ガンガン3月号を読んでの小ネタです。
あんまりお上品な内容ではないのでご注意。
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「とりあえず、自宅へ頼む」
「はい」
後部座席に腰を落ち着けた自分に遅れて運転席に乗り込んだリザにそう告げて、ロイはシートに凭れて深く息をついた。
それを、リザがちらりとミラー越しに見やる。
「ずいぶんとお疲れのようですね」
「あぁ、さすがにな。熱いシャワーを浴びてさっぱりしたい気分だ。中尉もだいぶ疲れただろう。・・・・・・すまなかったな」
「いえ。あなたさえご無事なら、私はそれで大丈夫ですから」
軽く目を伏せた仕草に、リザがもう知っていることを、知った。
外に視線を向ければ、おそらくはこれから仕事場に向かうのであろう大勢の人々が足早に歩いている。反対の車線は何台もの車が連なり、その間を自転車がすり抜けていく。
いつもとなんら変わりのない朝だが、一方たった一晩でロイの周りは大きく変わった。まったく、切り札を手に乗り込んだつもりが、最初から相手の手のひらで踊らされていただけだったとは。ロイは苦く笑う。腹心の部下たちは切り離され、各地に散り散りになってしまった。
だが、まだ負けたわけではない。大総統やホムンクルスたちの真の狙いはなんなのか。未だその全容を掴むことは出来ないままだが、ロイも部下たちもまだ生きている。
これで終わったと思うな。命ある限りは、まだ。
続いて過ぎったのは、ロイの宣戦布告に余裕の笑みで答えた大総統だった。無駄な足掻きよとのせせら笑いか、それとも、自分に何かを期待しているのか・・・・・・。
そう思わないでもなかったが、いや、それはさすがに希望的観測が過ぎるなと、その考えは即座に捨てた。
とりあえず、今はゆっくりと身体を休めよう。すべてはそれからだ。
そういえば、ともう一つ。こうしてリザの運転に身を任せるのも、当分はお預けになる。無論、これもいつまでもそのままでいるつもりはないが。
そのままぼんやりと思考の霧が晴れていくと、目を向けてはいてもまるで見えていなかった景色が鮮明に映り始めた。だが、先ほどとあまり代わり映えがしない。どうやらいくらも進んでいないようだ。
「渋滞にはまってしまったようです」
外を気にしたロイの気配に気づいてか、それまで口を噤んでいたリザが告げてきた。前方に目を向けると、随分先まで車が連なったまま、動かない。
「だいぶ混んでいるな」
「ちょうど、朝の通勤時間帯ですからね」
中央司令部はここセントラルシティのほぼ中央に位置しており、それを取り囲むように、その他の公的庁舎や大手企業などが立ち並ぶ。であるから、この近辺は朝の通勤時間帯ともなれば車や人で相当混雑する。ここのところセントラルでは急速に自動車が普及しつつあるから、こうして渋滞に引っかかることもしばしばだ。
うんざりしつつも、苛立ったところで仕方もないとリザは諦観した。正直なところ、一晩中立ちっぱなしでかなり疲れたから一刻も早く家に帰りたいのだが。ロイもさぞ疲れているだろうにとミラー越しにもう一度一瞥すると、なにやらロイが落ち着かない様子でいた。
「どうかなさいましたか?」
「い、いや、なんでも・・・・・・」
そういう割には目が泳いでいる。もぞりもぞりと身体を動かし何かを堪えているようなのだが、そこでリザはふと思い当たった。
「もしかして・・・・・・」
びくりとロイが震えたのを見て、リザは確信を強めた。
「お手洗い、ですね?」
言い切られてロイはやや逡巡を見せたが、やがてこっくりと頷く。
だがわかったところでどうしようもない。この近辺はオフィス街で、手軽にトイレを借りに入れるような施設もない。
「子供じゃあるまいし、お手洗いくらい司令部で済ませてきてください!」
「しっ、仕方ないだろう! ほぼ軟禁状態で出るに出られなかったんだ!・・・・・・しょうがない、その辺の路地で・・・・・・」
「国軍大佐ともあろう方が、軍服のまま立ちションなんてお止めください」
「妙齢の女性がストレートに言うな!・・・うぅ・・・」
「とにかく、お止めください。人に見られでもしたらどうするんですか」
誰か、特に軍関係者に見つかったらそれこそ嘲笑の的だ。だからといってどうすればいい。渋滞が動く気配はまったくない。
家までもつだろうか・・・・・・答えは否だろう。ロイの額には徐々に脂汗が滲んできている。状況は切羽詰っていて、まったくもって予断を許さない。最悪の事態なぞ、想定するだに恐ろしい。
リザは素早く辺りに視線を巡らせた。前方に路地が見える。同時に、素早く頭の中で地図を思い浮かべた。
「・・・・・・大佐、下腹部に力を入れて、どこかにしっかりお掴まり下さい」
「え?」
「少し運転が荒くなりますのでご注意を」
言うや、リザは思い切りハンドルを切って、一気にアクセルを踏み込んだ。車は渋滞の列から外れて車一台通るのがやっとの路地に飛び込み、そのままスピードを緩めることなく疾走する。車の両脇すれすれを、目にも止まらぬ速さで建物の壁が流れていく。
必死でシートにしがみつきながら、ロイは生きた心地がしなかった。
危ない! 前から人が来たらどうするんだ!
そう叫びたいのはやまやまだが、迂闊に口を開くと舌を噛みそうだし、何より気を抜くと、ヤバい。
「ここを抜けた先に中央公園があります。そこまで我慢してください!」
叫ぶようなリザの声にも応える余裕はまるでない。ほんの僅かでもリザがハンドル捌きを誤れば壁に激突、このスピードではよくて大怪我、二人揃って仲良くあの世行きの可能性のほうが遥かに高い。
いやだ! 負け犬で終わるのは絶対にいやだ! 頼む! どうか、どうか無事でいさせてくれ!
うっかり信じてもいない神に祈りかけたとき。
「着きました」
まるで天からの啓示のような声に、いつの間にやらぎゅっと瞑っていた目を恐る恐る開くと、公園の中と思しき場所で車は無事停止していた。
あぁ、生きているって素晴らしい・・・・・・ロイはぐったりとシートに身を預けながらしみじみと思った。イシュヴァールのときですら、ここまで身に染みて感じたことはないのではないだろうか。
「さ、手遅れになる前にお急ぎください」
「あ、あぁ、そうだな・・・・・・」
リザが開けてくれた扉からロイはよろよろと車を降りると、目の前の公衆トイレに内股で入っていった。
奇跡的にも、車中でいたしてしまうという最悪の事態を免れたことに感謝しつつロイが至福の時を過ごしている間、リザはそっと呟いた。
「まったくもう・・・・・・当分私はあなたのお守りを出来ないのですから、ご自分でしっかりなさってくださいね・・・・・・」
切ない淡い笑みを浮かべながらのその姿は、朝日に照らされて美しく輝いていた。
これで、場所が公園の男子トイレ前でさえなければ・・・・・・。
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えぇっと、これはなんだろう・・・・・・。
リザさんが「御手洗いから・・・」と言っているのをみて、そういやロイはどうしたんだ?と思ったのがきっかけだったんですが、書いているうちに色んなこと詰め込みすぎて、なんだかまとまりがつかなくなってしまいました(^^;
2月号以前を全然読んでいないので、もしかしたらないように矛盾があるやもしれませんが、その辺ご容赦いただければと思いますm(_ _)m
・・・・・・ネタがアホすぎて、矛盾を気にする以前の問題か・・・・・・。