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Blue rose

趣味の雑文を書き散らしております

きみはとてもではないが弱すぎる
もちろん私も弱いのは承知だ

足もとを振りかえれば
きみの歩幅に合わせて咲かせた
薔薇が移ろいを包んでいる
星がギリシャの物語を描く

雲の名前、虫の名前、土地の名前
本の名前、人の名前、歌の名前
ほんとうはどれひとつとして
私の趣味ではない

きみは私に合わせて欲しくないと言い
他の人は理解されようとするなと言う
きみは私に全く近くないし、私の傍(かたわ)らにいたくない
 

きみは息苦しくないか

きみを追いかけた足あとの分だけ
私の肺はおおきくなり
曇りの夜も晴れの日も、まぶしく呼吸する

ひろく、ふかく

同じ家の一室で、ふたりは背中合わせに立っている
四畳半のまんなかの、畳の縁からはみ出さないで
一人は西の窓からあかね雲を見て
もうひとりは東の桟にたなびく紫の山際を見て

それから一歩ふたりは離れる
襖も窓も蔀戸も除けずに
ひたすら真っすぐ離れていった

一人は朝日へ
もうひとりは日暮れへ

振りかえると、真っすぐと思った道すじは
曲がりくねっていた
長く歩いて、ようやく視線のからみあう
同じ家の一室で、ふたりは零になっている

彼のひとは岸辺から
呼ぶひとは彼方から

暑さ寒さも彼岸まで
愛し憎しも彼岸まで

もう誰もいない夕べ
花咲く渡しに誰そ彼

いのちの方舟は闇へ
こころの波間は光へ
 

寂しいと言いたくなれば
黄昏に迷い道は私を誘う
悲しいと言わないときは
宵闇が迷宮の扉を閉ざす

人通りも少なくて
そこかしこに虫の声

虫たちは 命のうたを呼びかける
揺れている 夜の闇には曼珠沙華

やまない秋の大気冷え
たどり着けない夢のよう
胸が痛んで目を覚ます

虫たちは 一夜の恋を呼びかける
揺れている 風の道には曼珠沙華

夜の闇には曼珠沙華
風の道には曼珠沙華
愛に恋とは曼珠沙華
藍の空には曼珠沙華