Blue wing -10ページ目

#54 ~final~

「あぁあぁっやめてぇえんっキャハハハッ!」




「…………。」




「なんで~やねん~んなワケあるかアホ~」




「……………。」





今のは純とかおりの寝言。(最初のが純で次のがかおるだ。)

思わずどんな夢を見ているんだと聞いてしまいたくなるような発言に、

私と春紀くんは黙り込んだ。



「こいつら…一体どんな夢を…」


「ね………特に純はなんかもういけない匂いがする。」


「あぁ…俺、この二人運ぶわ…」


「じゃあ私はとりあえず片づけちゃうね、」



あれから約5時間、私たち4人は人生ゲームにライフゲーム、

そして一生をすごろく的な感じで体験し誰が1番手持ちのお金が多いかを競うゲーム。

をしていた。


つまりはとにかくずっと5時間人生ゲームをしていた、というわけだ。


結果は何故か運良く私が1位で春紀くんが2位、

3位は純で最下位はかおるだった。

もちろん罰ゲームも用意されていて、

かおるは3人から顔に好き放題落書きされた。

何故か最終的に純もヒゲを描かれたりしていたけど。



「里桜、ちょっとベランダ出ない?」


「えっうん!」



さっさと二人をベッドとソファーに運んだ春紀くんは、

星が輝く夜空を指差した。


今日はとても晴れていて、すごくきれいだ。




「わ~~~きれいだねぇ!!」


「だな…」


特別に春紀くんだけに用意したプレゼント、

都合良くかおると純も寝てくれたし…

渡すなら今しかない!



「春紀くん!!」


「ん? 何?」


「これ! 春紀くんだけには別にプレゼント用意したの!!」



なんだかすごく緊張し、

ギュッと目を瞑って両手で小さな箱を差し出す。



「え? まじで?」


「うん…気に入ってもらえるかは分からないけど…」


「開けるね?」



ずっと悩んでた。

どんな物をあげればいいのか。

どんな物をあげれば…私の想いが伝わるのか。



「わぁ…すげぇ、きれいな青…」


「本当…?」


「うん! ありがとう、毎日つけるな!」


「うん!!!」



私が選んだのは、青いピアスだった。

深く透き通った海のような、広く大きな空のような、美しい青。



「気に入ってもらえて良かったぁ…」


「でもなんでこれにしようと思ったの?」


「えっとね、その…私がこっちに戻って来た時、

 春紀くん、真っ赤なピアスしてたでしょ?」


「あぁ、あれか…」



あの時は、自分の全てが嫌になって、

俺も里桜も好きだった青を見るのが悲しくなって…

赤いピアスを選んだんだ。真っ赤な、燃える炎のような赤を。



「うん。でも私…かっこいい赤も、春紀くんには似合うと思うけど…

 やっぱり、春紀くんにはきれいな…青が合うなって思って…」


「俺も。」


「え…?」


「里桜には青が似合うと思う。」


「本当?」


「うん。みんなは里桜には可愛いピンクとかが合うって良いそうだけど…

 里桜は俺が思ってたよりずっと強くて、空みたいに大きくて…きれいな青なんだ。」


「えっそんな…空みたいに大きいなんて…はずかしいよ…」



顔を赤くして恥じる彼女を、こんなにも愛しく思う。



「里桜、手貸して。」


「え? こっこう…?」


「そう。目を閉じて。」



優しく大きな春紀くんの手に、自分の手を重ねる。

春紀くんの温もりが伝わってくる。


大きいのは、春紀くんの方だよ…?



「俺も里桜に、渡したいものがあるんだ。」


「何…?」


「はい、目を開けて。」



春紀くんの言葉に従い、ゆっくりと目を開ける。


そこには……




「わぁ…!! きれいな指輪だぁ!!!」


「うん…その、俺の…気持ち。」


「どうしよう…すごい嬉しい……!!!」



春紀くんが少し照れながら微笑む。

自然と涙が溢れた。


それは天使の翼に、青い宝石……



「バイトしてためたお金で買ったんだ。

 ちゃんとしたものをプレゼントしたくて…」


「春紀くん……ありがとう! ありがとう!! 大好きだよ!!!」


「おっ俺も…その、愛してる。」



もともと赤くなっていた頬がさらに熱くなる。

嬉しくて…愛しくて……幸せだ…!!!



思い切って抱きつく。勢い余ってバランスを崩しそうになったが、

しっかりと受け止め、抱き合う。


あったかい…。真冬の夜だ。当たり前だけど寒い。

でも、春紀くんのおかげで、あったかいよ…。



「…里桜ってさ、魔法使いみたいだよね。」


「えぇぇ!?」


「だって、俺の心をこんなに変えてくれた… 

 それに足だって何故か治ったし、奇跡だよ。

 里桜といると、幸せになる。」


「そっそんな…だったら春紀くんもそうだよ!」


「ハハハッそんな驚かないでよ、冗談だよ。」



びっくりした……本気でバレたかと思った…!!

思わず大声出しちゃったよ!


笑っていた春紀くんは、

急に黙ると、私の目を真っすぐに見つめた。



「里桜、キスしてもいい…?」


少し動揺したが、答える代りに小さくうなずき、目を瞑った。


優しく唇が触れあう。あの雨の日以来だ。

こうして抱き合うのも。キスをするのも。


優しい…春紀くんの唇から、優しさが伝わって来るよ…。





私は人間界に来て、何度も空を見上げた。

一人の時も、ニ人の時も…


空は色んな顔をもっていて、まるで私たちみたいだ。


色んな気持ちを持っていて、その輝きは様々な色をする…

時には熱く赤く、時には優しいオレンジ色をして…おだやかな青色をする……




人間は、空みたいだ。






人間界は、こんなにも美しい……!!
















「それでさ…って、里桜? もう寝ちゃったか…」



部屋に戻った俺たちは、他愛のない話しで盛り上がっていた。

でももう遅い時間だ。里桜は寝不足だったようだし、眠ってしまった。




「幸せそうな顔……」










夢を見た。





美しい青に、暖かいオレンジが重なる、夕焼け色の空の下。



春紀くんの大きな手が、私の頬をなで、

その唇が、優しくキスをする。






そこは、幸せで溢れていた。




これからは、ずっと一緒に生きて行く。



でももし、さよならの時には……





きっと最後に、 これを伝えよう……













静かに寝息を立てて眠る彼女に、溢れる想い。





「里桜……」

















『 あ り が と う 』