#53
「えーっそれでは、改めましてぇ~。メリークリス」
「メリクリ~~~~!!」
「いえ~い乾杯!!」
「ええええ!?!?!?」
純をさえぎり乾杯の合図をするかおり。
それにしても純、毎回反応がイチイチ大きい。
「あれ~? 春紀はオレンジジュースなわけ??」
「もうお酒は飲まないの~」
「でもさ、お酒って美味しいの?」
「うーん。そうでもない!」
「えええ!!!」
「おーいみんな~? 俺の話を聞」
「お菓子食ーべよっと♪」
「あっ里桜服にジュースついてる。」
「えっうわ~~!」
「も~ほらこれで拭きな!」
「ごめんかおり~」
「………」
あまりにスピーディーかつひどい会話に、
とうとう純もあきらめ1人でコーラを飲み始める。
「てかさ…」
「何よ?」
「俺、プレゼント交換するとか吠えてた犬を見たんだけど…」
「あら偶然。あたしもよ。」
「うーん私も見た気がするな~なんかみかんの箱に入って捨てられてる犬。」
「里桜、それはジョーク?」
「へ? なんのこと?」
「本当にいたの?」
「…え?」
「アアアアアもういいですから~ららら~~♪ 俺でっす~それ俺ですよ~~♪」
「うるさい黙れ犬」
「ガビーーーーン」
「ドッグ?」
「英語にすればいいってもんじゃないですよォ~!?」
「純、いいから。もう本当そういうの、いいから。」
「えぇぇ何がァァァ!?」
「ハ~イという訳でささっとちゃちゃっとぱぱぱーっと、プレゼント交換始めちゃいましょう!」
「いえ~~~い!」
いつもより何割か増して、純の扱いがひどいのは、
きっとかおりのテンションの高さが原因だろう。
可哀想に…純…
「ハイハ~~イ! 俺のプレゼントに注目ー!!」
「どうやって交換するー?」
「そうだな…」
またもやあっさりスルーされた純は、
同じくあっさり立ち直り、普通に会話に入って来る。
「あっそれはやっぱ歌うたわないと!」
「ハ? 歌ァ??」
「お~~~!! 俺の話をやっと聞い」
「めんどくさいけどまぁやりますか!」
「OK!!」
「で? 何の歌?」
「歌……かえるの歌とか…?」
「なんでクリスマスにかえるの歌うたうのよ!」
「里桜…相変わらず天然。」
「え? てっ天然!?」
「ここはやっぱ赤鼻のトナカイで!!」
「……え?」
「え?」
「……いや。なんでもない。」
「えええ!?」
「……そうよ。なんでもないわ。」
「えええええ!!! なんでみんなそんな冷たいのォォォ!?」
「気のせい気のせい。」
「それじゃあ始めよっかー♪」
とうとう叫んだ純は、気のせいの一言でスルーされてしまう。
可哀想にィ…純…
「ルドルフルドルフ~~♪」
「は? 誰それ。」
「え~~ルドルフ知らないのォ~今から歌うのにィ~~?」
「トナカイの名前だろ。」
「へぇ~ルドルフって言うんだー!」
無駄な知識を入れてしまったと言わんばかりに、
純を睨みつけたかおりの持っている箱は…ん? 何だか妙にでかい??
「それでは行きますよ~~! カウントダウン! さん、にぃ、い」
「真っ赤なおっはーなっの~♪」
「えぇぇちょっフライングぅぅ!?」
「トナカイさっんーは~♪」
「えっしかも続いてるぅぅ!?」
1人1人が用意したプレゼントが、リズムにのってまわされていく。
この時、誰もが同じことを思っていた…
「純のだけは絶対に嫌だ!!!」
「同じく。」
「激しく共感するわ。」
「またまたァ~~今回はもうすっごいんだからァ!」
「お前のすごいは1番危険だ。」
「うんうん。」
「でもっそのっとっし~の♪」
純の箱は予想通り、恐ろしい大きさだ。
春紀くんはいたって普通の大きさだ。
そしてかおりは…やっぱり大きい!! 大きすぎる!!!
「かっかおり?」
「何? 里桜、」
「そのプレゼント…やけにでかくない…?」
「………純の超えた?」
「どっちもどっちってとこだな~!」
「暗いよみっちはーピッカピッカの~~♪」
私の箱は1番小さい。
誰に当たるかな…
一応こっちのプレゼント交換では、
昨日選んだプレゼントは入ってない。
だってこのプレゼントを渡す人は…決まってるから。
「喜びまっしった~~~~♪♪」
「はいストーップ!」
「ギャアアアアアアア!!!!」
「あれまぁかおりさんおめでとうございます!!」
「大当たり、だな。」
「なんでよりによってあたしが!? この宇宙人のォォ!?!?」
「何が入ってるかね~~!」
「うおおおおおお!! 俺春紀のだーーーー!!!」
「え~~~いいな~!」
「はっきり言って春紀のが1番まともそうだわ。」
私は気になっていたかおりからのプレゼントだった。
持ってみるとこの箱…なんか……
「動いてる!?!?!?」
「え? かおり、何入れたんだ…」
「里桜、頼んだわよ。」
「何が!?」
「開けてみようぜ!!」
「うっうん。」
恐る恐る、丁寧に結ばれた赤いリボンをほどいてみる。
その白い箱を開けると、何か黄色いものが…
「わああああ!!!!」
「お~~~~!!!! ひよこ~~!?」
「いいえ。あひるよ。」
「あひるううう!?」
「どこでこんな可愛い生き物を…」
「そう、あれは冬の始まり……」
「なんか始まった。」
「めずらしい! かおりが語りだすなんて!」
「いつも通りのバイトの帰り道だったわ…」
「そこのお譲ちゃん~ちょっと見て行かないかい?」
何? 今時その誘い方、怪しすぎるわよ。
こういう時は無視するのが1番ね。
「あぁちょっと待ってくれよ~これ! 買ってくれないかい、安くするからさぁ!」
安くする。その言葉が気になり、思わず振り返ってみると…
「それがあたしとこの子の出会いよ、」
「一目ぼれして買っちゃったってわけか。」
「で? なんでそれを里桜に?」
「よく考えたらあたしのアパート、ペット禁止だったのよ。」
「えええ!」
「だから里桜、あなたに託すわ!!」
「なっなんて無責任な…」
かおりの話を聞きながら、そのあひるの子を見つめる。
つぶらな瞳、黄色くてふわふわな羽…!!
「………可愛い」
「え?」
「可愛いよこの子!! すっごい可愛い!!!!」
「でしょでしょ!? 分かる!? この気持ちが!!」
「もう可愛すぎる! 分かった! 私、全力で育てるよ!!!」
「ありがとう!! 里桜ならやってくれると思ったわ!!」
かおりと私が騒いでいる間に、
純は春紀からのプレゼントを開けていた。
「わーお!! マフラーだあああ!!!」
「お前にあたるとは思ってなかったわ~」
「うひょー! 赤いチェックのマフラーとか! 春紀くん素敵!!」
「きもいからはーなーれーろ!」
「あれ? 春紀は里桜からの?」
「あぁうん。開けてみよ!」
はっ!! まさか春紀くんにあたってしまうとは!
まぁそんなびっくりするようなものは、入れてないからいいけど…
「おっ手袋だ!」
「あったかそ~~!」
「青で大丈夫?」
「うん。俺マフラーも青だし!」
「お~~なになにィ? もしかして里桜、ねらってたかんじィ?」
「ううん! 何色か迷ったんだけど、私も青好きだから、これにしたの!」
「………。」
「ん? どうしたかおり?」
「いや、忘れてたけどあたし、純のプレゼントが当たったんだった…」
「うっ…大物だな…」
「フフフ…今回のプレゼントはほんっとまじですごい! モーストすごい!!」
超不気味なオーラをかもし出す袋に、かおりが手をかける。
部屋中に緊張感が走った。
もちろんそのプレゼントを用意した、張本人を除いて…
「……ん?」
「何それ? CD?」
袋から出て来たのは怪しげな箱。
と、その上には何やらCD。
「何コレ…俺の歌!!って書いてある。」
「俺のって……純。」
「何~?」
「何だこれは。」
「In English please~♪」
「ふざけないでもらえるかしら宇宙人さん。」
「あっはい。」
「里桜。」
「はい!」
恐ろしい声で呼ばれ、
私は素早くCDプレイヤーにそのCDをセットした。
『ピピッ』
プレイボタンを押す音。
その瞬間、全員がごくり唾を飲んだ。
『……おっれ~~のう――――った♪♪
はい、というわけで、ついに始まりましたこの企画。
名付けてぇ~~実は隠された才能純くんのお歌を聞かせまSHOW!
最初の曲は~こちらで』
『ブチッ』
初めは黙って聞いていた3人だが、
かおりが早くもCDプレイヤーの電源を切った。
「……………」
しばしの沈黙。
「あの…こっこれは…?」
勇気を出して沈黙を破った。
「ごみ。」
「へ?」
「ごみよ。間違えて入っちゃったみたい。そうよね純。」
「ん? んんん? いやっそんなはずは…というか質問になってない!?
語尾にハテナがついてない気が…」
「だってごみだもの。」
「えええ~~あとでお家でゆっくり聞いて下さいよ~~
めちゃくちゃうまいんだからもう!」
「気が向いたらね。」
「おおお!」
そのCDがあまりにも衝撃的すぎて、
みんなはまだ開けていない、大きな箱の存在を忘れかけていた。
「あっもう1つのプレゼントは?」
「開けてみるわよ…」
またさっきと同じ緊張感が走る。
今度は一体どんなおバカな品が飛び出すのだろうか…
「…………。」
「……幻の珍味キャラメルSP★DXパック…?」
「幻の珍味キャラメルって…」
「というかSPとDXどっちも使ってるし…」
「もしかしてこの大きい箱の中身全部これ…?」
「……………」
これもまたまた沈黙。
そしてかおりが…
「ごみね。これもまた間違えちゃったみたいね。」
「珍味って…どんな…?」
「里桜、興味持ってるし。」
「食べてミソ~♪」
「美味しいの?」
「フフフ…君たちは俺の苦労を知らないようだ!!」
「知るか。」
「まぁまぁ聞きたまえ。俺はこの、
幻の珍味キャラメルSP★DXパック、を買うために…
寒い冬の朝、電車でわざわざとなりのとなりのとなりの市まで行って、
3時間並んでやっとこの、幻の珍味キャラメルSP★DXパック、を手に入れたんだぞ!!!」
「ただの馬鹿。」
「時間の無駄。」
「電車代の無駄。」
3人から連続で総攻撃をくらった純は、
少しひるみつつもその、幻の珍味キャラメルSP★DXパック、の中から、
黄色いキャラメルと、緑のキャラメルと、赤いキャラメルを取り出した。
「はい。どーぞ!」
「これ…何味…?」
「ウニともずくとパプリカ。」
「…………」
かおりは突然無言で立ち上がり、
純の前まで行くと、痛そうな音とともに悲鳴が響いた。
「痛ってぇぇぇ!!! 何すんだよ~~~!」
「……ありがとう本当に素敵なプレゼントでしたわ。」
かおりは怖いくらいの満面の笑みを浮かべると、
もとの場所に戻り座った。
「えっえっと、そんなわけで! はい!! プレゼント交換終りー!」
「事故だったな…」
「うん…」
1時間ほどのロングタイムプレゼント交換も終り、
外はもう夕日がのぼっていた。
もうそろそろ星が見える…
冬の夜の星は、奇麗だと良く聞いたことがある。
私は窓から見えるオレンジ色の空を見つめて微笑んだ。
「楽しいね!!」
みんなも笑顔だった。
「ガー!」
「あっ」
ずっと静かだったアヒルが、里桜の言葉に賛成するかのように鳴いた。
4人の笑顔はだんだん大きな笑い声となり、
いつの間にか4人は大きく口を開けて笑っていた。
夢の中で泣いていた君。
ほら、みんな笑ってるよ、
春紀くん…