「・・・っと・・・・・・あれ?あれれ?」
ハボックと二人、司令室でデスクワークに励んでいたリザは、突然の素っ頓狂な声に顔を上げた。
見ればハボックが、自分のデスクで書類をめくったりその辺のものをどけたり、下に潜ったりしている。
「どうしたの、ハボック少尉」
「いやね、消しゴム探してんですけど、見当たんないんすよ・・・・・・この間ここのヘンに置いといたはずなんだけどなぁ」
ハボックはおっかしいなぁと頭を掻くが、そのデスクの様子を見れば無理もないと、リザでなくたって思うだろう。
彼の机上を一言で表すならば、カオス(渾沌)だ。
書類やら雑誌やらが雑然と積み上げられた山(その高さ実に30cm!)が両脇に二つ、向かい合わせたブレダの机との境界すれすれには四つほどペンスタンドが並べて置かれているが、そこには鉛筆やらペンやら定規やら小型ナイフやらの文房具はもちろんのこと、耳掻きにスプーンにフォークになぜか棒付キャンディまでが一緒にささっている(一度そのキャンディを「食べます?」と差し出されたことがあるが、謹んで辞退した)。その他、卓上カレンダーが二つに買ってきたり差し入れてもらったりしたお菓子と飲み残しの入ったカップ、彼女(もう別れたらしいが)とのデートのときに買ったというシリーズ物のマスコットが一揃い、いつ使ったかわからないタオルなどなどが置けるだけ置け!という具合に置かれていて、空いているスペースはかろうじて書類一枚分というところだ。
本人は、「どこに何があるかちゃんとわかってるんですって!」というが、必要なものが必要なときにすっと出てきたことはほとんどなく、大概こうしてあちこちひっくり返して探す羽目になる。そしてますますカオスが深まるわけだが、それはまあ余談として。
集中しているときに隣であまりがさごそされるのも気分が良いものではないから、リザは自分の消しゴムを差し出した。
「仕方ないわね。私二つ持っているから」
「お、サンキューです!」
「その書類が終わったら、少しデスクを片付けなさいね」
「Yes Mam!・・・・・・うっし。中尉、どうもでした」
あれは絶対やらないわね・・・・・・調子のいい返事に、リザはため息をついた。
「いいわ。それあげる。まだ使うでしょう。今度はなくさないようにね」
おぉラッキー。
ハボックは内心小躍りした。
どんな形であれ物であれ、麗しの中尉から何かをいただけるなんて幸運は滅多にないことだ。こりゃあ今隣室で一人業務に勤しんでいる(ハズの)上官に自慢できるななどと思って、消しゴムを軽く投げ上げた。
するとさっと何かが鼻先を掠めて、そして手に落ちてくるはずの消しゴムが、消えた。
と同時にすぐ隣から殺気を感じて恐る恐る振り向いてみると、そこには、今隣室で一人業務に勤しんでいるハズの上官が、鬼のような形相で立っていた。
「大佐・・・・・・何をしてらっしゃるんですか」
リザもすぐに気づいて呆れた声を出したが、ロイは答えない。
消しゴムをしっかと握りこんだまま、がるると唸り声を上げそうな勢いでハボックを睨みつけている。うっかり手を出そうものなら本気で噛みついてきそうで嫌だ。
ていうか、この人、発火布装着してますやん!?
「大佐、今すぐ消しゴムをハボック少尉にお返しください。彼の仕事が滞ります」
「嫌だ」
「大佐!」
「い・や・だ!」
「この忙しいときにわがまま言わないでください! 消しゴムが要るのなら後で総務からもらってきてあげますから、それはハボック少尉に・・・・・・」
まるで母親が聞かん坊の子供に言い聞かせるような台詞に、ハボックはうっかり吹き出しかけた。
彼らの関係は母子などでは断じてないし、ましてや言われているほうはもうすぐ三十路のいい年した大人、のはずだ。
だが、言われた当の本人はそのおかしさに気づかないのか、はたまた気づいているからこそ余計反抗的になるのか、丸顔の頬をさらに膨らませてぷいっと横を向いてしまった。
ダメだ。ますます子供化している。
「じゃあハボック少尉、とりあえずこっちを使ってちょうだい。私はしばらくは消しゴムはいらないから」
リザも早々にロイの説得をあきらめ、もう一つ持っていた消しゴムをハボックに渡そうとした・・・・・・が、その消しゴムも、差し出した途端にロイの手が目にも止まらぬ速さで奪った。
そして両手に一つづつ消しゴムを握り締め、そのまま脱兎の如く部屋を飛び出していく。
「あ! 大佐! どこへ行かれるのですか!? 大佐ッ! 大佐ーーー!!!」
それを追いかけて、リザも机上の書類を巻き上げる勢いで猛然と部屋を出て行った。
呆気に取られていたハボックだったが、宙に舞った書類が床に着く頃、ようやくポツリと呟いた。「・・・・・・なんつーかあの人も、バカ、だよなぁ・・・・・・」
たかだか消しゴム一つすら、彼女が他の男に何かを上げるということ、彼女のモノが他の男の所有になるということが嫌なのだろうが、それにしても、うーーん・・・・・・。
結局のところバカ以外に形容する言葉を思いつかないハボックは、ブレダの机の引き出しからちびた消しゴムを拝借したのであった。
なお、その消しゴムもやがてハボックカオスに飲み込まれてしまうのだが、これまた余談である。
「恋人たちの7つの言葉(文房具編) 」より、「7. 消しゴム」、なんですが・・・・・・相変わらずこれのどこが恋人たち・・・・・・?(滝汗)
ホントはね、もうちょっとシリアスめのお話を思いついてたんだけどね、そっちで書こうと思ってたんだけどね、そっちがまとまるより先にこのネタを思いついてそこから一気にガーーーッと・・・・・・えと、それって結局私にはこんな話しか書けないってことですか??(T T)
とりあえずハボックの机の足元には、これまた何が入っているか本人すらもわからない紙袋が二つ置いてあると思います。
ブレダの机はけっこうキレイそうだと思うんですけど。物があまりなさそうな感じ。リザも同じく。
ファルマンは、本がいっぱい並んでそう。それなりに物はあるけど整然と並んでいそうだな。
フュリーは、机の上はきれいだけど、引き出し開けたら工具がごっちゃり入ってるんじゃないかしら。
ロイは・・・・・・整理整頓はけっこう下手くそそうだな。錬金術師だから家に大きな書庫があるんだろうが、そこなんかはもう目も当てられない状況っぽい。でも、書庫以外はリザさんがやってくれるからいいんだよね!
シリアスのほうも頑張ってみますよ!・・・・・・たぶん・・・・・・(←この辺がけっこうダメだめ)
