくなるのです。回転数が大きくても、揚力が意外と小さく、バッターからしたらあまり変化のない打ち易い「ストレート」になってしまうのです。

 

あなたの「ストレート」のは、どうなっているでしょう。。。

データを見ると、改善の余地があるかもしれません。。。

 


野球の動作分析・動作指導なら

Baseball Movement Analysis Institute

 

世田谷ハイパフォーマンスクラス 新年度生徒募集中

見学も受け付中。

 

 

ストアカ

 
 

佐藤 康則

プロの動作分析家による野球の動き改善講座