相続法が改正されました。

相続は、お得に、もめない方向で進めたいものですよね。

 

 

 

1 配偶者居住権制度について

【民法改正】配偶者居住権について

 配偶者居住権を確保する方策として、配偶者居住権の制度と配偶者短期居住権の制度が創設されました。

 配偶者居住権の制度の創設により、配偶者は自宅での居住を確保しながら他の財産も取得しやすくなります

 配偶者短期居住権の制度の創設により、配偶者は、被相続人の意思にかかわらず、最低6か月間は自宅での無償居住を確保できるようになりました。

 

2 民法改正を受けて遺産分割はどのように変わりますか

【民法改正】持ち戻し免除の意思表示の推定(新民903条4項)とは何でしょうか?

 婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に対し、その居住用建物又はその敷地を遺贈又は贈与した場合については、民法903条3項の持ち戻し免除の意思表示があったものと推定し、遺産分割においては原則として当該居住用不動産の持ち戻し計算を不要とします。

 

【民法改正】一部分割(新民907条)

 遺産分割事件を早期に解決するためには、争いのない遺産について先行して一部分割を行うことが有益な場合があり、また、現在の実務上も、一定の要件の下で一部分割を行っていました。しかし、法文上、一部分割が許容されているか否かは必ずしも明確ではありませんでした。そこで、平成30年改正相続法は、いかなる場合に一部分割をすることができるかについて、明文の規定を設けたものです。

 

【民法改正】遺産分割前の遺産の処分(新民906条の2)

遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができます。

共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には、当該処分をした共同相続人については、同意を得ることを要しない。

 

3 民法改正により相続の効力がどのように変更されましたか

民法相続と登記(新民899条の2第1項)~不動産の対抗要件~

①相続による権利の承継では、相続人は、遺産分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することはできません(新民899条の2第1項)。

②逆に言うと、法定相続分の範囲内であれば、相続人は、登記、登録その他の対抗要件無くして第三者に対抗することができます。

指定相続分の範囲内であれば法定相続分を超える部分であっても相続人第三者に対抗できるとされていた従来の判例を法改正により変更されました。

 

動産の場合(新民899条の2第1項)

①動産についても、相続人は法定相続分を超える部分については引渡しその他の対抗要件無くして第三者に対抗することはできません。

②もっとも、実務的には、取得時効の適用の有無によって処理されることが多いと思われます。

 

特定遺贈がなされたときの遺言執行者の権限(新民1012条2項)

①特定遺贈がなされた場合に、遺言執行者があるときは、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができます

②遺言執行者は、受遺者が対抗要件を具備するために必要な行為をする権限を有します。

 

遺言執行妨害行為に対する善意の第三者保護について(新民1013条2項・3項)

①遺言執行者がある場合に、相続人が、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができない点(新民1013条1項・旧民1013条)は改正前と改正後で変わりません。

相続人が行った新民法1013条1項に違反する行為が無効となるが、善意の第三者に無効を対抗できないことが明記されました。

③しかし、相続人の債権者が相続財産について権利を行使することは妨げないと明記され、相続人の行為の効力と債権者の行為の効力とは異なる取扱いとなります。

 

特定財産承継遺言(新民1014条2項)

特定財産承継遺言がなされた場合、遺言執行者は、原則として、対抗要件の具備に必要な行為をする権限や、預貯金の払戻し・解約をする権限を有します。

 

債権承継の通知・承諾(新民899条の2第1項・2項)

特定財産承継遺言や相続分の指定により、法定相続分を超える債権の承継がなされた場合、民法467条に規定する通知・承諾による対抗要件具備のほか、その債権を承継する相続人の債務者に対する通知により対抗要件を具備することが認められました。

 

義務の承継(新民902条の2)

①相続債権者は、被相続人が相続分の指定をした場合であっても、各共同相続人に対して、法定相続分に応じてその権利を行使することができることが明文化されました。

②相続債権者が共同相続人の一人に対してその指定相続分に応じた債務の承継を承認した場合には、指定相続分に応じた権利行使しかすることがきなくなります。

 

 

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