いつもの幸人の家.
みんなが集まってる.
その光景が本当に幸せだった.

でも,会社がうまく行ってないみたいで
友達が帰った後につらそうな顔することが多くなった.
出張も多く,事態は私が思っている以上に深刻だった.


支えてあげたい.


大丈夫だよって言ってあげたい.



私にできること.
暖かいご飯を準備して,
明日も頑張ろうって思ってもらうことだけだった.


「俺ね,
コンビニの弁当苦手になっちゃった.」


「ありがとう.
そういわれるのが一番嬉しい.」



幸人は本当においしそうにご飯を食べてくれる.
そのことが嬉しくて
いつもご飯を作っていた.


後片付けをしていたときに

「俺も,手伝う.」

そう言ってくれた.

「大丈夫だよ.座ってて.」


「俺ね,前の彼女と別れた時,
一人になって何にもできなくなってた.
だから,次は,当たり前にしないで,
自分にできることしようって決めたんだ.」

そう言われてまた涙があふれた.

Ne-Yo のSexy loveの鼻歌を歌いながら,
楽しそうに食器を磨く幸人が本当に素敵で,

前の彼女に感謝した.

彼女と出会ったあとに出逢わせてくれてありがとう.
私も当たり前にしないように大切にしていこう.
そう改めて誓った.


生活時間もまったく違う.
デートなんて当分不可能.
一緒に出かけたのなんて,
初めて飲みに行ったきり.
でも,それでも良かった.
キャンドルの灯された部屋で,
2人で音楽を聴きながら
色んな話をしてワインを飲む.
それだけで十分だった.



好きって気持ちがどんどん大きくなっていく.
でも,それを伝えるには難しい“位置”.
素直に伝えることが
怖くなっていた.




だって私の方が好きすぎるから.
今彼の気持ちがここにあるだけでいい.
それが明日と続いていくなら.





そう考えながら,
今日も彼の寝顔を見ながら,
今ではピッタリとフィットした彼の腕に
包まれて眠りについた.



次の日も,
朝起きて,すぐに学校に向かう.
離れたくなくて,そばにいたくて.
もう一度ベットに戻りたくて
急いで支度をし,ギリギリまで彼のいるベットにもぐりこんでいた.


研究はどんどんハードになってゆく.
まわらないプログラム.
進まない解析.
それでも逃げるわけには行かない.
クリスマスもお正月も
楽しみで仕方ないはずのイベントだらけの冬も,
今年はなさそうだった.



昼休みに
優衣達と喫煙所に集合したら,
「やっぱりヒゲちゃん忘れられない.
会いたいな.」

「祐介どうすんの!!!」
いつもの口調で美奈が責めた.


「しょうがないよね.」

私はそれしか言えなかった.




夜,いつもみたいに食事の準備をしてたら携帯がなった.

「今からヒゲちゃんの家に行くことになったから
話あわせて!!!!」

「わかった!!」

とりあえず状況は読めなかったけど,
私の友達の家に集まることにして
彼氏に送ってもらってるみたいだった.

家に行くって...
あまりに突然のことで驚いた.


「とりあえず,頑張ってきな!!!」

そういって電話を切った.


どうでもいい友達なら
浮気なんてとめる.
一般的な意見だから.

優衣のどうしようもなさも,わかる気がした.


久しぶりのクラブ.

いつも最大限にオシャレする場所.
自分でいれる場所.

でも,今までと違うこと.
それはオシャレする目的.
やっぱり,かわいい子って思われたいし,
かっこいい人いないかなって期待してる.
今回は違う.
幸人と一緒にいる女として恥ずかしくないように.



細いヒールの黒のエナメルブーツ.
ラインの綺麗なトレンチコートにそれより短いスカート.
胸元の大きく開いた真っ赤のニット.
そのデコルテが綺麗に見えるようなネックレス.
大きなリングのピアスに
ハイライトも完璧に.


優衣と一緒に向かう.

「今日ヒゲちゃんいたらどうしよう~」
あの合コンから彼の呼び名はヒゲちゃん.
優衣も会う可能性は十分にあったので
完璧にオシャレしてきていた.

「大丈夫.優衣は人形みたいにかわいいから.」
そう言った.


クラブに行くと,もう幸人が来ていた.
大きく手を振ってくれる.
周りの友達が不思議そうな顔してこっちを見てる.


今だと思い,最高の笑顔で返した.

大音量のHIPHOPにアルコールにタバコ.
いい気分になって,外の空気を当たりに外に出た.


「樹里,最近ホント幸人君に関して
すごいいい笑顔するよね.」

「そう?」

「なんかこっちまで嬉しくなっちゃう.」

「嬉しいのはありがたいけど,
ヒゲちゃん,本気なの?」

「わかんない.でも,気になって仕方ない.
祐介ともうまく行ってないからかな?
私,きっと寂しいんだろうな・・・
祐介とすれ違いばかりで,
樹里はどんどん進んでく....」

優衣の本音を聞いた気がした.
一緒に暮らしてるのに,すれ違いを感じるって寂しすぎる.
ヒゲちゃんに興味を向かせた祐介君にも問題はあると思った.


寒くなってきて,
フロアに戻るエレベーターの中だった.
今日のネイルの色いいな?なんて考えてたら

「今日幸人のオンナ来てるっぽいよ.
さっき話してた.」
前の2人組みの女の子達が話し始めた.
私と優衣の目が合った.

「マジ?ショック!!!彼女かな??」

「わかんない.でも,幸人って遊び人じゃないから
彼女なんじゃない?」

「どんなオンナなんだろうね?」

そのオンナって響きになんだか私は傷ついてしまった.
それに気付いた優衣が


「樹里,気にしないでいいよ.
堂々としてればいいじゃない!!!
幸人君に自慢させてやりなよ.
回り見てみて,うちら絶対一番だって(笑)」

自分だって緊張で吐きそうなくせに
私をなぐさめてくれる優衣に感謝した.



エレベーターで一緒に居たのが
“オンナ”だとしり,
にらまれてしまった.

Nelly のDilemmaが心にしみた.

その帰り道,
結局ヒゲちゃんは現れず
今日は2人で帰って
朝まで話してた.










その途中に
久しぶりに留美ちゃんからのメール.

「幸人と会ったよ~チョキ
樹里ちゃん大事にされてるじゃんドキドキ」


「そうなのかな~?
なんかもう毎日一緒に居るニコニコ」


「ご飯がすっごいおいしいってのろけてたよラブラブ
でも,なんか甘えてしまいそうで怖いって言ってた.
仕事の事もあるからね~ガーン
樹里ちゃんが支えてあげなきゃねべーっだ!
一緒に居ることで
気持ち,きつくならないようにしないとだよ!!」


「うん.ありがと.
また今度ゆっくり話聞いてねドキドキ」



そう送ったものの,さすが留美姉さん.
私はすでにきつくなってきていた....
どうやらひげの人に恋をしてしまった優衣.

頭の中に彼氏のことは一切なかった・・・


酔った彼女を無理やり連れてとりあえず
美奈の家に向かった.


完全に落とされてた.


それにしても,
女の子4人であれだけシャレこめば
合コンだなんてすぐにばれる.



心配した幸人が
友達と遊んでる中家へと招いてくれた.


そこにはケントさんと,
今日出張できてた彼と遊んでた.



この2人は,
私を幸人のどういう存在って思ってるんだろう??
何って紹介してるんだろう?
一緒に居ようって決めてから
毎日のようにいるけれど,
“位置”についての話し合いはしていない.
今,そばにいるから,いいのかも.
仕事ももめてる時期だし.
そう,自分の中で“位置”付けた....




4人で何気ない会話で笑ったとき,
デジャブだと思った.


ここに前,いたことある?

音楽大好きな仲間たちで,
いろんな曲をかけながら.
笑いあってお酒を飲む.


違った.
デジャブなんかじゃない.
いつかこうなりたいなって考えてたそのものだった.


「本当に,私がここにいるんだ.」

そう実感した.



朝,起きたら学校に行かなくちゃいけない.
研究しなきゃいけないことは山ほどある.

それでも,かまわない.
少しでも一緒に居たい.
朝まで遊んで,そのまま学校に向かう.

毎朝バイクに乗りながら
流れてくる加藤ミリヤのlalalaに


そばにいて守ってあげなくちゃ
あなたは本当は弱いから・・・

涙しながら,学校に向かっていた.


いつまでもこんな日々が続くんだと思ってた.....