遺言執行者の権利義務

①遺言の有効性の確認

…無効であると判断した場合は執行してはなりません。

②就職通知の発送時期及び対象

かつて、判例上、「遺言執行者がある場合」に相続財産について相続人がした処分行為は絶対的に無効でしたので、遺言書と遺言執行者の存在を相続人らに早く知らせる必要性がありました。

しかし、新民法では、この無効は善意の第三者には対抗することができないとされました(1013条2項但し書き)。そして、特定財産承継遺言について遺言執行者には新たに「対抗要件を備えるために必要な行為をする」権限が与えられ、預貯金については払戻請求及び解約申入れをする権限も与えられました

 

遺言執行者任務開始の通知

1 遺言執行者の就職

 ①遺言で指定された指定遺言執行者、②家庭裁判所が利害関係人の申立てを受けて選任した選定遺言執行者の二種類があります。

相続人に対し、就職承諾の意思表示をすることとなります。

2 遺言執行者の任務の開始

 平成30年相続法改正により、遺言執行者は就職後すぐに任務を開始せず、第三者に対抗要件を備えられてしまった場合は、任務懈怠となるおそれがあります。

3 遺言執行者の任務開始の通知

 ・相続人の債権者と相続債権者による権利行使は妨げられません(新民1013Ⅲ)。彼らは、法定相続分による権利の取得を前提として強制執行ができる立場にあるので、遺言の実現のために対抗要件を備える必要がある場合は、彼らへの通知の要否については慎重を期します。

 ・遺言書の写し及び財産目録を添付します。

 

遺言執行者による預金口座の開設が必要となる場合

 遺言の内容が、遺言執行者において預貯金口座を解約して払戻しを受け、受遺者や受益相続人に金銭をもって引き渡すというものである場合です。

 

財産目録原案の作成

 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、これを相続人に交付しなければなりません(1011条1項)。

 

特定財産承継遺言の実現

   特定財産承継遺言とは、いわゆる「相続させる旨」の遺言のうち、遺産分割方法の指定がされたものをいいます。遺言による権利変動のうち相続を原因とするものについて、判例は登記等の対抗要件を備えなくても第三者に対抗することができる。

   不動産を目的とする特定財産承継遺言がされた場合に、遺言執行者は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときを除き、単独で、法定代理人として、相続による権利の移転の登記を申請することができます。

   遺言執行者は、預貯金債権について特定財産承継遺言がされた場合、預貯金債権の債務者である銀行等に対し、債務者及び第三者への対抗要件となる内容証明郵便等による通知をする必要があります。