彼のひとは岸辺から
呼ぶひとは彼方から
暑さ寒さも彼岸まで
愛し憎しも彼岸まで
もう誰もいない夕べ
花咲く渡しに誰そ彼
いのちの方舟は闇へ
こころの波間は光へ
寂しいと言いたくなれば
黄昏に迷い道は私を誘う
悲しいと言わないときは
宵闇が迷宮の扉を閉ざす
人通りも少なくて
そこかしこに虫の声
虫たちは 命のうたを呼びかける
揺れている 夜の闇には曼珠沙華
やまない秋の大気冷え
たどり着けない夢のよう
胸が痛んで目を覚ます
虫たちは 一夜の恋を呼びかける
揺れている 風の道には曼珠沙華
夜の闇には曼珠沙華
風の道には曼珠沙華
愛に恋とは曼珠沙華
藍の空には曼珠沙華